恥の多い生涯を、……

 わたしがこの世に生を受けた時、時を同じくして、また赤子が生まれ落ちた。濡れたカラスの羽のような黒が瞳に残っていて、閉じられた瞳の奥はきっと、わたしと同じグレイなのだと、そう思っていて、そしてそれは、真実だった。わたしとその赤子のかんばせは良く似通っていて、もうひとり居る兄とも、また、良く似ていたから、女として生まれたわたしだけれども、時同じくして生まれ落ちた彼と並べば、男と間違えられることもあったっけ。

「リジー、いきましょう」
「アディ!」

 レギュラス・アークタルス・ブラック。それが、わたしの双子の兄の名前だった。もうひとりの兄の名は、シリウス・ブラック。

「アディ、レギュ」
「はい、おにいさま」
「はい、にいさん!」

 アディ。多くそう呼ばれるわたしの名はアリエデ。アリエデ・フォーマルハウト・ブラック。魔法界の純血、その一日に名を刻む者だ。
 リジー―もしくはレギュ、レギュラスの愛称だ―は上の兄に良く懐いていて、勿論わたしだってシリウスのことは好きだし懐いていたけれども、リジー程では無かった。ただシリウスがわたしの名を、アディ、と口にする声が心地良かったのは事実だ。少々厳しい母、ヴァルプルガと、愛の分かりずらい父、オリオンの間に生まれたわたし達は、母の厳しい教育と、父の冷たさの間に在って、それ故、兄妹の絆が一等強かった。お兄様、と呼べば、シリウスは少々荒っぽいけれども笑い返してくれたし、リジー、と呼べば、レギュラスは少し恥ずかしそうに笑い返してくれる。「大好きよ」、わたしの幼い頭では、今はこれだけしか表現出来ないのだけれど、家族への愛が伝わればいいなって、本気でそう思っていたの。

・・・


「アリエデ、来なさい」
「……お母様?」

 自室で本を読んでいた。言い訳のようだけど、だってシリウスもレギュラスも、外で遊ぶと言っていたから。外を見れば一面の銀世界が広がっていて、わたし、寒いから嫌よと言ったの。そうしたら二人とも、そう、と言ってわたしを一瞥して、二人で出掛けて行ってしまって。拗ねたわたしは、レギュラスと共に与えられている部屋で、お母様に貰った純血の本を読んでいて。――だから、何故お母様に呼ばれたのか、分からなかった。

「アリエデ。お前は可愛い娘だと思っていたのに」
「……あの、お母様、なに、」
「お前、シリウスとレギュラスを外へ出したようですね」
「――、」
「この際、お前の名前の由来を告げましょうか。良い、アリエデ。お前の名はデネブの別称なのよ。意味は後に続く者。対してレギュラスは、星の王。……分かりますね?」
「、わたし」
「良いですか、アリエデ。次からはお前も向かうか、もしくは止めなさい」
「……はい、お母様」

 だから、つまり。わたしはレギュラスの双子の妹で、お母様にとっては、レギュラスの方が大切で、わたしはレギュラスを、守るための、騎士であって、従士であって。
 嗚呼、どうしよう、と心に思う。お母様と繋がれた右手が、リジーが帰ってくるのが、怖い。わたしが、そんな。年が五つになる頃、わたしは初めてお母様にそれを告げられた。本当は助けて貰っては駄目なことは分かっていて、助けられないことも分かっていたけれど、成熟していないこの心では、未だそれを綺麗なかたちで受け止めることは出来なくて。

「――こわい、たすけて、……シリウスお兄様」

・・・


「……アディ?」
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