谷崎
秘密のお話
率直に云って谷崎さんの上半身の体つきが堪らなく好きだ。あの細っこくて、それでもどこか柔そうで、薄い、もう見るからに繊細そうな感じに抱きつきたさを堪えるのに必死になる。欲を出して良いのならば、直に触り撫で回したい。
「どうかしましたか?」
不意に声を掛けられて吃驚したが、どうやら感情の赴くままに谷崎さんのことを見つめすぎていたようだ。濁すように谷崎さんってスタイル良いですよね、と返すと恥ずかしそうに否定の言葉ばかりがでてくるものだからついつい本音を漏らしてしまった。
「腰のラインとか華奢で好みです。出来ることならば抱きつきたいくらいには。」
やってしまった。いくらなんでも同僚にこんなことを云われるのは気味が悪いだろう。それに男性に向かって華奢は褒め言葉として適当ではない。今後彼にどう接したらよいのかなど頭の中でぐるぐる思考を巡らせた。
谷崎さんは立ち上がり、私いるところに寄ってきた。文句を聞く準備をし背筋をシャキッと伸ばす。
「こんな感じですか?」
突然両腕を取られ谷崎さんの腰に回される。予想外の展開に言葉が追いつかない。回転式の椅子が回り、体ごと彼の方を向かざるを得ない。温厚な上に慈悲深いなんて好青年にもほどがある。照れ臭そうにはにかみながらナオミが戻ってくるまでまだ時間ありそうなので少しだけ、内緒ですよと頭上から聞こえる。春野さん、ナオミちゃんを買い出しに連れて行ってくださって本当にありがとうございます。
本人からのお許しが出たとはいえドキドキが湧き上がるので頬を谷崎さんのお腹にくっつけるようにし、顔を隠す。体温が伝わりほんのり温かい。
「あの、緊張して全然なにを云ったらいいのかわかりませんが、すごく幸せな気分です。ありがとうございます。」
「喜んでもらえてなによりです。」
「もう少しだけこのままでもいいですか?」
頼りないか細い声しかでなかったが勿論どうぞ、とのお許しに腰に抱きつく腕に力を込めた。
他のみんなが出払っている探偵社に2人の呼吸だけがこだまする。こんな偶然がおこるだなんて想像もしていなかった。もう彼のことで頭がいっぱいで目も見れそうにない。