図書館での出会い
なんとなく締まらない体育祭を終えた私たちは、今日明日と休みが与えられた。家にいても悶々とするだけだたったので、朝の涼しいうちにランニングに出た。
けれど、走っても走っても悶々としたのは晴れなくて、なにか打ち込めるものをと考えた結果、図書館で勉強をすればとお父さんに勧められたのを実行することにした。
ひたすらに学校の勉強だけでなくいろいろと資料を集めて頭に叩き込んでいく。お父さんの提案は最善だったらしい。悶々と考え込むこともなく勉強に打ち込めた。
数時間もすれば、体がガチガチになってしまったので一度本を戻して体を動かすために図書館の中をぐるぐると回ってみる。
普段回らないような本棚を見ると、新たな発見があって面白い。興味の出た本を数冊、選りすぐって抱えたままさらにうろついていたら、パソコンの並ぶコーナーに見慣れた頭があった。
迷惑にならない程度に素早く寄っていく。
「轟くん。なにか調べ物……?」
後ろから声をかけたせいだろうか。轟くんの肩が大きく跳ねた。わざわざ図書館のデータベースが入ったパソコンでの調べ物なのだ。
一体どんなことを調べているのか気になってこっそり覗き込めば、大きく書かれた“心因性個性暴走”の文字。
それが意味するものは一つしかなくて、内容を見なくても轟くんがなにを調べていたのかは察しがついた。
「悪ィ、どうしてもあの言葉が気になって。」
「ううん、あんな言い方されたら気になるに決まってるよね。表彰式の言葉でも、もしかしたらって思ってたし。」
私のお母さんのこと。一時期はテレビでも取り上げられることの多かった事件だ。私たちの世代はまだ小さくて覚えてはいないだろうけど、先生たちは全員が知っていると言っても過言ではないくらいのことだ。
あそこにいた先生の誰かが轟くんに私のお母さんのことをぽろっと言ってしまったんだろう。
「ネットの記事じゃわかりにくいでしょ。詳しく教えてあげる。この本だけ借りてくるから待ってて。」
手に持っていた本を掲げてカウンターへと急いだ。貸し出し手続きを行っている間にもよみがえるのはあの日のこと。お母さんが死んでしまった、あの日のこと。
「苗字、予定あったんじゃねぇのか。」
一人でしんみりしていたら後ろから荷物を持ってきたらしい轟くんに声をかけられた。突然のことで驚きすぎたのか、司書さんも何事だと顔をあげている。
「す、すみません……。予定はないよ。昨日轟くんに言っちゃったこと、気になって仕方なかったからここで勉強してただけなの。」
司書さんはなんでもないのかとまた顔を落として貸し出し手続きを進めていく。振り返ったら、思ったより近くに轟くんがいて、また別の意味で驚いてしまった。
手続きの終わった本を鞄にしまって図書館を出ると、どこか近くに静かで話しをするのにぴったりの場所はなかったかと、記憶を辿った。
「いいのか、本当に。」
「轟くんには知っていてほしいの。私のお母さんになにがあったのかと、私がヒーローを目指す理由を。」
近くに公園があったはずだと轟くんを連れて、時々道を間違えながらたどり着いた。そこは理想の静かさで、ちょうどお昼時ということもあってこどもたちも居ないようだ。
「ネット記事は見たことないから、もう調べたこともあるかもしれないんだけど……、」
あれはそう、こんななんの変哲も無い公園でのことだった。
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