警察とヒーロー


次の授業は楽しみにしていた演習の時間だ。週に二回、実習と演習がある。個性の使用ももちろん許可されているので、対人戦はもちろん様々な訓練で新しい発見が絶えない。


次の演習は相澤先生が見てくれるらしい。バスに乗って到着した演習場は街を模したものらしく、かなり広い。こんなところで一体どんな訓練をするのだろうかと、今からドキドキが止まらない。


「えー、次だが所謂警察と泥棒をやってもらう。」


警察と泥棒、といえば小さい頃にやったことがある。警察組が泥棒をタッチして牢屋につれていく。泥棒は牢屋にいれられた泥棒をタッチすると、捕まった泥棒も再び逃げることが出来るという鬼ごっこのようなものだった気がする。


「配役は決めてある。警察、まぁヒーロー側が葉隠、苗字、障子の三人。残りは全員泥棒……敵だな。」


不意に呼ばれて驚いた。警察側の人数が少なすぎやしないだろうか。そもそもこの三人である理由はなんなのだろう。


「基本ルールは警察と泥棒と同じだと思ってくれ。個性は基本的に防衛でのみ許可する。敵はなにか重要な秘密をアジトに持ち帰らなくてはならない、ということで戦うのはかまわねぇが、逃げることを優先すること。あと捕まってるときは人質扱いとするので、個性は逃がしてもらえるまで使用禁止だ。」


「相澤先生、どういう基準で配役を決めたのか聞いてもいいのかしら。」


「あー、まぁ単純に隠密性に優れている葉隠、捕縛性にすぐれている苗字、索敵能力の高い障子。相手するなら嫌なやつらだろうってな。」


梅雨ちゃんの問いかけは多分みんなが思っていたのだろう。だが答えを聞いて納得した、なるほど。透ちゃんは今は手袋や靴をはいているからわかるけど、脱いでしまえばどこにいるかわからない。隠密性はばっちりだ。

障子くんの索敵能力の高さは本当にすごい。複製した耳でどっちから音が聞こえてきたか、ほぼ正確にわかる。

対して私の個性は捕縛性といえば聞こえはいいが、いろんな色と強度のテグスを出せるということ。私自身は常に見えているし、機動力はあるがそれで言えば飯田くんとかのほうが適任だろう。

これは、しっかりと作戦を立てなければならない。


「今から5分やる。ヒーローも敵もしっかり作戦を立てろよ。」


指示を出されてみんなが一斉に動き出す。聞こえないよう距離を取りながら、急いで頭の中で作戦を組み立てていく。


「作戦なんて急に言われても、どうしよう!?」


「私に考えがあるの。」


「聞かせてくれ。」


まず、私たちの個性を最大限に活用する必要がある。ゆっくりと、端的に作戦を伝えていく。


透ちゃんはなるべく音が他の音にまぎれるようにして敵たちに近付く。幸いタッチすればいいだけなので、見えるようなものを持たなくていいのもラッキーだ。

私は、障子くんに索敵してもらって、そこへ向かってテグスを伸ばして引き寄せる。障子くんの個性は触れれば逮捕扱いらしいが、私の個性で触れるだけではダメらしいので、引き寄せないといけない。


不意をつく作戦でまずは助けに来られたときに個性を使われると厄介な人たちから捕まえていくことにする。


「個性の相性と、基本的に防衛のみでの個性使用というルールを考えて、透ちゃんは他の誰を見つけても無視して、爆豪くんを捕まえてほしい。」


「オッケー!他は?」


「爆豪くんを捕まえたらあとはもう見境なく捕まえていいよ。私は障子くんと轟くんの捕獲。あと、見つけられたら飯田くんも。」


「わかった。」


「時間だ。敵チームは逃げろ。30秒後にヒーローチームが追いかける。」


まだ伝え切れていない作戦もあったが、ひとまず要になる部分は伝えられたし、大丈夫だろう。


相澤先生の声を聞いて敵チームが散り散りになっていく。私の作戦と、個性がどこまで通用するか。頑張らないといけない。

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