1.突然の再会


私は知らないうちに魔導兵に囲まれていた。買い物をしていただけだというのに、なんて展開だ。危なげな銃口を四方八方から向けられているけど、命の危険は感じない。私は、ある理由から死にたくても死ねない体になっているからだ。

「いきなりなんですか?帝国の魔導兵が。」
「やぁ、久しぶり、元気だった?」
「!?」

20年ぶりに聞く声に耳を疑う。
そこには、別れて20年が過ぎた元夫が立っていた。20年経とうと、何百年経とうと彼は一ミリもかわらない。黒の帽子をかぶり、堂々と歩いてくる彼。口角は上がっていて、友好的にも見えるけれど、どこかギラついた野心のある瞳をしている。
突然の再会に胸がざわついたけれど、努めて平然としてみせる。頭二つ分高い彼を見上げて、じっと目を見返した。
彼は私の瞳を見つめ返したあとに、クスッと笑う。帽子を取ると、わざとらしいほど恭しくお辞儀をしてみせた。

「20年たっても、君の美しさは変わらぬままだね。」
「久しぶりの再会なのに、平気で元嫁に銃口向けるなんて、酷い人。」
「怒んないでよ。サプライズ、好きだったでしょ?もしかしたら喜んでくれるかなぁと思ってさ。」
「はぁ…。」

彼が片手をあげると、魔導兵たちが私に向けていて銃口が下がる。そして、私の前に立っていた魔導兵が道を開けた。

「寂しかったよ。」

アーデンは微笑んで両手を広げてくるけど、本当に白々しい。私は首を横に振って腰に手を当てると、冷たい目を向けた。

「あぁ、その目、冷たいなぁ。俺から去っていくときも、君はそんな目をしていたね。」
「昔の話でしょ。」
「そ!昔の話。さ、昔のことは水に流して、そろそろよりを戻さない?」

軽く大事なことをいうから、言葉に重みを一切感じない。ジロッと彼をにらむと、彼はボリボリと髪を掻きながら目を泳がせる。

「なぁに?まだ怒ってんのー?俺が研究に熱中して君のこと構ってあげなかったり、結婚して150年目の記念日を忘れちゃったりしたこと。」
「もう何も怒ってません。」
「じゃあ、また夫婦としてやり直そうよ。俺だって寂しかったんだよ?…でも、君ってばどこにいるかもわからなかったし、連絡も取れないし、探しても見つからなかったし、…もう会えないかと思ったよ。」

どこまで本音か知らないけど、アーデンの腕は無断で私の腰に回っている。

「私、戻るとはいってないけど。」
「戻ってきて。嫌ならまた出ていっても構わないから。俺と話そう。」

言い聞かせるようにいう彼は、私を逃す気は無いらしい。空からは帝国の船が降りてきていて、そこに乗れと言わんばかりに目の前に着地した。腰を抱く彼の腕にも力が入っていて、逃げ出せそうも無いし、ついていくしかない。
諦めて、わかった、と返せば、彼は満足そうに笑って足を進めた。




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