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3日ぶりの行為はアーデンを興奮させた。

●の胸を執拗に舐め、何度も手で背中とくびれを愛撫する。
服越しから下半身を撫でて刺激をすると●に睨まれたが、ライオンのように鋭く猛々しい金色の目で見つめ返すアーデンに彼女は負けるのだった。

「俺たち、明日から2日会えないんだよ。…その分愛し合わなくちゃ。」

2人はキスを交わし互いの体に手を滑らせたが、互いはまるで違うことを考えていた。

ー 2日のうちにここを逃げればいい。その先のことなんて考えていないけれど、これは最後のチャンス。化物から逃げないと…。彼との行為もこれで最後だと思えば…。

「随分と積極的だねぇ。俺の舌、抜かれるかとおもったよ。」

顔を離して面白そうに起き上がるとアーデンは彼女の胸の谷間に顎先を乗せた。両手を彼女の両手に絡め足も絡める。

「俺が帰ってきたら、ここもきっと落ち着いてるよね?…その時はうんと愛させてもらうから、よろしくね?」

優しく下腹部を撫でると首筋に吸い付く。耳元で愛してるよ、と繰り返し、少し強めに乳首を揺する。●はどんどん息が荒くなり、足りないと顔が火照り出す。

「もう我慢できない?俺もなんだ。」
「だめ…まだ、血が出てるから…っ。」
「でも、すごく辛そうだ…ふふ、でも仕方ないか。その熱は3日後に晴らそうね〜。楽しみだよ。」

アーデンも辛そうに自分のズボンに手を入れる。それを扱きながら●の耳元でわざとらしく息を吐き、彼女の手を自分のものへ導き、喘ぐ。

「ぁあ…俺、もう、ダメ…ごめんね、俺だけイッちゃうよ。」

自分の手の中で前後しているそれを見て、子宮がうずく。眉を寄せてアーデンの頭を抱え込むと気持ちだけで快楽を感じた。

「んッ…ァアッ…。」

●の腹部にそれを散らし腰を何度か振ってから全て出しきったアーデンは恍惚の表情を浮かべている。

「んんっ…さて、寝ようかな。」
「…っ。」
「ふふ。真っ赤だ。」

萎えたそれをズボンに戻して彼女の腹部をティッシュで拭く。彼女は熱が溜まった顔でなんとか息を整えている。

ー さて、3日後も同じくここで愛しあえるかな?俺、それだけが心配だよ。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

翌朝。
目が覚めた時、既にアーデンはいなかった。部屋のテーブルにはメモがあり、行ってくるよ、とだけ書かれていた。

彼の不在を知ると●はすぐに興奮した。念のために部屋をまわったけれど、アーデンはいなかった。そして、不思議なことに魔導兵もいなかった。窓から顔を出して見回りの魔導兵を探すが、一人もいない。

おかしいと思う。
彼が不在の時は絶対に見回りをつけるのに。自分を閉じ込めるように、監視のようにつけるのに。それが何もない。墓場のように静かだった。

それが怖く怪しいけれど、それと相反するようにとてもワクワクしていた。今なら飛び出せる。

窓から屋敷の駐車場付近にあるチョコボの小屋を見れば、チョコボが数頭休んでいるのが見える。一番足の速いチョコボに乗って逃げよう。
時間は朝方の5時。まだ周りが暗い。今なら逃げても周りに見つからない。

上着を羽織って部屋を出た。

…先のことなんて何も考えていない。お金もない、いくあてもない、力もない、全てがない。もしかしたら、誰にも知られずに野垂れ死ぬかもしれない。モンスターに殺されるかもしれない。…そんな時、この屋敷を出なければよかったと後悔するかもしれない。
でも、この機を逃したら?
ここにいて、顔を塗り替えられ、時間を追うごとに私を消され、操り人形のように彼の都合で愛され、孕まされ、子どもを産まされ、死ぬまでこの檻の中。
…そんな生き方は、死んだと同じ。

死に方は、私が選ぶ。
まだこの体は自由なんだから。

上着のスカーフを頭にかぶり屋敷から出る。
ドアの先には薄暗い空が広がっていた。数羽の鳥が羽ばたいて街へ消えていった。その鳥を追うように外の階段を一歩一歩降りる。

深く息を吸いながら、自由を感じながら、朝日を浴びるために階段を下りる。

「はぁ…。」

遠くの山から朝日が顔を覗かせる。眩しくて柔らかで、暖かい熱に頬を緩める。
感動の涙を浮かべながらもう一歩階段を降りようとしたら、背後から強い衝撃が背中を襲った。

「!?」

私の体は宙に浮いた。
悲鳴を上げる間も無く、私の体は階段に打ち付けられながら落ちていく。転がり落ちる先に地獄が待っている気がして怖かった。

「うぁっ!」

最後にコンクリートに背中を強打し、痛みで蹲る。
全身が痛い。足首を捻って、顎を階段に打った。切った唇から血が出て口元を汚す。
呻きながらゆっくり顔を上げるとドアの裏に佇んでいたアーデンが私を見下ろしていた。




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