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「どないしたん?元気ないんか?」
「え、あ、ごめんなさい!」
「このところ連勤やったもんな。たまには休みでも取って仕事から離れたらええのに。」
「ふふ。それ吾朗ちゃんが言うの?」
「むっ…ぅ、言い返せんわ。」

今日の●はえらくぼんやりしとった。連勤で疲れたんやろなぁと思って遊びに連れ出すのをやめて●のアパートに寄った。部屋のソファーに腰を下ろして二人でくっつきながらテレビを見とったら、●がそっと身を寄せてくる。顔を覗き込めば今にも寝そうな顔しとった。

「ええで、このまま寝ても。」

●は返事もせずにゆっくり目を閉じる。かわええやっちゃな。とその寝顔を見つめながら、テレビの音量を下げる。●は真面目な女で頼られるから仕事を任されることが多い。そのせいか、最近はろくに二人の時間も取れずに寂しい思いをしとった。
そんなわけで、久しぶりに会えた俺としては、このままずっと抱きしめていた。だが、寝とった●からとんでもない名前が出てきて癒されていた心が張りつめた。

「さが…わさん。」

聞き間違えかと思ったが、今確かに佐川とゆった。俺の知っとる佐川やないにしろ、…誰やと思って反射的に●を揺らして起こす。ハッとした●は驚いていた。

「今夢でも見とったんか?」
「あ、…佐川さんは?」
「は?何ゆうとるん。佐川って…どいつや。」
「…え、…ぁあ、ごめん!なんか変な夢見てたみたい…昔、友達でいてね!?」
「び、ビックリしたわー。…さっき街であったあのオッサン、佐川ゆうんや。」
「…そうなんだ…同じだね。」
「せやろ?やからビックリしたわ。」
「…吾朗ちゃんは、えっと…佐川さんとどんな関係なの?」
「まぁ、簡単に言えば上司っちゅうことやな。佐川はグランドのオーナーやからの。」
「そうなんだ。オーナーさんか…。知らなかった。」

何やろ。●はぼんやりした目で宙を見る。まだ寝ぼけとるんか。にしては、俺が映っとらんのか、何かを考えとるような…。

「熱でもあるんか?ぼーっとして。」
「いや、…全然大丈夫…、ベッドに行ってもいいかな?」
「お、おう。」

俺は電気を消して、先に横たわっている●を抱きしめる。
さっきのは偶然にしてもびっくりしたわぁ。まぁ、佐川なんて珍しい苗字でもないからの。過剰に反応した俺があほらしいわ。

「おやすみや…●。」

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