冗談混じりの会話…高杉


私たちの会話は冗談で成り立っている。それが、最近、冗談が冗談じゃなくなる会話になりつつある。

ー 高杉さんから斬られるのなら本望よ。
ー なるほどな。なら志を果たした時にでも後を追うとするか。

ー 風邪うつっちゃうよ、高杉さん。早く帰って。
ー あんたの風邪ならうつるのも悪くない。

ー やるべきことがなくなったら何をしたらいいのかなって。
ー そうしたら俺と一緒に生きればいい。


最初はお互いが相手のノリに合わせた返事をしているだけで深みはなかった。うまく冗談を言って楽しい会話になればそれでよかった。
なのに、最近はどこまでが本音かわからない会話になりつつある。

「…あんたの家は静かな場所だ。」
「退屈?」
「いや、気が楽でいいってことだ。あんたが相手だと特に話さなくとも気まずくないからな。…あんたと一緒になったら、こんな感じなのかもしれないな。」
「こんな感じ?」
「会話がなくとも通じ合っているってことだ。」

これは本気?冗談?
彼の言葉が気になってしまい、書物の整理がとどこおる。そんな私を気にせず、畳の上で寝転んでいた彼は起き上がって三味線を奏でる。

2人しかいない空間はとても自由だけど、恋仲という関係ではない。なのに、そうであるような会話になる。

「…いい曲だね。」
「ああ、俺たちにピッタリの曲だ。」
「どういう意味?」
「互いが惚れているのに素直になれない男女の曲だ。」
「……。」

堂々と言うものだからあんぐりと口が開く。でも、彼は真面目な顔で続きを奏でた。確かに、情熱的なのに最後は寂しい終わり方をする。

「高杉さん、もしかして寂しいの?」
「ああ。」

これは絶対冗談じゃないよね。
整理をやめて彼の隣に座る。彼は三味線を置いて私の手を握って口に運んだ。

「高杉さんがどこまで本気かわからないけど、今は本気だよね?」
「俺はいつでも本気だったぞ。あんたこそどうなんだ?俺の台詞に合わせていただけか?俺はいつだってあんたと夫婦になる準備はできている。」

急に大きなことを言われて驚いた。何か言わなきゃと慌てる。いつもなら「いい男が釣れた〜」なんて軽々しく言い返せるのにこればかりは…。

なんて言えば喜ぶ?
なんて言えば伝わる?
なんて言えば…?
どう言えば…?
ああ何も出てこないよ。

「何だ、いつものあんたならすぐに返せるだろうに。…やはり、俺の台詞は全て冗談にしか聞こ、」

彼を落胆させたから余計に焦った。
焦って言葉より行動に移った。咄嗟のことで私も彼も驚いたけど、私は彼に接吻をしていた。唇を押し付けるような無理やりな接吻だ…。

「…あ、あんた…大胆だな…っ。流石の俺も慌てる他ないが、悪くない接吻だった。…これは俺からの申し出を受け入れたと言うことでいいな?」
「うん。焦っちゃって…接吻しちゃった。」
「はは、あんたらしい。今までで一番可愛い返事だったな。」

2人で照れる。照れながら見つめ合ってまた接吻を交わした。手を絡め合って互いの契りを確かめ合う。

これからの私たちはまた冗談混じりの本音を言って楽しむんだろう。そして、相手が情熱的で本気の時はお互い焦りながら何とか反応するんだろう。


なかなか楽しい夫婦になりそうだ。






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