恋の相談相手…高杉


「悔いがないように想いを伝えておけよ。…まぁ、玉砕したらその時は俺があんたをもらってやるよ。…なんてな。」

片想いの男に想いを告げるか否か、高杉さんに真剣に恋愛の相談をして三月、私の中で変化が現れた。
だんだん片想いをしている相手への恋心が薄れて、なんと相談相手の高杉さんに恋心が生まれてしまった!

彼は私を心配してくれるし恋の辛さを慰めて勇気をくれた。最初は心強くて励みになる頼れる存在だったけど、真剣に話を聞いてもらえるうちに彼の方が魅力のある男に見えて心が移ってしまった。

でも、散々悩んでおいて「今はすっかりあなたが好きです」なんて言えない。すぐに目移りする女だと思われたくない。
これからはなんて顔をして会えば良いのか分からない反面、彼に会いたくて仕方がなかった。

「よぉ、●。元気か?」
「高杉さん!高杉さんは町で買い物ですか?」
「いや、賭場からの帰りだ。」

悩みながらフラフラと町を歩いていたら本人とばったり出くわす。
まずい、顔を見ただけでとてもドキドキする。あれだけ長い時間相談しても、その時は何もドキドキしなかったのに今になって…こんなに。

「ん?何かあったのか?いつもと様子が違うみたいだが。また、例の男のことか?話なら聞くぜ。」
「ああ、えっと、いえっ。…平気、です!」

迷う。恋愛相談を通じて高杉さんと会う時間を作るのも策なのに下手な芝居を打ったところで彼は見破るだろうから。ここは変に小細工しないでおくべき!よそよそしい態度を見せるのも嫌なので今日のところは帰ろうとしたら、

「まあ、待ちな。今日はたんまり稼げたから飯でも奢ってやるよ。」
「え、良いんですか?…う、うれしいです!」

誘われて素直によろこぶ。高杉さんと居られるから嬉しい。でも、そんな本音はなんとか誤魔化さないと…。
軽い女だと思われたくない!高杉さんに惚れてると見抜かれてもだめだ!私はまだ女として見られていないと思うし、ここは慎重にいかなきゃ。

うう…二重に緊張する…。


ーーー

「どうだ?なかなか美味いだろ?」
「はいっ。中華街はあんまり来たことがないからとても楽しいです。…高杉さんはいろいろなお店を知っていて羨ましいです。」
「あんたが望むならいくらだって連れ回してやるよ。…まぁ、俺よりもあの男と来たいんだろうがな。」

なんて顔をしたら良いのかな。今までの私のように「彼と来てみたいです…」と照れれば良いのかな。でも、自分の気持ちに嘘なんてつきたくないよ…。
曖昧な表情ばかり浮かんでやりにくい。

「やっぱり何かあったんじゃないのか?…俺にならなんでも話せよ。隠されたら気になるじゃないか。」

鋭い彼は私の態度がおかしいことに気づき、優しい口調で尋ねてくる。その優しさに甘えたくなり、少し本音を話す。

「…あの人のこと諦めようかなって思うんです。たくさん相談したのにこんな結果で申し訳ないですが…。」
「ほぉ、そうか。あんたが決めたことなんだ、もう良いんじゃないか?あんたはその男に本気で惚れて悩み抜いた。その結果がこれなら良いじゃないか。」
「…は、はい。…ほんと、ありがとうございました。高杉さんに聞いてもらったおかげです。」

それ以上の言葉がうまく続かない。
これで良いのかな?
相談する内容がなくなったら彼と話すきっかけなんて無くなっちゃう…。これで良かったのかな?なんだか寂しくて怖い。

「相談事がなくなっても気軽に話に来いよ。ぱたりと話すことがなくなるなんて寂しい。」

まるで私と考えていることが同じ。その言葉が聞けてとても嬉しい。まだこの人と会えるんだから。会ってくれるんだから。

「それに、あんたに好いた男がいないのなら俺が遠慮せずにあんたを誘っても良いってことだな?」
「もちろん…私、もっと高杉さんと話したいです。」
「ほぉ…?」
「すごく頼りになるし、話しやすい…。話すきっかけがなくなってしまうのは寂しくて。…迷惑じゃなければ。」
「迷惑なものか。…いいぜ、話すネタが変わるだけだ。俺もあんたと話す時間がなくなるのは寂しい。…またこうして飯でも食いに行くか。」
「はい!」

嬉しい…!彼とはしっかり友情が芽生えていた。私はこれからこの人に振り向いてもらえるように頑張ればいいんだ。
安堵から笑うと彼は机に頬杖ををついて緩く笑いかける。

「これからは恋敵に譲らず、あんたを狙っても良いってことだな?」
「…!?」
「いや、何でもない。気にするな。」

思わず頷きかけて顔を止める。
慌てない慌てない…!軽い女と見られないように我慢した方が絶対にいいはず!ぐっと力んで緊張した顔で彼を見つめ返すと彼は店の女に声をかけて酒を更に追加した。

「他の男の名前があんたから出ないってのも良いもんだな」

今までの高杉さんよりもねっとりとした目つきに変わる。これは私がそう見たくて見えただけの顔かもしれない。だって、今までは私の恋を応援してくれる人だったんだもの。
私のことを実は想ってくれていて恋心を隠していたなんてことはあるはずない。

変に期待せず、慎重に頑張ろう…!






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