名前で呼んで…高杉


ー いいだろ?恋仲なんだから。
ー 恋仲の2人だ。こうなるのは自然な流れだろ?
ー 俺とお前は恋仲だからな。
ー 恋仲の好みくらい知ってるぜ。

私と恋仲になってから「恋仲」を連発する晋作。周りに人がいても2人きりでも関係なく、口癖のように言う。彼の中では必殺技のようだ。それを言われれば私は従順になってしまうから。

ただ、●と言う言葉が殆どでてこないのも困る。付き合う前はだいたい「あんた」と言われてきた。付き合ってから私の名前を呼んでくれると思ったら「恋仲」が私の代名詞になった。…なんでそうなるかなぁ。

「私の名前忘れてないよね?言える?言ってみて。」
「はぁ?何を言うかと思えば、●だろ。」
「よかった。…あんたとか恋仲とかって言うから不安になった。」
「ははは、自分の恋仲の名前を忘れるわけないだろ。」
「………。」

そこは自分の●と言って欲しいのに!!

それからというものやっぱり基本的に名前で呼ばれることがない。彼の声で私の名前を呼んで欲しいのになぁ。


「さて、今夜はどこに行く?どこにでも連れて行ってやるぜ。」
「じゃあ、最初に飲みに行ったところがいい!」
「たまには良いな。あんたと初めて恋仲として夜を過ごした店だしな。」

見事に「あんた」とか「恋仲」で表現しきってる。何なんだそれ。せめて、あんたを名前に置き換えて欲しいんだけど…うーん。
モヤっとする私を気にせずに私の手を引いて店に歩く晋作。

店で飲むのは楽しかった。ただし、一度も名前で呼ばれない。晋作は相手の名前を呼ばない癖でもあるのかしら。

「晋作〜。」
「何だ?もう酔ったのか?そいつは都合がいい。褥に向かう頃合いかと思っていたからな。」
「晋作ーー!」
「何だよ。俺の腰にしがみついたりなんかして。嫌がっても俺は勝手にするぜ?」
「名前で呼んでええ!!」
「ああ、分かった分かった。」

酔った勢いで晋作の腰に抱きついて頼む。彼はあぐらの上に私を運んで抱きしめてあやし始める。抱きしめられて頭ぽんぽんされるの幸せだけど,そうじゃない!て言うか,何でそこまで呼んでくれないの?

「私の名前、嫌い?昔こっぴどくフラれた女と同じ名前とか?」
「ぷっ…なわけないだろう。恋仲と呼んだ方が周りにも俺たちの関係が知れ渡る。それにあんたの反応が面白いからさ。」
「あんたも恋仲も禁止!」
「……。」
「名前で呼ばなきゃ接吻もそれ以上も禁止!!」
「…ほぉ。ならば、呼べば全てしていいんだな?」
「え?」
「●。」

名前を呼ばれてすぐに接吻された。

「●。」

着物に手をかけられて解かれていく。

「わ、わ、あ、ちょっと!」
「●…。」

服が緩んで足や胸元が見える私の名前を呼びながら私をひょいと抱き抱える。


「自分で蒔いた種だろう?据え膳食わぬは男の恥ってな。…今夜は寝かせないぜ、●。」


名前を呼ばれたはいいけど,とんでもない展開になってしまった。






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