花火に必要なもの…高杉


「わぁ、わぁ、また…。」

高杉さんと一緒に戦った後、必ず凄い戦いの跡が残る。紙が何枚も散らかるし、火薬の匂いが残ってるし、爆発のために周りが焼けこげる。

「誰が暴れたのかすぐわかりますよ。」

彼が散らかした紙を拾い集めていると、

「そんなものは放っておけ。何の害になるわけでもないさ。」

当の本人は岩の上に座って三味線を弾き始める。
自由な人だ。…まぁ、ここは野原の真ん中だから誰も気にしないんだろうけど、何となく紙が散らかっていれば掃除したくなるし、残火があったら危ないから見回って危なそうなところは足で踏んで消したくなる。

「私の家の近くで戦う時は火薬は使わないでくださいね。」
「おっと、その約束はできんなぁ。」

何故か楽しそうだ。紙を集め切った私は機嫌良さそうに曲を弾き続ける彼の元に戻る。
私が戻ってこようとも彼は演奏をやめない。夕日に体を照らしながら1日の締めくくりをするかのように無心に三味線を掻き鳴らしていた。

この人は本当に自由だ。
周りを気にしないで自分が正しいと思ったことややりたいことを疑わずにする人。ただ、悪い人ではないし憎めないところがあるので結局そのまっすぐなところに人は惹かれる。

…今日も彼にたくさん振り回されたなぁ。
今日は彼から賭場に誘われて賭けをして、結構勝てた。稼いだ金を貯金に回そうとしたら「おいおい、パーっと使わないでどうする?」と言われて強引に飲みに付き合わされた。その帰り道に盗賊に絡まれて一線交えて今に至る。なかなか忙しい日だった。

「高杉さんって落ち着いて見えてすごく情熱的で激しい人ですよね。今日一日、平凡とは無縁でした。」
「俺と一緒に過ごせて楽しめただろ?俺は花火のように生きたい。退屈そうに町を歩いていたあんたを見たら派手に楽しませてやろうと思って体がうずいたのさ。」
「ああ,確かに花火みたいな派手さと火力がありますね。」
「俺のことをよくわかっているじゃないか。」

彼は語尾をあげて返事をし、演奏を終えた。
ちょうど日が沈む。夕方が終わり、夜が来た空を見上げて満足した彼は立ち上がると「帰るぞ」と私に一声かける。

「俺が花火ならあんたは火だろうな。」
「え?」
「あんたがいると俺は意気込む。よし、あんたのために何かしてやろうって気合いが入るのさ。…花火には火が必要だ。俺のためにも隣にいてくれよ?」
「え?」
「ほら、とっとと帰るぞ。また盗賊に狙われるのは御免だろ。」

さらりと凄いことを言われた気がするけど気のせい?
高杉さんはサッサと足早に歩いて行ってしまう。待って下さいよ〜っと追いかける私は彼の本心がわからず、結局その日の最後の最後まで振り回されてしまった。




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