さしすせそ


「女を口説く"さしすせそ?"って知っとるか?」
「ぷっ!真島さん、モテたいの?」
「何やねん、その失礼な聞き方はァ。この前武藤らと飲んでたらおもろい話になったんや。」
「フフ。…さ、はなんですか?」
「探したで、や。」
「………?」
「………。」
「………。」

ふわーっと春風が2人の間に流れる。●は隣でヤンキー座りをする真島を見つめ、真島は真顔で見つめてくる●を見つめ返した。

「真島さんはそんなこと言わなくてもモテそうなのに。」
「そうかぁ?ま、ゴローちゃんに掛かればインド人の女でも落とせるやろな。」
「何でインド人が出てくるんですか。」
「●の好きなタイプは何や?」
「私ですかー、背が高い人ですかね。」
「わしや。」
「…腰がくびれてる人も好きかな。」
「見てみぃ。」

ジャケットをめくった真島の腰は見事にくびれており、●はスッと親指を立てる。

「話が合う人もいいですねぇ、話が楽しくないと一緒にいられないし。」
「お前とわしは、よぉ屋上で話し込んどるのぉ〜。」
「ダーツとかビリヤードも上手いと一緒に遊べるしいいかも。」
「週1でいっとるやろ。わしやな。」
「…ノリがいい人もいいですね。」
「わしやで。」
「…でも、やっぱりイケメンじゃないと。」
「安心せい、横におる。」
「足が長い人はスタイルが良く見えていいですね。」
「わしのことなんやろ?」
「何でさっきからわしわし言うんですか!?」
「どこをどう聞いたってわしやないかボケェ!」
「いや、私は自分の好きなタイプを…、」
「金持ちで喧嘩強くて洒落てて酒が強い男、がそのあと続くんやろ?」
「あ、はい。」
「わししかおらんやろがァ!」

そんな、メンチ切るような角度と言い方しなくても…と呆れる●は真島から肩を握られて何とも言えない気持ちになった。

「ちなみに、真島さんのタイプは?」
「ショートヘアや。」
「私はセミロング、ぜんぜん違うじゃないですか。」

ペシっと肩に乗っていた真島の手を振り落とす。

「…ええやんけ。髪くらい。そないなみみっちいモン気にせんわ。ただ、好み聞かれたから答えただけや。お前がロングでもハゲでも白髪でも抱いたるわ。」
「なっ!?」

流石に顔を赤らめた●。真島は●の肩をだきせると間髪入れずにキスをした。

「!?!」
「お前のファーストキスはこのわしのもんや。」
「ファーストキスなんてとっくの昔に終わってますよ!」
「ほんなら、最後のキスや。わし以外に唇許したら許さへんでェェ。」

ドスの効いた声にビビる●は勢いでこくこく頷いた。
キスをして顔を離した真島はヤンキー座りのまま青空を見上げる。●は顔を赤くしたまま前を向いて体育座りをする。

「……。」
「……。」
「理想の結婚相手はどないな奴や?」
「!!?!」


end

「武藤、プロポーズのための"さしすせそ"ってないんか?」
「えぇ〜、流石にそんなの売ってないっすよ」
「ほんなら、たちつてと、でもええで?」
「そう言う問題じゃないんすよぉ〜」
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