年下支配人真島が初デートを頑張る


今日は●さんと初デートや!
●さんはわしの強引な告白に頷いてくれたんや、絶対絶対嫌われたらあかん!嫌がられないように、失礼のないようにするんや。

真島吾朗は高価なスーツの襟元を正し、何度もトイレの鏡で外見をチェックした。

よし、これでええ。髪も整えたしバッチリや。…ああ、なんや、親父に会うような緊張感があるなぁ……って!あかんあかん、何弱気になっとるんや。初デートでガタガタ震えとる男が●さんに好かれるわけない!
わしは男や、男真島や、しっかりせぇ!!

真島の無言の気迫に周囲の男たちは身を縮めながら手を洗い、いそいそとトイレを後にする。
腕時計を確認すると約束の時間の15分前なので待ち合わせ場所へ向かった。

約束まで15分もあるしデートのシュミレーションでもしたろ。まず、●さんが好きな本屋に行って、その後レストランに連れて行って、…って、あれ?●さん!?

「あ、真島くん!もう来てたんだ!ごめん待たせたかな?」
「いやいや、そないなことあらへん!今きたばっかや。」

●さんも15分前に来てくれたんか。わしを待たせんように。ええ人や。
ああ、おしゃれな格好なぁ。●さんは落ち着いとるし服も寒色が似合うのぉ。イヤリングも派手すぎず地味すぎず、こういうアクセサリーが好きなんやな。覚えとこ。

「私こんな服できたけど大丈夫だったかな?真島くん、スーツで来てくれるとは思わなくて…。」
「全然!全然大丈夫や!●さんは何着てもかわええし文句なしや!」
「ふふ、ありがと。じゃあ、えっと、本屋に寄って良いかな?今日発売の本があって。」
「おう、ええで!」

●さんも緊張しとるようやけど、ほんまはわしも相当緊張しとる。そんでも緊張を抑えてなるべくいつも通りの自分で話す。あとは●さんと目があった時にニヤケんように力むし少しでもええ男になるように声も低めにした。
…わし、盛りすぎか?

「私この作家さん大好きで…あ、やった!あったあった!人気だから売り切れてると思った〜っ。」
「おお!良かったのぉ。なんちゅー作家なん?」

本1冊買えただけでもこないに喜ぶ●さんはかわええ。●さんをこんなに喜ばせる作家も覚えた。推理小説とか頭を使う話は得意やないけど●さんが好きなら今度読まんと。そしたら●さんと話せる話題も増えるし。

「お腹減ったやろ?このレストランなんやけど。」
「え、こんなに高そうな…。」
「わしの奢りや。味がええから是非●さんにも食べてほしいんや。ほな、行こうか。」

レストランでは●さんが何の料理が好きか教えてもらった。何でも好きっちゅーことで今後食事に誘うのが楽になってええ。酒もそこそこ飲めるからバーで飲むのもありや。
…まぁ、でもいつか●さんの手料理食べてみたいなぁ〜…なんてのぉ。

「お腹いっぱい。すごく美味しかった!真島くんのおかげだよ。」
「そりゃ良かった。まだまだ勧めたい店があるから、これからも期待しとってな。」

この夜、●さんとのこれからのことを考えてた。次はあの店に連れて行きたいとかこんな場所もええなとか。もっと仲良くなれたら泊まりがけでもええなとか。
こんな風にこれからも仲良くできることを期待しとるわしに気づいとるやろか?●さんはこれからもわしをアテにしたり、一緒におりたいと思うやろか…?

「今日は楽しかった。本も買えたし、美味しい料理食べられたし、真島くんとプライベートで会うのは初めてだし…本当ありがとうね。」
「ありがとうなんて、変やろ。わしが惚れて一緒に時間過ごしとるんやから。」
「うん、でも、キャバレー大変なのにわざわざ休みとってくれたんでしょ?真島くんの仕事は大変だって聞くからさ。」
「そりゃ、わしが半年片想いしとった相手や。●さんのためなら休みくらいとるで。…少しでも一緒におれるんなら何でもやったる。」
「…真島くん…。」

●さんは照れとった。口元を片手で覆って顔を赤らめる顔を見ているとムラムラした。そんな顔するのは反則や。もっと見たくなるやないか。…でも我慢や、真島吾朗。今日は絶対にしたらあかん。身体目当てと思われたら嫌がられるに決まっとる。

でも、…でもや、…ホンマは触れたい。抱きしめたい。それが無理でもせめて手を繋ぎたい。
イケるか?ええか?●さん照れとるし、一応わしは恋人やし、触れてもええはずなんやけど、●さんはまだそこまでわしを受け入れとらんかもしれん。合わせとるだけかも。
…せっかく良い感じになったのに台無しにしたくない。触れたいのはわしの一方的な欲求かもしれん。やっぱり●さんがその気になるのを待って、

「真島くんっ。」

ん…?…ん??…わし、今●さんに抱きしめられとる!?

「ごめん、急にっ。でも、さっきから真島くんが可愛くて。」
「かわいい!?」
「だって、いつもは少し怖いのに今日はワンコみたいに素直で懐いてきててかわいいし、私に遠慮して気を遣って立ち回ってるし。大事にしてくれてて嬉しかった。」

●さんには何もかも見抜かれてたっちゅうわけか。ちょっとかっこ悪いけど、わしが●さんのこと大好きで大事にしとるのも分かってもらえたなら安心や。安心して抱き返せる。

「決まっとるやろ。そんくらい大事な女や。」
「!」
「本音言えば今すぐにでも抱きたいくらい●さんを女として求めとるし男として求められたい。ほんでも、そりゃ流石に急ぎすぎやし●さんの気持ちを無視したら嫌われる。●さんがええっちゅうまでは我慢する。」
「…真島くん。」
「……。」
「ありがとう。」

…ああ、カッコええこと言ったわ。カッコ良すぎることをいってもうたわ。その代償は大きいで。
ほんでも、こんなに●さんが喜んでくれるんやったらええ。いつか、●さんの気持ちが決まったらそん時はもう…そりゃああもう…!


「ふふ、真島くん、次はいつ会えるかな。」


その言葉をもらえるだけでもうええでっ。
…今は!!


end




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