メール


真島さんと飲んでる時に何度か真島さんの携帯が鳴る。なると言ってもメールのように一瞬鳴るだけ。真島さんはチラッと液晶画面を見ると、なんでもないように、それでどうなったんや?と話に戻ってくれるけど、今日は何度かなるものだから私の方が気になった。

「携帯良いんですか?」
「ん?ああ、別にええで。にしても今日はしつこいのぉ。電源切ったるか。」
「あ、いや、そのままでいいんですけど…。」
「●との会話に集中できひん。どーせ大したようでも無いんやからのぉ。暇な女が昼飯奢れゆうてくるんや。はー、めんどくさー。」

半目でめんどくさそうに携帯電話の電源を切った真島さんに気になって聞く。

「メールってあまり返さないんですか?」
「あぁ?メールっていちいち面倒やないかぁ?細々した文字いちいち見んのも打つのもめんどくさいねん。ほんなら電話で用件だけ言った方が楽やわ。」

真島さんらしい。めんどくさがりだもの。私は真島さんの連絡先を知ってるけど、真島さんの返信は短いし返事が遅い。もしかしたら私のメールも疎ましいのかもしれないなと思って、少し傷ついた。

「ほれ、次何飲むん?もう空やで。」

そうかと思えば、こうしてリードしてくれるし、楽しく話せる。私はあまり気にせずにまた話の続きをしてその日は楽しく過ごした。
でも、頭の中で真島さんにしつこくメールをする人や真島さんのメール嫌いなところが気になっていた。

それから2週間後。
2週に一回は真島さんに連絡をしていたけど、いつもメールで誘っていたから連絡をする手が止まる。

(んー、メールきてわずらしいとか思うのかな。いつも長く打ってしまっていたし、これからは短文で送ろうか?…それとも電話がいいのかな。)

モヤモヤしながら短文を打ったものの、前と比べて送信ボタンがなかなか押せない。

ー 暇な女が昼飯奢れゆうてくるんや。はー、めんどくさー。

(それ、私もじゃん。いや、自腹のつもりで行って結局は奢ってもらってるし、暇だから声かけちゃう女って、私も当てはまるじゃん。)

それを知るとすごく傷ついてしまった。あー、なんだ、そんな程度に見られていたのかって。私は真島さんのこと好きだし話がしたいから誘ってるけど、真島さんにしてみたら奢んなきゃいけない女と同じものなのかも。

(はー…やめよう。)

私はメールを削除してその日から連絡を控えた。
真島さんは他にも女の人と話して奢ってる人みたいだし、そんな中の一人になりたくないという変なプライドまで邪魔をして他の友達を誘って遊んでいた。

そんなある夜、友達と外食に行っていたらカバンの中の携帯がブーブー鳴る。友達は焼肉を焼いたり、話すのに夢中で私の携帯に気づいていない。私は親か他の友達の暇つぶしメールだと思ってずっと無視をしていたのだけども、その子と店を後にしてカラオケで3時間くらい歌った後、家への帰り道に携帯電話を開いたら真島さんからのメールで目を丸くした。

ー 生きとるか?また飲みにいかんか?
ー(着信1件)
ー(着信1件)
ー どないしたんや?気づいたら折り返し頼むわ。
ー (着信1件)

最後の着信が1時間前で慌てて電話をかけ直すと、ワンコールもしないうちに真島さんが電話に出た。

ー●!どないしたんや?
「あっ、ごめんなさい!友達とカラオケしてたら気づかなくて!」
ーなんや、カラオケかいなぁ…5時間も歌ったんか?
「あ、いえいえ、その前に食事してまして!」
ーならええけど…いつもすぐ返事寄越すお前がこないに気づかへんのは妙に怖かったで?
「ふふ、すみません。」
ー まぁ、メールも電話も無視される女の気持ちがなんとなーくわかったわ。
「ふふ、悲しくなりましたか?」
ー何楽しんどるんや。笑うとこちゃうで?
「すみません。あ、そうだ、いつ飲みます?私はいつでも!」
ー ほんなら明日やな。せやなぁ、いつものとこに待っときぃ。
「わかりました。楽しみにしてます。」
ー おう。ほなな。

プッと切れた電話、繋がっていないけれどそのまま耳に当てていた。口元は緩んで、嬉しかった。そして、彼は嫌がるだろうと思ったけど、メールをしてみた。

ー真島さん、明日楽しみです。今日はすみませんでした。おやすみなさい!

きっと、なんで今電話したのいちいちメールしてくるんだ?とめんどくさい顔をしてる気がする。メールを開いて読んですぐに閉じる彼が目に浮かぶけれど、

ー おう。ゆっくり休めや。

返事は意外にも早くきて、その短いメッセージがすごく嬉しくて、そのメッセージを保護しておいた。


end

何度も読み返しちゃうな。これ。

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