男の執着


「お前さぁ、酷いよ。何で俺に嘘ついちゃうの?悲しいじゃん。」

佐川さんは私にいくつかの写真を投げつける。写真はヒラヒラと舞って私の足元に落ちた。それは私が他の男と会っている隠し撮りの写真。私の心臓が冷たく脈打った。

「俺さぁ、これ見た時、手が震えちゃったよ。お前は真面目に仕事に行ってるって信じてたのに実はこれだもんな。」

彼はいつもの表情なのに声がかすかに震えていた。それは悲しみからなのか、怒りからなのか。強く怒鳴るわけではないが、ユラユラと近付きながら写真を踏んで近づいてくる彼は余計に怖かった。

「許せなくてさぁ、この男殺しちゃったよ。でもいいよな?人の女とった男なんだからさ、悪いのはあいつだろ?それと、お前、だよなぁ?」

壁に追い詰められた私はやっと後悔した。
彼から付き合おうと言われたことはない。ただ、呼ばれたら会いに行って、ご飯を奢ってもらい、流れでホテルに行くような関係。
彼が裏の社会と関わっているのは知ってたけど自分に害はないし、半端で都合がいい人だという軽い気持ちで関わって、ある時他の人とも遊んだらこんなことになった。

「俺とその男どっちが本命だったの?もしアイツだって言ったらさ、アイツのところに逝かせてあげるよ。ここですぐに。」

彼の手が私の首を包みこむ。そこに力こそないけれど、その顔は本気で私の返事次第でやると言う目をしていた。

「どうしたの?ビビって言葉も出ない?いいよ、俺待つから。」
「佐川さんに、ここまで愛されてるなんて…分からなかった。」
「ねぇ…お前さぁ。……俺をどれだけ傷つけたら気が済むの?あんなに美味いもん食わせてやったし、欲しいもん買ってやったじゃん。悩みも聞いてやったし、行きたいところ連れてったじゃん。お前は好きでもない奴にそこまでするの?」
「…ご、ごめんなさい。」
「それに、俺のこと好きって言ってくれたよなぁ?あれ何だったの?」

来た。グッと喉を締め付けてきた彼の手に慌てて彼を押し返したりその手を振り払おうとするけれど、彼をどれだけ蹴っても彼の手を引っ掻いても彼の顔も手は何一つ動じなかった。…苦しい。

「久しぶりに人を大事に思ってたのになぁ。お前のこと可愛くてさぁ、会うたびに俺好みになっていくお前をずっとそばに置いておきたくなった。我儘言われてもへそ曲げても俺はみんな愛してたよ。…だから、…このまま、殺しちゃうのも、辛いんだよねぇ。」
「ぐっぁ、…ガッ!ぅエッ!」
「おいおい、聞いてるよなぁ!?」

苦しくて彼の言葉なんて入ってこない。目に涙を滲ませながらうめいていると、呆れたように彼は喉から手を離した。私は息を吸いながら、その場に崩れ落ちてむせ返る。

「あー。やっぱりお前のこと殺すのは悲しいな。…ねぇ、もう浮気しないってんなら、一回だけ許してあげる。どうする?」

しゃがんで私を覗き込む彼。こんな恐ろしい人と交際なんて怖くてできないけれど、そう言ったら生きて帰れない。私は生きるためにこの人を選ぶしかなかった。

「そ。じゃあさ、許すよ。いや、許してあげるよ。一回だけな。」

彼は割り切るように天井を見上げてフゥと息をつく。そして、私の肩を抱きながらそっと私を立ち上がらせた。
私は彼に触れられるだけで鳥肌が立つ。心臓がバクバク脈打って危ないから離れろと訴えるのに、足はすくんで逃げられない。
ヨタヨタと自分の部屋を支えられながら歩いていると、彼は寝室の方へ私を押し進める。

「ほら行くよ。何足止めてんの?」
「え?」
「さっき愛されてると思わなかったって言ってたよね?だからさ、今日はちゃんと教えてやるよ。」

ーー

「●ちゃんさぁ。ねぇ、起きてる?」

疲れから目を閉じていると頬杖をつきながらタバコを吸っている佐川さんに起こされる。

「俺のもんだっていう証拠として首輪つけない?」
「く、首輪?え、いや、それは…ちょっと、」
「いいじゃん。似合うと思うよ。って言っても、本物の首輪だと目立つからさ、ネックレスってところにするか。どうよ?いくらでもいいぜ?…でよ?そこにGPSっていう奴付けるんだよ。」
「GPSってなに?」
「お前がどこにいるのかすぐわかるんだ。」
「……。」
「なんて冗談冗談!ははっ、ビビった?」
「はい。」
「代わりに爆弾でもつけてやるよ。今度お前が裏切った時に俺が迷わずにお前を殺せるように。…いや、でも嫉妬で狂って押すこともあるかもしれねぇな。そんなことでお前の首が飛ぶのもゴメンだ。やっぱり指輪にして俺に嫉妬させたら指一本飛ぶことにするか。ならお前も本気で気をつけるだろ?」
「…怖いよ、普通恋人ならしないよ。」
「お前は普通の恋人ならしないこと、したんだぜ?分かってるよな?」

グッと顎を掴まれて煙を吹きかけられる。煙の中で彼はギラついた目で私を見てから、また何かを思いついたらしい。

「そうだ。やっぱりさ、体に刻ませてもらうか。」
「えっ?何するの?」
「俺が嫉妬したらお前の体に傷をつける。こんなに綺麗な肌を切り裂かれたくなかったら俺から目を離さないことだ。な?簡単だろ?それに、万が一お前が浮気した時、肌切り刻まれてる女見たら、普通の男なら勃つもんも勃たなくなるだろ?」

佐川さんは、へへっと小さく笑うとタバコを灰皿に落として、うーんと伸びた。

ーー
それからと言うもの、私は彼以外の男をそばに置くなんてことは絶対にしなかった。彼が嫉妬をしたら私の体が少しずつ血に塗れていくのだから。

そして、あれから佐川さんは仕事以外は私と時間を作るようにしていた。もはや愛というよりも監視。私が誰と何をしているのか知らないと、気が済まない時があるらしい。私が行こうとする場所に先回りをして立っていることがある。まるで誰かが私の行き先を佐川さんに教えてるみたいに、私の行先は彼に筒抜けだった。

「よ。こんな所で何してんだ?」
「あ…、ああ、本を買いに。」
「へぇ、今度は何読んでんの?あの好きな作家の新作でも出たの?」
「そう。それを買いに来たの。」
「ほら、これで買ってこい。」

まるでそれを買ったら早く戻ってこいと言わんばかりに。札を渡されて本屋に行き、すぐに帰ってきた。佐川さんは私の肩を抱くと歩き出す。

私は佐川さんがずっと怖い。でも、私が悪い。彼が可愛がってくれていたことはわかっていたはずなのに、心のどこかでいいように利用していた。欲しいものを買ってくれて、裏の力と繋がってるのにこちらには手は出さないし、何か困った時は力になってくれるし、その関係をそのまま利用していた。
彼の隣で歩くと強くなった気がしていたし、私にはバチが当たったんだ。

「そう言えばさぁ、前に食いたいって言ってたよね。フカヒレ。食ってみる?」
「フカヒレってどんな味がするの?」
「食ってみりゃわかる。それとも、この町で一番美味いおでんでも食いに行くか?」
「おでんよりフカヒレは不味いの?」
「くくっ、色々高ぇもん食ってきたけど、結局安いおでんが1番美味いんだよ。」

いい子にしていたら私は彼から守られるし、何の害もない。あの時、浮気をして殺されそうになったあの恐怖から学んだ。死にたくなければこの人を怒らせないことだって。

「なぁにぼーっとしてんだよ。別の世界いってら。」

コンっと横からこめかみにデコピンされる。はっとして振り向くと、つまらなそうな顔を向けている佐川さんがいた。

「お前ってさ、どうしていつもそんな風に違う世界行っちゃうわけ?俺を忘れるよなぁ。お前の頭の中だけはお前しか知らないからな。行き先は読めても考えまでが読めないんだよなぁ。」
「…ねぇ、司さん。後で聞きたいことがあるの。」
「ここじゃ聞けないのか?」
「どうかな?」
「何だその言い方。俺を試そうってのか?まぁいい。こっち来な。」

何を警戒しているのか彼は路地裏に向かって私に向き合った。

「で、何だよ。」
「…私のどこが好きなの?」
「は?…っは、急に何をいうかと思えば。まぁそりゃ、道端じゃ聞けねぇ話だよなぁ。恥ずかしくて言えねぇよ。…うーん。そうだなぁ。…ははっ、俺もよく話からねぇんだよなぁ。」
「え、何それ?」
「そりゃ、お前に愛されたことないからさ。どこが好きって、単純に言えば顔や声だけど、お前に優しくされたこともないから優しいところだなんて言えねぇし、料理も食わせてもらったことないから料理の腕前ともいえねぇし。」

佐川さんはサラッというと自嘲気味に笑う。

「思えば、何でこんなにお前に惚れてんだろうな?でも、何故かお前を離したくないし、他の男に取られたくもねぇ。そんなところだ。」
「あんなに嫉妬したのに、好きなところは分かってないの?」
「まぁな。ただ、あの時は本当にお前を殺そうとしたよ。あの男、まだ許せねぇ。ふっ、もう顔潰して海に沈めんだけどな。おかしなもんだよな。殺したらスッキリするはずなのにさ、こんなことってあるんだな?」

ふぅ、とタバコに火をつけて一服しながら答える彼が殺人を犯したことを淡々に語り、恐ろしくなる。でも彼は私を気にしないで夜空を見上げながら続けた。

「俺がもっと若けりゃお前からの愛じゃ足りなくて不安で悩んだろうなぁ。そして、あの時は間違いなくお前を殺してたね。あの男より先に。命拾いしたなぁ?なぁ?でもよ、お前もそろそろ覚悟決めとけよ。いつまでも俺が穏やかでいられるわけじゃねぇ。お前があんまりつれなくするんなら俺だって何するかわからねぇからさ。」

へへ、と和やかな顔でいうものだから言葉と顔が不釣り合いで麻痺してくる。ただ、私に残された時間はあまり長くないと言うことだけよくわかった。そして、ここまで彼が予告をするものだから、変に冷静に腹を括り始める自分がいた。

ーー

ホテルで私は佐川さんの膝の上に座っていた。シャンパンを開けて、グラスを傾けながらただ何を話すでもなく黙って身を寄せている。佐川さんは見慣れた街に目をやりながら、少しだけ酔った顔をその窓ガラスに映していた。

「俺に抱かれて幸せな時ってある?…なんて、ないよなぁ?俺何聞いてんだろ。酔ったかな?」

自分ですぐに笑って取り消す佐川さんは酔っていた。私を後ろから抱きしめながら、はぁー、と天井を見上げる。

「お前と一度でいいから愛し合いたいなぁ。…ただ抱くんじゃなくて。興奮したお前が見たい。…そうだ。媚薬があったら飲んでくれるか?」
「危ない薬?」
「いや、ただ興奮してヤリたくなるんだ。ヤクとは違うから安心しろ。…で、飲んでくれるか?頼むよ。飲んだ方がお前も楽しいと思うぜ?」

皮肉か、彼は半笑いで言った。求められるから身を捧げている。相手が相手だし従っている。そんな夜だったけど、その薬を飲むと少しは満たされるのなら悪くないのかもしれない。

「前にも言ったろ?あんまりつれなくすると後が怖いぜって。人形みてぇに抱かれて俺が飽きるのを待つなんて諦めな。」
「なら今度飲みます。」

素直な返事に満足したのか佐川さんは満足そうに笑った。そして、ポケットから取り出したポケベルで誰かに連絡をして、私にキスをした。

私は、…自分の人生はこの男が死ぬか離れるかするまで奴隷のように不自由な生き方を強いられるんだろうと思い、心の奥でため息をついた。

が、そんな疲れるような未来はいきなり閉ざされた。

ホテルで会った日を境に、彼から連絡が途絶えた。毎日連絡が来ていたのに、3日、4日、1週間…、彼はその姿さえ私の前に見せなかった。

ー どうしたんだろ?

私は彼の仲間なんて知らないから、何が起きたのか知る由もない。ただ、何か大きなことがあって私に構っていられなくなったか、もしくは死んだか、とそんなことくらいは予想できた。

私はGPS付きのネックレスをすることも、爆弾付きの指輪を指にはめることも、媚薬を飲むことも無くなった。
彼がいなくなって12日目。多分もう会うことはないんだろうと察した時、目の前が開けたような、重い鎖が取れたような、私1人で立っている感覚を久々に感じた。
ただ、その反面、私を盲目的に欲しがっていた存在を失ったことで孤独を感じた。この先あんな風に私を掴んで離さない人間なんていないだろうから。
寂しくはないけれど不安だった。この先誰からも必要とされないんじゃないかという漠然とした不安に包まれる。

ー 意味わかんないや。

忘れようよ、あんな気持ち悪い男。
騙されちゃダメだよ、あんな怖い男に。普通ではない人と長く一緒にいすぎて頭がおかしくなったみたい。早く直さないと。

自分の中のまとめな部分を叩き起こして帰宅する。

すると、アパートの部屋の前で転々と赤い血が落ちていた。鼻血というよりはもっと量があって、その血が私のアパートの部屋の前に続いている。ドアノブに血がうっすらとついていてゾッとする。鍵は開いていてドアノブを回すと、玄関や床に血がついていた。

「…よぉ、●。」
「…つ、司、さん?」

ソファーに座って…いや、半分体を傾けて倒れるように横たわっている彼がいる。白いシャツを羽織っていて、腹部に包帯が巻いてあるけれど、血が滲んでいた。

「え、…な、なにしてるんですか…怪我してるのなら、病院に…行かないと。」
「心配すんな…。」

止血程度の包帯にしかなっていないのに。弱った顔で私を見上げる彼は、死ぬのかも知れない。ここを死に場所に選んだのかも知れない。

「こんな俺でも…まだ優しくしてくれねぇのか?…冷たい女だなぁ…。」

苦笑いをしている佐川さんは痛そうだった。刺されたのか、撃たれたのか。私はそっとソファーの近くに座ると彼を見つめる。

「まだ死なねぇよ…見送る目で見るんじゃねぇよ。」
「何があったんですか。」
「カタギのお前にゃ関係ねぇ話だ…、早く治して…お前を守らねぇとな。」
「え?…私、巻き込まれるんですね。」
「へへ、普通こんなことしたらいけねぇよな…でも、よ…刺された時思ったんだよ…。」

白い顔をしていた彼が笑う。その口から出た言葉に耳を傾ければ、同情なんてする余地がなくなった。やっぱり彼の本性は凶悪で歪んでて残酷な死神。

「お前を離したくねぇって…俺から離してたまるかってよ…、死ぬんなら道連れだ…地獄の底まで連れてってやるってな…。」

笑った彼の脇腹からじわっと血が滲んだ。

ーーー
あの日から5日後。
佐川さんは美味しそうにタバコを吸っていた。いつもの茶色の上着を着て、空を上げながら私がくるのを待っている。

私は佐川さんに声をかける前に同じく空を見上げた。
神様はひどい。こんな死神の方を愛するんだから。いや、彼を見殺しにしようとした私への罰なのかも知れない。

あれから彼は気を失いこそしたが、結局死ななかった。数日白い顔で私の部屋のソファーに横たわり、包帯に血を滲ませていた時、私は部屋の隅で頭を抱えていた。

この事態をどう説明すればいいのか、彼を狙った仲間がこの部屋を暴いて私を殺しにくるのか、なら逃げなきゃ。でも、この死体が見つかったら私は警察に捕まるに決まってる。彼が刺された背景は何も知らない私なのに死体を放置していれば言い逃れなんてできない。

私は部屋の隅で呆然としながら、2日ほど彼の胸が静かに上下するのをただ見つめていた。本当にただそれしかしなかった。
彼は私から手厚い介抱を受けることも病院に運ばれることもなく冷たくソファーに横たわっていた。
そんな彼が目を覚ましたのは3日目の昼だった。いてぇなぁ…、と当たり前の言葉を突然漏らしながら、弱々しくも、拳を固めて起き上がった。

まるで死神が長い眠りから目を覚ましたような、おぞましいモノでも見るかのような感覚に陥る。

「…おい、水くれよ…、死んじゃうだろ。」

乾いた声で私に水を求める彼。私は言われるがままにコップに水を入れてフラフラと近づいて差し出す。砂漠で喉が渇いた旅人が水を飲み干すようにあっという間に彼は水を飲んだ。そして、ウゥと呻きながら起き上がって脇腹を抱えながら、私を見た。目は落ち窪み、肌は白いけれど、彼はゆっくり笑う。

「ほんと、お前は何もしてくれなかったみてぇだな。まぁ、出来るわけねぇよな…人が刺されたら普通救急車呼ぶだろうけどよ、説明しようがなくてしなかったんだろ?それとも、俺にここでくたばって欲しかったのか?」
「…分からない。もう、何したら正解なのか分からない…。」
「まぁまぁまぁ、分からなくもないさ。俺も道連れのためにここに来たんだからよ、恨まれても歓迎されなくても分かるさ。安心しろよ。俺は怒っちゃいねぇよ。寧ろ、俺を警察に突き出したり、逃げ出してなくて見直したところだ。それに、とどめを刺さなかったこともな?」

彼はゆっくりと起き上がって、仲間に連絡をとりながら部屋を出て行く。血の痕と匂いを残して。去り際に、また連絡するぜ、と言い残す彼はいつもの彼だった。

あの日のことは忘れないだろう。
ほぼ死体のような彼と3日も過ごしたことを。これから何が起こるか分からない、何をしたらいいのか分からずに思考が停止したあの時の恐怖も。

今目の前に彼が生きていなければ、今頃私はどうなっていたのか。警察に捕まっていたか、ヤクザに追われたか。どちらに転んでも私はこうして外をフラフラと歩いていられなかっただろう。だから、彼に生きていてもらって助かった。
ただ、彼はまた本能的に私を道連れにするんだろう。確実に。

「よぉ、来てたのか。なら声掛けろよ。」

彼は死の底から立ち上がり、私の元へ執着で戻ってくる。どれだけ血を流そうとも、リスクを伴おうとも、私を巻き込むことを忘れない。

「体は大丈夫なの?」
「ああ。平気だ。」
「司さん、こわい。」
「はっ、何を今更ビビってんだよ。」

彼はタバコを踏んで消すと私の前に立ちはだかる。彼の顔色は良くて、上着を新調していた。命を狙われようとも死にかけようとも、治って仕舞えば恐怖や焦りなんてすぐに拭い去って、以前にも増して不動の彼がそこにいる。

「お前は俺を見殺しにする女ってのがよくわかったぜ、●。それに俺の凝りねぇ執着心も嫌でも思い知った。お前とはどっちかがくたばるまで薄っぺらくても切れない縁が続きそうだな。まぁこれからもよろしく頼むぜ。」

肩をポンッと叩かれる。やがてその手は私の肩を抱きしめ、少し痛いくらいに食い込んだ。そこには恨みや好意や期待がしみ込んでいた。



end

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