戦利品


ー 桐生ちゃんとやり合って、俺が勝ったら●ちゃん抱かせてもらうでええ!!!!!!!!!

私は柱に鎖で縛られながら、桐生さんと真島さんの本気の喧嘩を目の前で見ていた。バクバグしていたのは、本当に二人が死ぬんじゃないかと思うほど本気で殴り合ってるから。真島さんは興奮して発狂状態。桐生さんは重い鉄拳を連発。最後は殴り合って両者が固まり、同時にコンクリートに倒れた。

「…え、え。」

鎖で柱に縛られた私は動けず、ヒュルルルと頼りない風が吹き抜ける。体を動かしてなんとか鎖から抜け出ようとしていると、うめきながら立ち上がり、ゾンビのように近づいてきたのは真島さんだった。

「か、勝ったでエエェ…わしの…勝ちやァ〜…。」
「真島さん!大丈夫ですか!?桐生さんは?」
「こんなんで死んどらん、安心せぇ。」

ヨタヨタと両腕を垂らしながら、オマケに頭や口からも血を流しながら近づいてくる姿はホラー。ひきつりながら彼を見上げると、彼はヒッヒッヒと笑いながら私の鎖を解いてくれる。
…男って、いや、この男たちは謎を繰り返す。ただ、私を抱くために殴り合うというなんとも漫画にありそうな展開の真っ只中にいられたのは少しときめいていた。

ーーーーー
「ど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、…り!決まりや。あっちのラブホや。」

そして、私は真島さんに肩を組まれながら夜の街へ。どっちのホテルに泊めるか迷った真島さんは小学生がやるような決め方でホテルを決めた。

ラブホでは受付に向かって、金ならいくらでも出したるわ。うんと色気のある部屋頼むわ〜!ほいで、もちろん、アレもあるんやろか?別売りか?おおん?、と恥ずかしいことを日常会話を話すようにしている。横で聞いてる私は恥ずかしくて死にそうだけど、受付の人はそれが普通と言うように真顔で説明していた。

ーーーー
「おおー、なかなかええとこやのぉ!ヤル気でてきたわぁ。」

ベットは大きく、何故か部屋全体がピンクの光で彩られている。目が痛い!と顔を顰める私をよそに、真島さんはベッドの壁にある鏡に興奮。天井にも鏡があって、どこからでも行為が楽しめるらしい。やめてほしい。

「真島さん、この部屋嫌い。」
「なんや今更、覚悟決めや。…ま、その前に湯でも浴びるか。一緒に入るか?」
「いや!いいです!」
「恥ずかしがり屋やのぉ!まぁええわ、なら先はいっとき。」

真島さんから解放されてシャワーを浴びる私はドキドキしていた。というか、不安しかない。狂犬とこれから寝るなんて。どんな夜なの?あんな喋り方でも一応ヤクザ。桐生さんはまだコンクリートの上で寝てるんだろうし、力は侮れないし、頭もいいから私なんかができることもない。

ー …はぁ。

タオルを肩に乗せて部屋に戻ると、

「な、なにしてんですか!?」
「あー?何ってポールダンスや。壁のボタン押したら出てきよった。なかなかええやろ?」

何故かピンクの世界でポールダンスを披露してるバスローブ姿の真島さんがいる。くるくる回ったり、お尻をふりふりしたり、のけぞりながら片足を伸ばして舞ったり、そして、片目の色目を向けてガニ股で腰をくねらせてる。髪は濡れており、私がシャワーを浴びている間にホテル内の大衆浴場で湯を浴びてきたらしい。彼の目つきはセクシーで思わずそっと目を逸らした。

「刺激的で目も合わせられんか?」

くねくねと動きながら私に近づくと私の肩を握ってバスローブを緩め出す。肩先が見えると真島さんはニヤァと笑って裏声った声をわざと出す。

「今夜は長い夜になりそうやなぁ〜。ずーーっと片想いしてたんやでぇ?こないなオッサンに振り向いてくれんとは思うとったけど、どぉーしても諦めきれへんでなぁ。」

顎先を、素手で軽く持ち上げられると綺麗な形の目とあう。…この人は、顔は整っているし、目も綺麗だから、近くで見ると見惚れてしまう。

「抱かれる準備はできとるか?」
「…あ、あの、…、」
「安心せぇ。痛いことなんてなーんもせん。好きなところいーっぱい突いて舐めてもうわしの体なしじゃ物足りん体にしたるだけや。」

私は顔を赤らめて、いつになくまともでセクシーで低い声の真島さんの前で従順になる。

「さてぇ…もう我慢できへん。わしのあそこ、もうガッチガチやねん。えっろいベッド……、行くで?」

ーーーー

「はーー。」

真島さんと強烈な一夜を過ごしてから4日。いまだに夜になるとあの夜のことを思い出す。ヒヒヒヒ!ぎゃははは!サイッコーや!と狂ったような時もあれば、私が激しすぎて泣いた時は、すまんかった!少し休むで。と我に返ったように優しい声を出して休ませたり、水を買ってきてくれた。
朝が来た時は筋肉痛と倦怠感で体が動かなくて死んだ。

ー サイコーやったで。受けてる時の顔、恥ずかしゅうて泣いとる顔も、イキよがっとる顔も、みんなアソコにきたでぇ。

そう言って、そっと私から離れて去っていった真島さん。深まりすぎない彼だけど、触れた瞬間の強烈な刺激は名残惜しい。でも、もう、ない。こんなことはもうない。
少しぼうっとしながら、事務所の屋上で休憩していたら、コツコツと靴音が近づいてくる。誰でもよくて、ひたすら青空を見ていたら、

「そない無防備な背中、わしに向けたらあかんで。」

彼の声がして振り向いた。真島さん?と思わず名前を呼ぶと、いつになく真剣な顔の真島さんが私の前で立ち止まる。

「身体はどや?平気か?」
「は、はい。」
「あの夜のこと、忘れられんのや。思う以上にお前が可愛いくてのぉ。それで終いにするって決めてたんけどな、どうも未練ばっかりや。」

鋭い目を伏せながら話す真島さんにドキドキしてる。それって、

「なぁ、真剣に俺の女にしたいんやけど、駄目やろか?」

そんなこと言われて、答えの代わりに自分から近づいて抱きついていた。すごく驚いた目が瞬いて、よっしゃあああああーー!!!やったでええええ!!と叫ぶ真島さん。まるで格闘会で優勝したプロレスラーのように、両手をがっつり握っていた。

「●ちゃん、いや、●!もうはなさん!今夜はその中から出んからヨロシクの?」

発情している男の目が緩む。抱きしめてくれる真島さんは本当に、セクシーでいやらしく、品がないのに、馬鹿みたいに素直で危険で、一度味わったら手放せなくなる劇薬だった。


end

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