アツアツメール依存


最近、よく携帯電話を確認する真島に西田は目を細めていた。

「何見てるんですか?親父。」
「ん?見りゃわかるやろが、携帯電話や。」
「いや、そうですけど…最近の親父はよく携帯見てますよね。喧嘩した後も食事した後もトイレ行った後もテレビ見てる途中でも車に乗ってるときも。」
「ちょお待てや。お前、なんでそんなに俺のこと見とるんや!他に見るとこあらへんのか?世界は広いで〜。」
「いやいや、別に見たくて見てるわけじゃなくてっ、すごく携帯電話を見てるからつい気になっちゃって…、なんかあったんすか?」
「何も、…ん?!」
「あ、携帯鳴ってますよ。」
「おっしゃァァ!!」

真島はいきなりガッツポーズをして届いたメールをじっと見る。西田は流石に内容まで覗き見ないが、彼の顔から何か嬉しい知らせなんだと分かった。

「ヒヒっ!かわええのぉ!はよぅ会いたいやなんて昨日もあったやんけぇ…ウッヒヒ!」
(女か?)
「にしても返事遅かったなぁ。決まった休憩時間も取れんとはホンマにブラック企業や。」
(…心の声が全部漏れてる親父…大丈夫か?)
「なんて打とうかのぉ。」

西田の存在を忘れたかのように真島はぶつぶつニヤニヤしながらメールを打つ。

ああ、かわええのぉわしの女は!最初は愛想のない女やったけど、案外抜けてて可愛ええし無邪気なところがあんねん。料理はめっちゃうまい。けど、片付けや掃除は下手くそや。まぁそこがええねん。完璧だとおもろないからのぉ。

しっかし…メールだけでつながるなんてもどかしいのぉ。返事もいちいち待たなあかんし。一緒に住んだらええんか?そしたらいちいち会う約束なんていらんし、好きなだけ抱き締めて甘々な時間すごせるしのぉ。

ー 今夜会おうやないか。仕事終わったら連絡するから待っとれや。

渾身の力を込めてピッとメールを送るとすぐに、

ー やった!早く会いたい!連絡待ってるね。
お仕事がんばってね(^○^)

と、きた。
は、反則や。最後の顔文字反則やろ。普段何も使わんくせに!
付き合う前はメールなんてこないにすぐ来んくて、半日後にようやくきたもんや…。つまり、今はわしにメロメロや。あの時も大胆になったしの。

ー 今休憩中か?暇な時はいつでもメールよこしてええからな?
ー 寂しいの?
ー おう。悪いんか?
ー かわいい。すき。
ー わしも好きや!!!!!!
ー 私も好きだよ!

ああァァあーー!
なんちゅー幸せやぁああ!このばかみたいなクッサイやり取りがええんや!!これが楽しいねん!!これが!
周りはわしらを馬鹿と思っても何でもええ!!笑いたきゃ笑えや!!"ラブラブフォルダー"作って保存せなあかんわ今日のメール全部。

「ヒヒヒヒヒヒッ。」
「お、親父ぃ?」

真島を現実に戻すかのように西田の心配する声が聞こえる。顔を向ければ西田の顔は辛そうだった。

「何やねん、その汚れもんでも見るような目は!邪魔や!わしの幸せな時間に口挟んだら減給や!!」
「ぶ、ブラックだぁ…。で、でも、親父、最近工事遅れてますから、親父もちゃんと現場回ってくださいよっ。そうしないと期限までに建てられないんですよ?お願いですから携帯ばかりに時間使わないでください!」
「……(西田に、お前にぞっこんすぎて仕事サボっとること怒られたわ。どないしよ?)……。」
「言ってるそばからっ、親父っ、しっかりしてくださいよぉ!」

女とラブラブな真島のメール依存に頭を悩まされる西田であった。


end

ー 仕事頑張ったらなでなでしてあげる。

「…よし、仕事やるで。」
「親父!さぁ、行きましょ!」

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