
どんとむーびんぐ!(12)
目が覚めると幸縁は大きな掌の上にいた。
『お前、人間だよな?』
「え?うん…はじめまして……」
(人間以外に見えるのかな?)
『生で見んの初めてだぜ…俺』
「そうなんだ!」
(初めての人間がこんなのですいません!うぉぉぉおお若い頃のジャズに会えるなんて!つーか顔ドアップ!!相変わらずイケメン!わっパーツが動いたああ触りたい!…けど本人に拒否られたら悲しいしなぁ…)
一人で百面相しているとジャズ(名乗ってもらっていないので仮)の方から話し掛けてくれた。
しかも、
『よ、よかったら…』
「う?」
『(う?)…触ってもいいか?』
「え」
素敵な提案付き。
『駄目か?』
「い、いいよっ!でもあの…優しくしてね?簡単に壊れちゃう生き物だから、人間って」
『おっ、おう!』
お互い焦ってパニックになりかける。
ツッコミ不在のまま、ジャズ(仮)は幸縁におずおずと手を伸ばした。
幸縁も手を伸ばし、指先に触れる。
震えたのはどちらだろうか。
「冷ちゃい…」
『お前は、温かい』
「そう?」
『あぁ…あと、柔らかいな』
「ふふっ…そっか」
ジャズ(仮)が幸縁の身体を範囲を広げて触る。二の腕、肩、顔を触り、身体を持ち上げたところで。
『なぁ…さっきからじっと見つめて、どうしたんだ?』
その時目の前で案外軽い音を立てて動くパーツに目を奪われるが、ジャズ(仮)の質問に答えた。
「あ…え、かっこいいなと思ってた」
『カッコイイ…?』
「魅力的だなって意味。伝わる?」
『《ギューン!?》』
キラキラ光る水色のバイザーを見つめながら言うと顔が離れていってしまった。
「あれ?」
『チョッ…お前今なんて』
「かっこいいって…?…かっこいいよ!"オニイチャン"!」
『!?!』
そういうとまたギューンだかギャーンだか分からないすごい音を出すジャズ(仮)。
(まぁ、嫌がってないみたいだから…いっか!)
「……格好良くなんかないさ」
「え?」
思わず聞き返す。
「俺は体格は小さいし、戦略行動訓練では成績悪いし…んで馬鹿にされてるし。良いところなんて…」
「ある」
ネガティブなジャズ(仮)にピシャリと言う。俯いていた彼は此方を見た。
『ははっ…ありがとう。慰めてくれてんのか?』
「ううん。本当のことを言うだけだから」
『…何を』
「聞いて?」
彼が口を開く前に言う。
「"オニイチャン"の良いところ、私は知ってるよ」
『俺達初対面だぞ。デタラメを』
「貴方は優しい。だって初めて会った時から今まで、こんなみすぼらしい有機生命体の侵入者を傷つけないように思いやってくれたもん」
『そんなこと…』
「ううん…ありがとう"オニイチャン"!私、貴方に会えてよかった!」
彼の大きな指先を抱きしめ頬を押し付けながら言う。
キュルキュルと小さく機動音を立てるジャズ(仮)。何も言わない。
「訓練だって、私内容分かんないけど……練習いっぱいすれば出来るようになるかもしれない。背だって、私より大きいし顔はイケメン…あ、格好いいって意味ね?他人に優しく接することも、思い遣ることだって出来る!ほら、良いところ…たくさんあるよ?」
「…そう、か?」
「うん!!それにこれからだって増やせるっしょ!」
人生これからだって!
そう幸縁が言えば、ジャズ(仮)の口のパーツが動いた。
「あぁ、そうだな…ありがとう"オネエチャン"」
「!」
笑顔に。