好好爺は実験好き(2)



「こんなにのんびりしてていいのかなぁ」
『何故そう思う?お前の存在は一部の隊を除き非公開にしろと命令が出ている。暇なのは致し方ないことだ』
「だって…ちゃんと挨拶して、皆と仲良くしたいんだもん」
『異星間留学か?今のサイバトロンでは少なくなったが』
「そんなのあるの?!」
『昔はな。もし行うとしても希望者の星とサイバトロン星で正式な手続きが必要だし、今は無理だ。超新星爆発と太陽フレアの影響で外に出張してる奴等とも連絡が取れんからな』
「へ〜!」
『お陰で惑星探査に出たセンチネル・プライムの乗る船に悪影響が起こり、帰航が延期したという情報が入った』
「太陽フレアやべぇ……」
『そうだな。やべぇな。彼は政府の中では穏健派に分類される。その彼が帰航次第シエンを紹介し、事情を説明する予定だったのに。プライムの許可を得て正式に保護されたとなれば、お前も自由に我々と交流できるようになるはずだ』
「ほんとう!?やったあ!!…あれ?」
『どうした?』
「何でオプじゃ駄目なの?オプもプライムだよね?」
『センチネル・プライムは現政権の権力者だ。政府や議会にコネがある。オプティマスは後継者だが一介の役職者では動かせるものに限りがある』

そこまで言うと、アイアンハイドは溜め息を吐く。

『派閥争いは面倒だってことだ。穏健派に保守派。過激な思想を持つ派閥もある。政府の議員の中には"汚れ仕事"を軍役の奴やその訓練生に命令する奴等がいるのも事実』
「でも、何で?ラチェは私をアイちゃんに任せたの?」
『現状の面子で、リペアに関してアイツの上に出る者はほとんどいない。武装を外した飛行訓練であの破損具合は有り得ないと判断したんだろう。爆薬でも抱えていない限り内部から破損するのは不可能だ』
「な、何のために?」
『幾つかの可能性が考えられる』
「わっ!?」

話に入ってきたホイルジャックに幸縁は驚いた。

『まず一つ目、センチネル・プライムの留守中を狙い、派閥争いの緊張感を高めようとした。二つ目、個体同士の恨みや妬み。足の引っ張りあいだね。よくあることさ。三つ目は…彼女の情報を探る隙を突こうとした、とかかな?』
「えっ?でも命令が出てるって…」
『箝口令に従うのは、素直で従順な奴か自律思考を捨てた戦闘馬鹿だ。誰かが顎口パーツを滑らせたんだろうな。ラチェットに音声回路切られちまえばいいのに』
「あはは…」
『ラチェットの元にいないと分かれば、相手も慎重に動かざるをえない。ただ"治療"しているラチェットに手を出せる訳がないしな。俺達が護る。気にするな』
『私も協力しよう』
「ありがとう!頼もしいね。オプも皆がいて心強いんじゃないかな?」
『そうだといいが…彼は抱えすぎる節がある』
『だが、お前が来てからオプティマスは嬉しそうにしている。気晴らしに周囲と交流するようにもなったし、良い傾向だ』
『それに、君はドクターをリペアしてくれたね。彼は友人でね、よく共同で実験をするんだ』
「そっか…また二人に会いたいな」
『会えるとも。君のおかげだ』
「なら、よかった…」

大きな手を伸ばされ、幸縁はそれに寄り添い目を瞑る。
信頼が無いとされないその行動に、二体はスパークが感慨と喜びに満たされるのを静かに感じた。
眠り始めた幸縁を見ながら、アイアンハイドは友人の個人回線に通信を行う。

《無事か》
《当たり前だ。誰に物を言っている?》
《はいはい。…で?奴さんは?》
《リペアは終了したが、いつもより念入りにしたからね。まだ寝ているよ》
《フン…》
《この訓練生が間抜けなおかげで、首謀者が分かりそうだ。通信履歴が丸残りだったからね》
《今回の訓練の教官は…》
《関係ないと思うが》
《何故だ》
《防衛司令官直々の視察だぞ?私だったらそんなヘマはやらんね》
《メガトロンか…》
《訓練生のデータを送る。レッカーズにやるか害虫の中に放り込むかはお任せするよ》
《了解。シエンが残念がっていたぞ。お前と過ごす時間が減ったと》
《……冗談はよせ》
《何でだよ。今日はお前にリペア道具を見せてもらおうと思ってたらしいぜ。ちゃんと慕われてるぞ安心しろ》
《…今、彼女は?》
《キューの手の中で寝てる。怪我した奴の心配までしていたからな、疲れたんだろう。中身はともかく身体はまだ幼い》
《そうか》
《顔見せに来いよ。他の共犯者に尾行されないようにな》
《室内に彼女がいないと分かれば、下手に怪我する奴も減るだろうしな。いいだろう》

通信が終わる。

(さて、誘われて音声の周波数が上がった友人にバレる前に。表情を元に戻さないとな)

アイアンハイドは笑った口元のパーツを押さえながら、友人の到着を待った。
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