プロローグ



どす黒い雲が今にも覆いかぶさってきそうな夜の空の下。
彼女は帰宅の途に就いていた。

「はぁ…今日も疲れた」

一人暮らし。
短大卒業後に資格を取り就職した職場は勤務日数が1年と少し。
同年代の友達はおらず、一人誰もいない道で愚痴をこぼすのが日課となっている。
自宅と職場を行ったり着たりという、他者から見ると淋しい日々を送っていた。

「晩御飯作んのめんどくさ」

勤めているのは学校の給食の調理員。
年若い彼女は、生徒達の笑顔に喜びを感じながらも、周囲の仕事の速さについていけず落ち込んでいた。
ため息を吐き、涙がこぼれないよう空を見上げると。
文字通り雲が迫ってきた。

「は?えぇっ!?うわっぷ」

それは彼女を逃げる間もなく包む。
黒い雲が消え失せた後、路地には誰の姿もなかった。