劇的に彩って(18)
「あんた達、あの女に利用されてんのよ」
「お前達がなまえを語るな!虫唾が走る!!」
「市、あなた達嫌い……」
「なんですって!」
「きゃっ…」
パシンッ
「…」
「なまえっ!」
「ごめんなさい…市のせ」
「いつもありがとう、二人共」
「「なまえ?」」
二人に微笑みかけたなまえ。市を叩こうとして飛んできた手を掴んだまま力を入れていく。
「お久しぶりですね、二人となに話していたんですか?」
「…っ、あんたが男を手玉に取って遊んでるって話しただけよ!」
「それだけで何故二人を囲んで口論に?私が何しようが二人は関係ないでしょう」
「ムカつくのよ!」
目の前でギャンギャン喚く女。こんな奴らに怯えていたなんて。
「馬鹿らしい」
「なっ!?」
「もう大人になったんですよ、私達。それなのにあなたはまだ子供。精神的にまるで成長していない」
暴れ出す女の手首をさらに強く握り。
「お前の癇癪に、私を、彼女達を付き合わせるな。そんなのに構ってやる優しさは無い!こんな爪で市を引っ掻こうとして…綺麗な肌に傷ついたらどうしてくれんだ!!」
思いっきり振り払う。
手首を押さえ、女はよろよろと離れた。
「ちなみに、三成君は仕事の同僚。大谷君もです。なに勝手に妄想して勘違いして決めつけて物言ってんの?もう一度小学生から学び直してきたらいかがです?」
「な、なら!徳川君はどうなのよ!玄関でエスコートされて!!」
「あれは…」
「ほら見なさい!」
鬼の首を取ったかのようにまた饒舌になる馬鹿。
「調子乗って!あんたなんか好きになるヤツなんていないわ!」
そう言うと隣のテーブルにあったグラスを掴んだ女。中には鮮やかなカクテル。
あ、中身をかけようとしてるんだ。
「なまえ!!」
(避けたらかすがと市にかかっちゃうなぁ…しょうがない)
結果、酒はかからなかった。
なまえは数秒の内に側にあったテーブルのテーブルクロスを引き抜き、勢いよく飛んできた酒とグラスにぶつける。飛沫は床とテーブルクロス、そして馬鹿な女に跳ね、なまえと市、かすがは服に染み一つなかった。
「……ふうっ」
なまえが息を吐くと、静まり返っていた大広間に音が戻る。
「なまえ!」
「なまえ…」
「あ、二人共だいじょう」
「この…馬鹿!」
ガツン!
「いっ…でぇ〜!」
「何やってるんだお前は!!」
「え、宴会芸?」
「阿呆!」
「スイマセン」
「でも…なまえ」
「「ありがとう」」
笑い合う名無し達三人。
その後ろで割れた破片を掴み、立ち上がった女がなまえに向かって突っ込んできた。
「なまえっ!!」
「え…っ!?」
たくさんの悲鳴。
目の前が真っ暗になる。
「…大丈夫か?」
「あ、れ?」
温かい。
おそるおそる顔を上げると、徳川君が。
「な、えっ!?」
「はははっ!どうやら無事みたいだな」
「徳川君!?手が!」
「あぁ、これくらい」
「いや手当しないと!」
「…じゃあ、お願いしてもいいか?」
「うん!」
「なら行くか…よっと!」
血で汚れないようになまえの膝裏に腕を通し、持つと同時に立ち上がる。
「なんで!?」
伊達くんがわざわざ部屋を用意してくれたらしく、徳川くんに抱えられたまま救急箱を渡されて、案内された後二人きりになる。
警察にあの女は引き渡されるようで、後日私達も事情聴取されることとなった。
「とりあえず座って?」
「じゃあ…」
「うん」
左手の傷口を洗ってから消毒液をかける。
「っ…!!」
痛みを堪える姿に申し訳なく思いつつ、口を開いた。
「なんで庇ったの?…なんで、名前」
刺される直前に呼ばれた名は、親友二人ではなく徳川君から発せられたものだった。
「高校在学中、ずっとみょうじを…なまえを守りたいと思っていた。ワシは、なまえが好きだった。そして今も」
「…え!?」
「側にいれば二人のようになれると…だが」
【早く行って…ね?】
「なまえは、ワシが嫌いなのか?」
「違う!」
包帯を握りながら、伝えた。
「私、私だって…徳川君が好きです」
「え?」
「でも…徳川君はみんなに優しいから、期待しないようにしてたの」
私がそう言うと徳川くんはソファにもたれて、
「ははっ…両想いだったのか」
嬉しそうに笑った。
「なら改めて…なまえが好きだ、付き合ってほしい。ワシの側で、ずっと笑っていてほしい」
「はい!」
細いけど、繋がっていた絆。
最初から、思いは絡まり合ってた。
これからは、二人で紡いでいく。
「それにしてもさっきのテーブルクロス引きは見事だった!なまえの職業は…」
「SP」
「SP!?」
徳川家康編 Fin