2016/11/15 - ジンニキとトリップした私
一話目。続けば小説の方に。そこは死の匂いが漂っていた。そんなもの嗅いだことなんてなかったけれど、異臭が鼻を突くような酷い刺激臭だった。冷たい大地にところどころ突き刺さる杭。土葬したのだ、と直感的に分かった。木の棺にすら入れる暇もなく。簡素に。誰かがここで眠っている。それも1人という数ではない。
「おまえ、そんなところにいると死ぬぞ」
「だれ」
幸いだったのは言語が通じたことだろうか。振り向くと男がいた。銀髪の髪を靡かせ悠然と立っている。稀に見る美人だ、と名前は口を無意識に開けた。
「ジンとよく呼ばれる」
おまえは? と男が返すと場違いな幼女は名乗った。
「名前」
「そうか」
「は?」
突然の浮遊感に襲われ、名前は必死に抵抗した。私を軽々持ち歩くなんて、こいつ力ありすぎでしょ!
「あいつらみたいに死にたいのか」
一面に屍とそれを食い荒らす鴉。ねえ、その丸いの、なに……? 岩の上を転がり、ゴトンと随分と重い音がした。名前がそれが何かを把握した瞬間に真っ青を通り越して全身で悲鳴をあげそうになった。誰かが死んでる。 それもたくさん。数え切れないくらい。
(どこだここーーーー!)
「いや!生きたい」
「理由は」
理由? どうして生きたいのか。そんなこと一度も考えたことなかった。
「あとは自分の足で歩け」
「えっえっ腰抜けた。待って!」
さっきまで日本にいたのに、ガラリと空気が違かった。
「名前。照準を見ろ。1mmもズラすな」
深呼吸をする。落ち着けば大丈夫だから_______。
「ほら! ほら! 今日の私! 絶好調!」
褒めて、褒めて、とジンを見つめると、調子に乗るんじゃねえ、と小突かれた。
あの方と私とジンの物語