社畜と少年
僕がジンと出会ったのは
# 1話目
フラグ回収
・商談
・ディアンドル
ジンニキが嫉妬して破る
・原作中心パート
異国の空気に悠陸は長いフライトの末、やっと着いたとため息を着いた。肩をぐりぐりと回し、大きく背筋を伸ばす。チェックインの時間までに観光をと考え、中央広場に向かった。青いパラソル傘の下で名物らしいものを食べていると、ぽっちゃりとした男性が必死にこちらに何かを言っている。僕は無銭飲食をした覚えはなかったし、なんだろうと彼の指が示す方向に視線を送った。

「あれ、僕の鞄」
がない?と思ったと同時に「兄ちゃん! 何やってんだ! あの男の子が持っていっちまったぞ!」 とおっちゃんが繰り返し、僕が理解してないと思ったのか「早く!」と何度も言った。

僕の鞄は消えていた。そんなばかな。まだこちらに着いたばっかりだぞ。おっちゃんが俺に早く行くように促してくる。

「資料!!!!」悠陸は事態を把握するとすぐに勢いよく立ち上がった。

あの鞄には大事な資料どころかUSBやら社外秘など入ってることを思い出し僕は青褪めた。降格という文字が脳内で踊った。悪くて首が飛ぶ。

社会人になってから椅子とお友達だった足を必死に動かした。無我夢中だった。視界に自分の荷物を捉えると、必死に手を伸ばす。あちこちと狭い路地を通ったり、交通量の多い車道の中を潜り抜けたり、フェンスを時には飛び越えた。僕の鞄を奪ったのは、銀髪の少年だった。 取り返さなくてはならない、そんな想いで足を動かした。今の僕だったらウサ○ンボルトだって敵じゃない。風を切るように走った。ぐんぐん、少年と距離が近付く。

「捕まえた!」
「離せ!お前が見てなかったのが悪いんだ!!」
これは僕にとって初めての出張だった。もう既に日本に帰りたい。海外怖い。到着した瞬間に荷物が消えるトラウマ。
僕の会社は、国内の市場規模縮小に伴い、海外進出を狙っている。外国語を二外として習得していた僕にこの仕事がたまたま回ってきた。まあ、理由はそれだけではないはずだが、そこが大きいのだと僕は思っている。
「返してほしい。大切なものなんだ」
「知るかボケ」
おお、なかなか口の悪い子だ。ますます貴重なものだと少年は思ったらしく、手放す様子はない。
「君がその荷物を持っていても、あまり利益にはならない」
僕に向かってベーーッと舌を出した。
「悪いけど、そこにお金は入ってないんだ」
少年はこちらの様子を窺うように僕を見た。息を整えて心臓に手を当てる。ドッドッと忙しく鳴り止まない。

まあ、普通、鞄の中にお金が入っていると思うだろうな。少年が逃げる前に僕は首元から財布を意気揚々と出すと、少年は心の底から嫌そうに舌打ちをした。悪いな、少年。君は知っておくべきだ。初めて海外に来る日本人は、大抵不安がってお金を同じ場所に入れていない。
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