こんにちは。九頭龍高校男子バスケ部マネージャー、七尾奈緒です。
秋から冬に変わりつつある人肌恋しい季節になってきて、最近付き合ったりする人が多くなったような。
うちのバスケ部も例外じゃないみたいです。



「あ、ナオちゃん!」

私に気付いて小さく手を振ってるのは軽音部2年の高梨透子さん。
美人で優しくて透明感があって歌がうまくて、とにかく長所しかないような先輩。
人見知りらしくて普段は落ち着いてる様な雰囲気なんだけど、仲がいい人の前では全然そんなことない。
こんな綺麗な先輩と仲良しになれて、ちょっと優越感。


「トーコさんこんにちは。今日も可愛いです」
「え、ナオちゃんの方が可愛いよ」

少し照れたように笑うトーコさん。
うーん、今日もキラキラオーラが眩しい。


「それよりナオちゃんが作ったプレイリスト聞いたんだけどさ、」
「どうでした?」

そのまま渡り廊下で立ち話をしていた。

トーコさんとは軽音部繋がりで知り合ったんだけど、1度も一緒に演奏したことなかった。トーコさんはベースボーカルでわたしはギターだから今度一回セッションしたいなあ、なんて。

バンドの話をしている途中でトーコさんの後ろの方から見知った人が歩いてきてるのを見つけた。


「あ、車谷くん! 茂吉くん!」

私はトーコさんの後ろから何か荷物を持ってこっちに向かう2人に手を振った。
トーコさんも後ろを振り向く(振り向いたとき髪の毛がふわって揺れてすごくいい匂いがしました)


「あっ、七尾さん!高梨センパイ!」
「こん、にちは」

相変わらずのぽそぽそした喋り方で、茂吉くんはトーコさんのことを見て少し赤くなった。
茂吉くんはトーコさんのことが好きっぽい。
最初はあんまり感情の起伏がない人だと思ってたけど好きな人見て赤くなるなんて、意外と可愛いわね。


「何運んでるの?」
「車谷先生の、教材です」
「あの新任の先生?え、車谷って」
「ボクの父です...」
「えーっ、そうだったんだ!」
「トーコさん、車谷先生って女子に人気なんですよ」
「そうなんだ...確かにちょっとかっこいいかもね」

茂吉くんがちょっと面白くなさそうな顔してて、私は(たぶん車谷くんも)必死でニヤニヤしそうなのを我慢した。

「モキチくん!そろそろ行かないと父さ...先生に遅いって怒られちゃうよ!」
「あ、うん。そうだね」

じゃあ!と言って走っていく車谷くんを追いかけようとする茂吉くん。途中で振り返って、

「あの、透子さん。また、」
「うん、またね。要くん」

茂吉くんは私をスルーして(許す)トーコさんにだけ挨拶して、車谷くんの後を追いかけた。
え、要くん?要くんって誰?あ、茂吉くんの下の名前か。
……え?

茂吉くんのことを下の名前で呼んでる人が周りにいなくて思わず動揺した。
トーコさんの方を見ると笑顔で茂吉くんの背中を見送っている。
その笑顔は私に向けられてた笑顔とはちょっと違う笑顔っていうか、なんていうか愛おしそうな顔だった。
今まで片想いの茂吉くん頑張れって思ってたけど、これは、トーコさんの方もまんざらでもないかもしれない。


あー、茂吉くん早く告白しちゃえばいいのに。


とりあえず千秋先輩に知れたら茂吉くん半殺しにされるかもしれないから絶対に黙っておこう。








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