こんにちは、クズ高2年1組の男子生徒Aです。
僕にはずっと前から気になる女の子がいます。



「じゃあ次、高梨。21ページから」

「はーい。えっと、About ninety years ago, some scientists made a plan―――、」

帰国子女なのかなと思うくらい滑らかな英語の発音。
高すぎず低すぎない、クリアな声。
教科書の方に伏せた目も透き通って、縁取られた色素の薄い睫毛は太陽の光を浴びてキラキラしていた。

こんな美少女が僕の隣にいていいのかと思うくらい…

「おい!呼ばれてるぞ!」

はっとして前を見ると先生が目を吊り上げてこちらを見ていた。

「お前…授業聞いてなかったな?」
「いや、その、」
「罰としてさっきの英文訳せ!」

クラス中が笑いに包まれる中、僕は慌てて教科書をめくった。
僕はちらっと高梨さんの方に目を向ける。
クラスの皆が僕の方を見て笑っている中、高梨さんだけが興味なさそうに頬杖をついて遠くを見ていた。

退屈そうに眼を伏せた、物憂げな顔だった。











昼休み。
高梨さんは友達と教室でごはんを食べる日と、教室外のどこかで食べる日がある。
今日は後者みたいで、僕もコンビニで買ったパンを持って慌てて付いて行った。

もし1人だったら、一緒に食べていいか聞こう。
連絡先も聞きたいし、彼氏とか、好きな人いるか聞きたいし。
いなかったら、好きだって伝えよう。

そんなことを考えながら着いた先は屋上だった。


ガチャッとドアノブを回して開けると、そこには秋晴れの空の下、高梨さんが座っている。


「高梨さ、」

声をかけようとして慌てて止める。
もう1人なんかデカいのがいる。
何故か咄嗟に物陰に隠れてしまった。

「でね、今日花園くん授業中居眠りしててさぁ」
「だから、先輩、成績悪いんですね」
「五月先生すっごく怒ってて、そのまま授業の終わりまで立たされてたんだよ」

教室では考えられないくらい笑顔の高梨さん。
もう1人いたデカイやつは、たしかバスケ部の1年で花園達にモキチって呼ばれてるやつだ。

「まあ私も数学好きじゃないんだけど」
「透子さんは、何が得意なんですか?」
「んー、洋楽聞くから英語はちょっと出来るかな。本もけっこう読むから現代文も...でも古文や漢文は分かんない」
「文系ですね。僕、理系科目の方が得意です」
「ほんとに?じゃあ数学とか物理教えて欲しいなぁ」

小さな赤い弁当箱をつつきながら、そのモキチって奴と他愛のない会話をしていた。
その笑顔はすごく可愛くて、柔らかくて、先ほどの退屈そうな横顔からは想像出来なかった。
モキチってやつも少し顔を赤らめて、愛おしそうに高梨さんの方を見ている。
あいつ球技大会で見かけたことあるけど、もっと根暗な感じじゃなかったか?


「要くんはエライね、部活も勉強も頑張ってて」

胃のあたりがギュッと締め付けられるような、気持ち悪い感覚になった。
下の名前で呼び合って、一緒に昼ごはん食べて、付き合ってんのかな、あの2人。
高梨さんとアイツじゃ釣り合わないと思ったけど、よくよく考えればバスケ上手くて背高くて(高すぎだけど)、前髪で見えなかったけどよく見れば綺麗な顔してるし。
何よりアイツと話してる高梨さんの幸せそうな顔で分かった。
あの2人は絶対付き合ってる。


「なんで要くんに彼女できないのか分かんないなあ」
「それは、透子さんも」

いや、付き合ってないんかい!
思わず声が出そうになり、慌てて口を塞いだ。
同時に付き合ってないと知って、少し安堵した。
ただあのモキチってやつは絶対に高梨さんに惚れてるし、高梨さんの雰囲気からしても他の男子よりはいいポジションに立ってるはずだ。

そうだ。2人が付き合ってるって噂をたててやろう。
そして気まずくなって疎遠になったらいい。


僕は決意を新たに2人だけの世界になっている屋上を後にした。












「おいモキチ!お前ついに高梨と付き合ったんだってな!」
「百春先輩、えっと、何の事ですか」
「うちのクラスの奴が言ってたぜ、1年のバスケ部のデカいやつと付き合ってるって」
「別に、付き合ってない、です」
「え、まだ?」








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