扇風機







「あーーーーー」
「いーーーーー」


夏。
何をしてなくても額から汗が垂れる、夏。
冷たいものを食べようにも知覚過敏の自分の歯を恨む、夏。
地球温暖化という社会現象にそろそろ向き合わなあかんのやなぁと実感する、夏。




「あーーーあーーーあーーー」
「いーーーいーーーいーーー」

ハハッ(笑)


暑さを増して感じさせられる蝉の声に嫌気がさして、窓を閉めたのはつい20分前のこと。
このままではあかんと感じておとんの部屋から引っ張り出した扇風機をつければ、次に始まったんは座り場所の取り合い。その無駄すぎる争いに、暑さが増すだけやと気づいたんはつい5分前のこと。

扇風機のそばに顔をふたつ並べて、意味のない言葉を叫び続ける。震えて返ってくる自分らの声に笑う。なんだかんだで毎年やってしまうこの行動に、毎年変わらず笑えてる自分らもアホやなってまた笑った。



「これ、すばるくんがやったら二重ビブラートになるのかな?」

めっちゃすごくない?
そう言いながら、ヘラヘラと笑って後ろにゴロンと寝転がる#name#


ガンッ
「、いった!!!」

寝転がる拍子に、ベッドの脚に頭をぶつけてワーワー騒ぐ彼女はほったらかしにして、おれもそのままゴロンと寝転がる。ひんやりと全身に伝わるフローリングの冷たさに、少しだけ涼しくなった気がした



「血出たかも」
「うそやろ、アホやん(笑)」
「いや、ふつう大丈夫?が先でしょ?」
「おれ普通やないみたい」
「こんな彼氏いやだーーー!!」


子どもみたいに、バタバタと脚を動かす#name#に、自分の脚を絡めて板挟み。身動きとれへんくなったと分かれば今度は手をグーにしてポコポコ背中を殴ってくる。それをきっかけに再び始まる無駄な争い。おれの脚が扇風機に当たって倒れそうになったところで休戦。今コイツが壊れたら、おれらの命は終わってまうとお互い悟ったんやろう




「太陽なんてどっかいっちゃえーーー」
「ハハッ、発言破天荒過ぎやろ(笑)」

腕をまっすぐ上に伸ばして、手の平を窓から見える太陽の方向にかざす#name#。おれも真似して隣に手のひらを並べる



「手でっかーー」
「男の子やから」
「なんでそんなに長いの?」
「なんでって、別に理由なんてないわ」
「ピアニストとかは長いって言うじゃん?」
「うーん、あれかな」
「あれってどれ?」
「#name#ちゃんをたーくさん感じさすために、長いんちゃう?」
「キャーーー!昼間っから変態がいるー!!!」


ケラケラ
ヘラヘラ

いつも通りの、ふざけた会話に笑って騒いで。



笑っておれから逃げようとする#name#をしっかり捕まえて、引き寄せて、ひっついて。そしたら#name#も大人しくおれの腕の中にすっぽりと収まって。

半袖のTシャツから出る腕同士が直接触れて、じんわりと汗を感じた


それでも心地いいこの体制に、さっきまで辛すぎるほど感じてた暑さを感じないおれらはそうとう末期なバカップルなんやろう




「……#name#ー」
「…なにーー」

「…結婚しよっか」


おれの言葉に、腕の中の#name#からの視線を感じた。案の定、目を丸くして驚いてるアホな顔。



「めっちゃブサイク(笑)」

「…………………」
「、ちょ、痛いって!」

アホヅラにゲラゲラと笑っていば、すぐにむすっとした顔に変わって鼻をガシッと掴まれる。手加減ないその痛みに怒るおれを見て、今度は#name#がゲラゲラ笑う



これが幸せ

こんなくだらん毎日が、一番大切




「ただよしくん。」
「何でしょう、#name#さん」
「私たち、まだ高校生です」
「知ってますよ」
「今は高校3年生の、夏休みです」
「そうですね」
「学生結婚ですか?」
「そうなってしまいますね」
「あかんやろ」
「あかんかなぁ」


慣れない言葉遣いのやりとりにまたヘラヘラと笑う。抱きしめる腕に力をいれると、同じ分抱きしめ返されて。




「…おれがスーパーイケメンエリート社長になったとき、返事聞かせてな」

「……何年かかるか見ものだなぁ」




だからそれまで

おいしい食べ物の匂いに誘われて二人揃ってぶくぶく太る秋と、
寒いのはお互いほんまに苦手で、そのせいかなぜか喧嘩が多く勃発する冬と、
何のプランもなくただ花を見にフラフラ歩くことを許される春と、
暑くてもひっつき続ける自分らの仲の良さを実感できる夏



そんな季節を
ずっといっしょにおってな





20170307
なにこれアッマ!
シンガポールのチョコレート並みの甘さ
クララと付き合ったらなにも考えずに薄っぺらい会話してヘラヘラしてたい
そう、ただの私の願望



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