『虚空に色付け──────“藤凍月”』

涼やかな音を立てた斬魄刀が形を変えた。左手には刀身の長い刀。右手には赤いラインの入った白い拳銃。
全体的に白っぽい銀色のそれをしっかりと握り締めた

「お前の始解って色々便利そうだよな」

『……え?』

藤凍月を見ながら修兵さんがそう言った。地面に垂れる鎖を掴み、頷く

「この鎖も結構長ぇし、攻撃防ぐのとかに使えそうだよな」

『……凍らせる?』

「鎖にお前の霊圧を流せたら、そういうのも出来る様になるだろうな」

修兵さん曰く、鎖が敵に当たった時に僕の霊圧を流せていたら、相手を凍らせる事も出来るとか。それに鎖だったら相手の腕とかを封じるのにも便利らしい

「良し、じゃあ拳銃の練習するぞ」

『はい』

片手で設置された的に拳銃を向けた時、修兵さんに止められた

「待て、まずは両手からいけ」

『……刀…』

「地面に刺しとけ」

修兵さんにそう言われ、刀をすぐ傍に刺す。そして両手で拳銃を握った

「まだ引き金に指は掛けるな。少しの力で動いちまうのもあるから、誤射したら危ねぇ」

『はい』

右手の人差し指は伸ばしたまま、真っ直ぐ的に向けて腕を伸ばす。

「お前の場合打たれ弱い。生命線の足を怪我でもしたらやべぇからな、出来るだけ攻撃を受けねぇ様に相手から見える面積を減らす必要がある」

『……打たれ弱く、ない』

「弱いわ。そうだな…右手は真っ直ぐ、左手は肘曲げて添えるだけにしろ」

『ん』

「足は左を前。右は半歩引け」

『ん』

言われた通りにすれば修兵さんが頷いた

「お前は今半身になってるから、相手から見える面積は減った。これはあくまでも基本的な構えとして覚えとけ」

『ん』

「勿論この構えが戦闘で使えるとは限らねぇ。お前も刀を握った状態での構えはイメージしとけ」

『…ん』

「拳銃に慣れたら片手撃ちの練習に入る。だがそれまではこの構えだ、良いな?」

『はい』

しっかりとグリップを握り直し、修兵さんを見た。一つ頷いたのを見て、真っ直ぐ前を見る。
伸ばしていた人差し指を、ゆっくりと曲げた。
指先が引き金に触れた瞬間、腕に物凄い震動がきた。
同時にパン、と乾いた音がして、銃口から白い煙が上がる。
え、何で今発砲した?僕指先が当たっただけだよ?何で?

「おー、的の真上に当たったな」

修兵さんが手を翳しながら的の方を見る。そして呆然としたままの僕を見て笑った

「どうだ?初めて撃った感想は」

『……びっくりした…』

「お前の拳銃は引き金が軽いタイプみたいだからな、指掛ける事が撃つ事だと思え」

『ん』

「それか藤凍月に少し引き金を重くして貰え」

『……頼んでみる』

撃ちやすい云々じゃなくこれはあんまりだ。触ったら撃てるとか怖い。だって絶対修兵さん撃っちゃうもん
呟けば修兵さんが口許をひくつかせた

「…何で俺を撃つ前提なんだよ」

『……撃ちやすそう』

「なぁそれ喧嘩売ってるよな?お前まだ上から落とした事根に持ってんのか?」

勿論ですとも。
誰がライオンは子を崖から突き落とすなんて言葉で納得するか。死ぬかと思ったんだぞ僕は

「はぁ…悪かったよ。もう落とさねぇから怒るなって」

『……落とさないの、普通』

「や、まぁそうだけど」

頭を掻いた修兵さんを見て、また前を向いた。
今度は心を決めてから引き金に指を掛ける。
けれど先程の様に発砲はせず、指が掛かっただけだった




────────これぐらいの重さか?




聴こえたのは赤色の声。
キョロキョロするが何処にも狐達の姿はない。修兵さんは不思議そうに僕を見ている。
もしかして、聴こえているのは僕だけ?
取り敢えず試してみようと指を引いた。軽い力で引き金が引かれ、弾が飛び出す。
腕に走る震動。的の端っこに穴が開いた

『…これぐらい』




────────判った。この重さで固定する




『……ありがと』




────────ふん。感謝しろ、馬鹿




拳銃担当らしい赤色がそう言って声は消えた。
もう一度拳銃をしっかり構える。
的をしっかり見ろ。銃身を揺らすな。傾けるな。左手に余計な力を込めるな。
頭に浮かぶ赤色の指示に従い、引き金を引いた。
乾いた音がして、中央のすぐ下に穴が開いた

「お見事」

『……赤色が、教えてくれた…』

「そりゃあ良い。斬魄刀が教えてくれるなら一番的確だ」

修兵さんが拍手しながら此方に来た。
拳銃を下ろし、刀を引き抜く

「最終目標は片手に刀握りながら連射だからな」

『……難しい』

「そんぐらい出来る様になれ。きっとお前の戦闘スタイルはそれだ」

拳銃も刀も使いながら戦えと。なにその難しいスタイル。扱える気がしない

「まぁ急ぐ必要はねぇよ。お前のペースでやれば良い」

『……ん』