幕引き
慌てて九番隊舎を飛び出した時に響く轟音。緊急隊首会が開かれた。其処で聞かされたのは霞大路家の祝言を死神代行の黒崎一護と十三番隊の朽木ルキアがしっちゃかめっちゃかにしてそこのお坊ちゃんを連れて逃走中だって事。そして天貝隊長の彼等への加担。何やってんのあいつら。直ぐに彼等を捕らえる様に総隊長が命を出した。
僕が発言の許可を得ようとすれば急に彼方此方で霊圧がぶつかり合った。そのまま隊首会はお開き。
結局総隊長に伝える事は叶わなかった
『あれ、檜佐木さん?』
九番隊舎の警戒区域で待っている筈の修兵さんが居ない。隣から肩を叩かれ見上げれば財前。彼はちょいちょいと上を指差した
「お前んとこの副官と三席、十一番隊の斑目さんと綾瀬川さんとドンパチしとる」
彼方此方でぶつかり合う霊圧の中にそれを見付ける。場所はそんなに遠くない
『………止めてくる』
「おん。気ぃ付けや」
あの馬鹿共こんな忙しい時に何やってんだ
僕は走り出した
始解した十一番隊相手に始解せずに戦う自隊の席官二人を見付ける。僕は藤凍月を抜いた
『――縛裟氷映』
「「「!!」」」
足元を凍り付かせれば全員此方を見た。あ、約一名避けてる
「ふん、遅かったではないか隊長殿」
『直哉さん、争ってた時点であんたも同罪だからね』
何自分関係ない的な雰囲気出してんの。少しは気まずそうな三人を見習え
飄々とした九番隊の奇人は赤い目を細めた
「大方死神代行の捕獲命令でも出たのだろう?」
『直哉さんって何歩先まで読めてんの?』
「教えた所で意味はない」
まぁ確かに…って話が脱線してる。氷を解けば修兵さんが気まずそうな顔で寄ってきた
「…お手を煩わせてしまいすみませんでした、隊長」
『全くだ。斑目さんと綾瀬川さんは周辺警護に戻って下さい。直哉さんも九番隊に――』
警護強化を伝えて、そう言おうとした時に流れた放送。
[各隊に連絡!至急霞大路家に突入せよ!]
『……霞大路家に突入…?』
「ふん、狸爺が漸く踏み切ったか」
いやちょっと口を慎め直哉さん。狸爺てかなり失礼だから
つか突入ってどういう事だ
「獏爻刀の資料は渡したな。それから考えてみろ」
確か使用者の霊圧を喰う違法性の高い刀、だった筈
それと霞大路家。救援要請をして来た癖に何故か此方を警戒してる。
修兵さんの話によると暗殺者達は獏爻刀を使っていた
雲井の雇った暗殺者達が。
霞大路家によって行われている警戒が屋敷内を探られては困るからだとして……見られては困るもの、それが獏爻刀だとしたら?
『………!』
「真相に辿り着いたか」
にやりと笑う直哉さんに頷く。今隊長達は恐らく命令を出した総隊長と現在進行形で命令に従っていない僕以外は全員霞大路家に突入している。ならば此処は総隊長の方に向かうべきか
『直哉さん隊を率いて霞大路家へ突入!檜佐木さんは僕と来い!』
「良いだろう」
「了解!」
『縛道の六十一・六杖光牢』
「……おや、気付いたのか桜花隊長」
総隊長に近付こうとする男に鬼道を掛ける。薄く笑った彼は全く動じていない。その気になれば直ぐに破れるんだろう
「桜花」
『総隊長、微力ながら力添えに参りました』
前に出て藤凍月を抜く。隣に並んだ修兵さんも風死を抜いた
「無駄だ。この獏爻刀の前では斬魄刀は能力を封じられる」
確か直哉さんの資料にも書かれてた。卍解は勿論始解も使えなくするんだったか
『別に始解出来なくても良いよ』
始解出来なくたって立派な刃物だ。正面から斬り掛かれば受け止められた。ぐっと力を入れて鍔迫り合いに持ち込む。
――掛かった。
「ぐっ……!」
「隊長に気を取られ過ぎだ」
背後から背中を斬りつけたのはうちの副隊長。その際に抱えられていた女の子を救出する。二対一は卑怯だと思うがこの際仕方がない。相手は反逆者、いちいち手段は選んでいられない
「瑠璃千代!」
大きな声と共に飛び込んで来たのはオレンジ色。死神代行か
後から来たルキアに女の子を抱えたまま近付く
『ルキア、この子頼む』
「桜花隊長は?」
『檜佐木さんの加勢……まぁしなくても良い気もする』
そう言いつつ見れば天貝の獏爻刀は何だか気持ち悪い事になっていた。何あれ、尻尾生えてる
「気持ち悪ぃ」
修兵さんが吐き捨てる様に言って飛び掛かる。それに向かって天貝が獏爻刀を振るった。
瞬間炎が修兵さんを襲う
『修兵さん!』
「隊長、下がってな」
慌てて駆け寄ろうとすれば聞こえた声。
修兵さんの斬魄刀に付いた、僕のものと同じ飾り玉が淡く輝きだした。藤凍月の飾り玉も同じ様に輝きだす
「刈れ――『風死』」
一気に霊圧が膨れ上がり、炎が掻き消された
「何だ、始解使えるじゃねぇか」
「馬鹿な…何故始解を……」
「――簡単な話だ。隊長殿に援護された其処の狗が獏爻刀の霊圧を上回った」
見れば隣に真っ赤な瞳を細めて笑う三席
え、何時来たの。てか援護って何。訊けばさぁなとはぐらかされた
「――卍解!」
黒崎が卍解した。
速度の上がった黒崎が刃を振るう。
「舐めるな!」
天貝が振り払う様に獏爻刀を横薙ぎに振るった
「遅ぇ!」
風死が天貝の斬魄刀を弾き飛ばした
「じゃ、そろそろ終わりにしようじゃねぇか」
「行くぜ!!」
修兵さんが風死を振り回す。
仮面を付けた黒崎が刀を振り下ろした。それを躱した天貝が炎を飛ばす。黒崎がそれに呑み込まれた。その炎を突き破って襲い掛かる鎌。慌てて弾いても背後から影。正面からも炎を突き破ったオレンジ色
「「――終わりだ!」」
『………お疲れ様』
「おう」
焦げ跡を眺めている修兵さんの隣に並ぶ。
天貝は死んだ。自殺という形で。
山本総隊長から父親を殺した本当の理由を訊いた彼は自らの身を獏爻刀の炎に投じた。本当にこれで良かったのかは判らない。只最後に彼が悔いていた事は確かだ
「復讐なんてロクなもんじゃねぇな……」
そう呟いた修兵さんの身体が傾ぐ。慌てて支えればその身体がぐったりと寄り掛かってくる
「気を失ったか」
後ろから僕を支えてくれたのは狛村隊長だった。ひょいと修兵さんを抱えて卯ノ花隊長の下へ歩いていく
『ありがとうございます』
「気にするな。女子に運ばせる訳にも行かぬ」
抱えられた修兵さんはそのまま四番隊舎に運ばれた。何でも獏爻刀の霊圧を抑えつけて始解をしていたらしい。
そりゃ倒れるわ
「なぁ、檜佐木さん大丈夫なのか?」
話し掛けて来たのは死神代行。何故こいつはピンピンしているのかと考え理由を見付ける。こいつの斬魄刀常時解放型か。なら獏爻刀の効果も受けない訳だ
『大丈夫。獏爻刀の効果をねじ伏せながら始解してたから倒れただけ』
要は過労。まぁ明日も休暇取らせてゆっくり休ませれば全快するだろう。
それを伝えれば黒崎はそうか、と笑った
「隊長、狗の傍に付いていた方が良いぞ」
隣から僅かに楽しそうな声。見れば直哉さんがにやりと笑っていた。うん、意地悪そうな顔
『何故?』
「あの忠狗はお前が傍に居ないと気付けば四番隊舎を脱走するだろう」
『マジで?』
いやいや幾ら何でも脱走はしないでしょ。そう考えていると何やら破壊音。そして膨らむ霊圧。え、何?
「九番隊檜佐木副隊長の霊圧が暴走中!桜花隊長をお連れしろと卯ノ花隊長からのご指示です!」
『………』
「ふむ。脱走の前に暴走したか」
いや何でそんな冷静なの直哉さん
走って来たらしい四番隊の隊士に近付けばほっとした顔をされた
『案内をお願いします』
「はい!」
「此処です!」
『ありがとう』
案内してくれた隊士に礼を言い扉を開ける。中は一面鎖だらけ。そして馬鹿でかい霊圧により空気は重い。何この部屋嫌がらせか
部屋を埋め尽くさんと蔓延っている鎖の大群に触れる。あ、これ物凄い事になってるけど風死だ
『風死。僕だよ。通して』
蜷局を巻いた鎖はじゃらじゃらと音を立てながら道を開けた。因みに鎌の部分は壁に突き刺さっている。修兵さんの霊圧暴走に巻き込まれてこんなに鎖が伸びたのか
寝かされているベッドまで近付けば苦しそうに息をする修兵さんが見えた。霊圧制御出来ていないからか。でも落ち着かせるのってどうすれば良いんだろう。取り敢えず手を握ってみる
『修兵さん、大丈夫だから落ち着いて』
「……はっ……はっ……」
握った手は強く握り返された。その手に少しだけ霊圧を流してみる。ぴくりと反応した修兵さんが僅かに目を開いた。灰色の瞳が僕を見る
「はっ……独月……っ」
『大丈夫。ゆっくり息して』
意識は戻ったんだし後は落ち着かせれば大丈夫だろう
ゆっくり髪を撫でていると修兵さんが起き上がった。そして辛そうな表情でしがみついてくる。胸元に顔を埋めた修兵さんの髪を撫でていれば少し霊圧が落ち着いてきた。人って確か他人の心音聞くと落ち着くんだったか
『修兵さん、大丈夫。ゆっくり息して』
「…っ…は……っは……はぁ……」
少しずつ、修兵さんの息が整って来る。霊圧が暴走するときついんだよね。一人でどうにかするのって難しいし
『大分落ち着いて来たよ修兵さん』
「はぁ………はぁ……っ」
ぎゅっとしがみついてくる修兵さんの背中を優しく叩く。一定のリズムで叩いていれば漸く霊圧は収まった。時計を見る。かれこれ三十分は闘っていたらしい
『大丈夫?』
「…わり……迷惑掛けたな…」
『気にしないで』
普段は僕が迷惑掛けてるし、これぐらいどうって事ない。
飲み物でも取って来ようと思ったのだが修兵さんが離れない。軽く背中を叩けば更にぎゅっと引っ付かれた
「……もう少し…このままで居てくれねぇか…」
『………判った』
小さな声に了承の意を伝えればありがとなと返された
僕の胸に顔を埋めて動かない修兵さんを見て思う。もしこの人が誰かに殺されたりしたら僕は復讐に走るのだろうか
Turmoil is ended by his death
(大丈夫?)
(ああ、悪ぃな)
僕が発言の許可を得ようとすれば急に彼方此方で霊圧がぶつかり合った。そのまま隊首会はお開き。
結局総隊長に伝える事は叶わなかった
『あれ、檜佐木さん?』
九番隊舎の警戒区域で待っている筈の修兵さんが居ない。隣から肩を叩かれ見上げれば財前。彼はちょいちょいと上を指差した
「お前んとこの副官と三席、十一番隊の斑目さんと綾瀬川さんとドンパチしとる」
彼方此方でぶつかり合う霊圧の中にそれを見付ける。場所はそんなに遠くない
『………止めてくる』
「おん。気ぃ付けや」
あの馬鹿共こんな忙しい時に何やってんだ
僕は走り出した
始解した十一番隊相手に始解せずに戦う自隊の席官二人を見付ける。僕は藤凍月を抜いた
『――縛裟氷映』
「「「!!」」」
足元を凍り付かせれば全員此方を見た。あ、約一名避けてる
「ふん、遅かったではないか隊長殿」
『直哉さん、争ってた時点であんたも同罪だからね』
何自分関係ない的な雰囲気出してんの。少しは気まずそうな三人を見習え
飄々とした九番隊の奇人は赤い目を細めた
「大方死神代行の捕獲命令でも出たのだろう?」
『直哉さんって何歩先まで読めてんの?』
「教えた所で意味はない」
まぁ確かに…って話が脱線してる。氷を解けば修兵さんが気まずそうな顔で寄ってきた
「…お手を煩わせてしまいすみませんでした、隊長」
『全くだ。斑目さんと綾瀬川さんは周辺警護に戻って下さい。直哉さんも九番隊に――』
警護強化を伝えて、そう言おうとした時に流れた放送。
[各隊に連絡!至急霞大路家に突入せよ!]
『……霞大路家に突入…?』
「ふん、狸爺が漸く踏み切ったか」
いやちょっと口を慎め直哉さん。狸爺てかなり失礼だから
つか突入ってどういう事だ
「獏爻刀の資料は渡したな。それから考えてみろ」
確か使用者の霊圧を喰う違法性の高い刀、だった筈
それと霞大路家。救援要請をして来た癖に何故か此方を警戒してる。
修兵さんの話によると暗殺者達は獏爻刀を使っていた
雲井の雇った暗殺者達が。
霞大路家によって行われている警戒が屋敷内を探られては困るからだとして……見られては困るもの、それが獏爻刀だとしたら?
『………!』
「真相に辿り着いたか」
にやりと笑う直哉さんに頷く。今隊長達は恐らく命令を出した総隊長と現在進行形で命令に従っていない僕以外は全員霞大路家に突入している。ならば此処は総隊長の方に向かうべきか
『直哉さん隊を率いて霞大路家へ突入!檜佐木さんは僕と来い!』
「良いだろう」
「了解!」
『縛道の六十一・六杖光牢』
「……おや、気付いたのか桜花隊長」
総隊長に近付こうとする男に鬼道を掛ける。薄く笑った彼は全く動じていない。その気になれば直ぐに破れるんだろう
「桜花」
『総隊長、微力ながら力添えに参りました』
前に出て藤凍月を抜く。隣に並んだ修兵さんも風死を抜いた
「無駄だ。この獏爻刀の前では斬魄刀は能力を封じられる」
確か直哉さんの資料にも書かれてた。卍解は勿論始解も使えなくするんだったか
『別に始解出来なくても良いよ』
始解出来なくたって立派な刃物だ。正面から斬り掛かれば受け止められた。ぐっと力を入れて鍔迫り合いに持ち込む。
――掛かった。
「ぐっ……!」
「隊長に気を取られ過ぎだ」
背後から背中を斬りつけたのはうちの副隊長。その際に抱えられていた女の子を救出する。二対一は卑怯だと思うがこの際仕方がない。相手は反逆者、いちいち手段は選んでいられない
「瑠璃千代!」
大きな声と共に飛び込んで来たのはオレンジ色。死神代行か
後から来たルキアに女の子を抱えたまま近付く
『ルキア、この子頼む』
「桜花隊長は?」
『檜佐木さんの加勢……まぁしなくても良い気もする』
そう言いつつ見れば天貝の獏爻刀は何だか気持ち悪い事になっていた。何あれ、尻尾生えてる
「気持ち悪ぃ」
修兵さんが吐き捨てる様に言って飛び掛かる。それに向かって天貝が獏爻刀を振るった。
瞬間炎が修兵さんを襲う
『修兵さん!』
「隊長、下がってな」
慌てて駆け寄ろうとすれば聞こえた声。
修兵さんの斬魄刀に付いた、僕のものと同じ飾り玉が淡く輝きだした。藤凍月の飾り玉も同じ様に輝きだす
「刈れ――『風死』」
一気に霊圧が膨れ上がり、炎が掻き消された
「何だ、始解使えるじゃねぇか」
「馬鹿な…何故始解を……」
「――簡単な話だ。隊長殿に援護された其処の狗が獏爻刀の霊圧を上回った」
見れば隣に真っ赤な瞳を細めて笑う三席
え、何時来たの。てか援護って何。訊けばさぁなとはぐらかされた
「――卍解!」
黒崎が卍解した。
速度の上がった黒崎が刃を振るう。
「舐めるな!」
天貝が振り払う様に獏爻刀を横薙ぎに振るった
「遅ぇ!」
風死が天貝の斬魄刀を弾き飛ばした
「じゃ、そろそろ終わりにしようじゃねぇか」
「行くぜ!!」
修兵さんが風死を振り回す。
仮面を付けた黒崎が刀を振り下ろした。それを躱した天貝が炎を飛ばす。黒崎がそれに呑み込まれた。その炎を突き破って襲い掛かる鎌。慌てて弾いても背後から影。正面からも炎を突き破ったオレンジ色
「「――終わりだ!」」
『………お疲れ様』
「おう」
焦げ跡を眺めている修兵さんの隣に並ぶ。
天貝は死んだ。自殺という形で。
山本総隊長から父親を殺した本当の理由を訊いた彼は自らの身を獏爻刀の炎に投じた。本当にこれで良かったのかは判らない。只最後に彼が悔いていた事は確かだ
「復讐なんてロクなもんじゃねぇな……」
そう呟いた修兵さんの身体が傾ぐ。慌てて支えればその身体がぐったりと寄り掛かってくる
「気を失ったか」
後ろから僕を支えてくれたのは狛村隊長だった。ひょいと修兵さんを抱えて卯ノ花隊長の下へ歩いていく
『ありがとうございます』
「気にするな。女子に運ばせる訳にも行かぬ」
抱えられた修兵さんはそのまま四番隊舎に運ばれた。何でも獏爻刀の霊圧を抑えつけて始解をしていたらしい。
そりゃ倒れるわ
「なぁ、檜佐木さん大丈夫なのか?」
話し掛けて来たのは死神代行。何故こいつはピンピンしているのかと考え理由を見付ける。こいつの斬魄刀常時解放型か。なら獏爻刀の効果も受けない訳だ
『大丈夫。獏爻刀の効果をねじ伏せながら始解してたから倒れただけ』
要は過労。まぁ明日も休暇取らせてゆっくり休ませれば全快するだろう。
それを伝えれば黒崎はそうか、と笑った
「隊長、狗の傍に付いていた方が良いぞ」
隣から僅かに楽しそうな声。見れば直哉さんがにやりと笑っていた。うん、意地悪そうな顔
『何故?』
「あの忠狗はお前が傍に居ないと気付けば四番隊舎を脱走するだろう」
『マジで?』
いやいや幾ら何でも脱走はしないでしょ。そう考えていると何やら破壊音。そして膨らむ霊圧。え、何?
「九番隊檜佐木副隊長の霊圧が暴走中!桜花隊長をお連れしろと卯ノ花隊長からのご指示です!」
『………』
「ふむ。脱走の前に暴走したか」
いや何でそんな冷静なの直哉さん
走って来たらしい四番隊の隊士に近付けばほっとした顔をされた
『案内をお願いします』
「はい!」
「此処です!」
『ありがとう』
案内してくれた隊士に礼を言い扉を開ける。中は一面鎖だらけ。そして馬鹿でかい霊圧により空気は重い。何この部屋嫌がらせか
部屋を埋め尽くさんと蔓延っている鎖の大群に触れる。あ、これ物凄い事になってるけど風死だ
『風死。僕だよ。通して』
蜷局を巻いた鎖はじゃらじゃらと音を立てながら道を開けた。因みに鎌の部分は壁に突き刺さっている。修兵さんの霊圧暴走に巻き込まれてこんなに鎖が伸びたのか
寝かされているベッドまで近付けば苦しそうに息をする修兵さんが見えた。霊圧制御出来ていないからか。でも落ち着かせるのってどうすれば良いんだろう。取り敢えず手を握ってみる
『修兵さん、大丈夫だから落ち着いて』
「……はっ……はっ……」
握った手は強く握り返された。その手に少しだけ霊圧を流してみる。ぴくりと反応した修兵さんが僅かに目を開いた。灰色の瞳が僕を見る
「はっ……独月……っ」
『大丈夫。ゆっくり息して』
意識は戻ったんだし後は落ち着かせれば大丈夫だろう
ゆっくり髪を撫でていると修兵さんが起き上がった。そして辛そうな表情でしがみついてくる。胸元に顔を埋めた修兵さんの髪を撫でていれば少し霊圧が落ち着いてきた。人って確か他人の心音聞くと落ち着くんだったか
『修兵さん、大丈夫。ゆっくり息して』
「…っ…は……っは……はぁ……」
少しずつ、修兵さんの息が整って来る。霊圧が暴走するときついんだよね。一人でどうにかするのって難しいし
『大分落ち着いて来たよ修兵さん』
「はぁ………はぁ……っ」
ぎゅっとしがみついてくる修兵さんの背中を優しく叩く。一定のリズムで叩いていれば漸く霊圧は収まった。時計を見る。かれこれ三十分は闘っていたらしい
『大丈夫?』
「…わり……迷惑掛けたな…」
『気にしないで』
普段は僕が迷惑掛けてるし、これぐらいどうって事ない。
飲み物でも取って来ようと思ったのだが修兵さんが離れない。軽く背中を叩けば更にぎゅっと引っ付かれた
「……もう少し…このままで居てくれねぇか…」
『………判った』
小さな声に了承の意を伝えればありがとなと返された
僕の胸に顔を埋めて動かない修兵さんを見て思う。もしこの人が誰かに殺されたりしたら僕は復讐に走るのだろうか
Turmoil is ended by his death
(大丈夫?)
(ああ、悪ぃな)