終戦。目覚め
暗い。冷たい。怖い。何も判らない。
真っ暗な空間。只寒くて
――死なせてあげへんよ
声が、聞こえた
「あれ、ちびさぎチャン。何で此処に居るん?」
『あ、市丸隊長』
何もない原っぱ。其処に隊首羽織を着た市丸隊長は立っていた。
「…ああ、迷い込んでしもうたんやね」
『?』
ぽんぽんと頭を撫でられる。何時もとは違う優しい笑みに首を傾げていれば後ろから足音がした
「………桜花?」
「ちびさぎ!オメーも此方に来たのか!?」
『…東仙隊長、海燕さん』
軽く会釈すれば海燕さんに頭をわしわしと撫でられた。懐かしい、撫で方だ。もう二度とされる事はないと思っていた為目頭が熱くなる。
死んだ筈の彼が何故此処に居るんだろうとは思ったが、此処はそういう場所なのだろうと何となく理解した。
「…桜花、君は此処に迷い込んでしまったのか?」
『?』
「そうみたいっすね」
東仙隊長の言葉に同意する海燕さん。さっき市丸隊長にも言われたけど"迷い込む"って何の事だろう
訊けば海燕さんに気にすんなと頭を撫でられた。他二人も教えてくれそうな気配はない
ふとにこにこ笑う海燕さんに伝えたかった事を思い出した
『海燕さん。僕隊長になりました』
自身の白い羽織を引っ張れば海燕さんが目を丸くした
「凄ぇじゃねぇかちびさぎ!良く頑張ったな!」
『まぁ修兵さんに言われたからなったって感じなんですけどね』
実際なる気はなかったし。そう言えば海燕さんがオメーは相変わらずだなと呆れた様に笑った。
「しっかり隊長サン出来とったよ?」
『そ、そうですか…?』
「ああ。君はもう立派な九番隊の隊長だ」
市丸隊長と東仙隊長にそう言われ嬉しくなる。あの決戦の時に二人が見てくれていたんだろうか。そう思うと何だか胸が暖かくなる
「お、ちびさぎ!オメー良い顔で笑う様になったじゃねぇか!」
『へ?』
そう言った海燕さんがまるで自分の事の様に喜んでくれた。隊長二人も優しく微笑んでくれる。
――独月
『?』
不意に誰かに呼ばれた気がして辺りを見渡した。けれど此処には海燕さん達以外の気配はない。
「そろそろ時間の様だな」
東仙隊長がぽつりとそう呟いた。
時間とは何の事だと思っていれば東仙隊長が膝を着いて僕と目線を合わせた
「桜花、これから沢山悩み苦しむかも知れないが、君は一人ではないという事を忘れないでくれ。私達は君達を何時も想っているのだから」
『………はい』
「檜佐木も君も抱え込んで無理をしてしまうから…彼にもそう伝えておいてくれないか」
『判りました』
そう言えば優しく僕の頭を撫で、東仙隊長が立ち上がった。
次に海燕さんがしゃがんで僕と目線を合わせる
「ちびさぎ、俺の願いは生きる事だ」
『…生きる事?』
頷いた海燕さんが自分の胸に拳を当てた
「そうだ。どんな時でも自分を見失わずに、自分らしく生きる事。それが俺の願いだ」
『…海燕さんの、願い……』
呟いた僕の胸に海燕さんが拳を当てる。
「ちびさぎ、俺の願いをオメーに預ける。それを胸に刻んでしっかり生きてくれ。心は殺しちゃいけねぇんだ」
『……はい!』
「おーし、良い返事だ!」
にかっと笑った海燕さんにわっしわっしと頭を撫でられた。ぽんぽんと頭を叩いて海燕さんが立ち上がる。
入れ替わる様に僕の前に来たのは市丸隊長
「ちびさぎチャンは少し無理してしまう時があるからなぁ。ちゃんと檜佐木くんの言う事聞くんやで?」
『……はい』
「ちゃんとご飯も食べぇよ?」
『……はい』
「体調には気ぃ付けよ?ちびさぎチャン身体弱いんやから」
『……はい。市丸隊長何かお母さんみたいですね…』
「おかんは嫌や」
そう言った市丸隊長が懐から何かを取り出した。
「手出して」
『?…はい』
言われた通りにすれば小さな何かを掌に置かれる
『あ………』
「良い子なちびさぎチャンには飴ちゃんや」
そう言って優しく微笑んだ市丸隊長。掌のそれは何時もと同じ檸檬味。優しく頭を撫でられて泣きたくなった
「頑張って生きるんやで、ちびさぎチャン。ボク等は何時も応援してるさかい」
『………はい』
最後に笑った市丸隊長も立ち上がった。
背筋を伸ばして三人を見る。
僕は出来るだけ隊長らしくしっかりした態度を意識しながら口を開いた
『市丸隊長、東仙隊長、海燕さん。また会えて凄く嬉しかったです』
その言葉を聞いた三人が優しく笑って頷いた。
また呼んでる声がする。少し寂しそうな声。早く行ってあげないと。きっとこの人は僕が起きるのを待ってる
三人に向かって口角を上げる。今出来る僕の最大限の笑顔
『行って来ます』
その言葉を最後に意識が薄れていく
――行ってらっしゃい、と言われた気がした
『………………』
目の前は真っ白な天井だった。後右側に顔面卑猥。
「………………」
顔面卑猥様は僕を見て硬直した。何故固まる。僕まだ何もしてないんだけど
「………………」
『………………』
「………………」
『………………』
「…………独月……?」
『はい。何ですか修兵さん』
恐る恐るといった感じで呼ばれた名前に返事をすれば修兵さんが目を見開いた
「独月っ!!」
『う、わ』
勢い良く飛び付かれる。抱き付いて来た修兵さんにぎゅうぎゅうと締め付けられた。ちょっ、痛い。痛いから修兵さん。何か身体がみしみし言ってるから。あんたは僕を圧死させる気か
『しゅーへーさ……ギブ…』
「へ?あ、悪ぃっ!!」
必死こいて背中をタップすれば慌てて修兵さんが僕を離した。あー痛かった。肩を回したりしていれば今にも泣きそうな顔で修兵さんが僕を見ていた。え、何でそんな顔してんの?
「お前……起きるの遅過ぎんだよ…!」
『は?…ぐえっ』
再びしがみついてきた修兵さんに締められる。覆い被さって人をぎゅうぎゅう抱き締める修兵さんの頭を撫でようとして左手に何かを握っている事に気付く。あれ、何で飴?取り敢えず今はこの絞め殺しを阻止する為に飴を置き、修兵さんの頭を撫でた。さらさらの髪を撫で続ければ少しだけ力が弱まり、息が楽になる。
てか起きるのが遅過ぎるってどういう事だ
そう呟けば顔を上げた修兵さんが僕を見た
「お前、どれくらい寝てたと思ってる…?」
『え?んー…三日ぐらい?』
「馬鹿。そりゃ俺だ」
『え』
修兵さん三日も寝込んだのか。
そう思って顔を見れば修兵さんは呆れ顔。何でこんな顔されてるんだろうか僕
「あのな、独月」
『ん?』
「お前、1ヶ月寝てた」
『………………ん?』
え、今、何て?
「あの決戦から1ヶ月ずっとお前は寝てたの」
『………えええええ!』
「っ…うるせぇな…」
『あ、ごめん』
眉を寄せた修兵さんに反射的に謝る。てか普段出さない大声出したら喉痛い。
そういえば今更ながらに此処は何処だと辺りを見渡して四番隊の救護詰所かと推測。
て事は1ヶ月も個室でぐーすか寝てたのか
ひとまず深呼吸して、気になっていた事を聞く
『修兵さん、藍染達はどうなった…?』
「……藍染は黒崎一護が倒した。市丸隊長は藍染に殺された。隊士達も各々重傷だったりしたが奇跡的に死者は零だ」
『……市丸隊長…』
だからあの人は彼処に居たのか。海燕さんや東仙隊長と一緒に。
ふと視界の端に黄色い包みが入り、目を向ける。
『……飴…』
――良い子なちびさぎチャンには飴ちゃんや
檸檬味の、何時も挨拶する度にあの人がくれていた飴。あれは夢じゃなかったのかと目頭が熱くなった
「何だ、もう一つ持ってたのか?」
『え?』
もう一つに首を傾げれば修兵さんがほらと手を差し出す。其処にちょこんと乗っていたのは机に置いたのと同じ飴
「戦いの後に何時の間にか握ってたんだよ」
渡された飴と机に置いた飴を掌に置き眺める。
そういえば真っ暗な中に居た時も市丸隊長みたいな声が聞こえた気がする。あれも夢だったんだろうか
『………修兵さん』
「ん?」
僕を見た修兵さんに向かって、静かに口を開く
『……海燕さんと市丸隊長と東仙隊長に逢ったよ』
「……へぇ…」
夢での出来事を話せば横になる僕の隣で頬杖をついた修兵さんが目を細めて笑った
「東仙隊長に心配されてるとは…俺達がしっかりしねぇと隊長もゆっくり出来ねぇな」
『そうだね』
修兵さんは夢を否定する訳でもなく、只優しい顔で聞いていた。東仙隊長からの伝言も嬉しそうに聞いて、相槌を打つ
『………あのさ、修兵さん』
「ん?」
『自分から話しておいて何だけど、たかが夢だろとか思わないの?』
「あ?思わねぇけど?」
何言ってんだお前みたいな表情に思わず目を見開く。多分今の僕はきょとん顔だ
「お前迷い込んだんだろ?なら死後の世界ってヤツに迷い込んで隊長達に逢ったんだよ」
『……んー…』
いや自分でも信じ難いのに何でそんなあっさり信じるかな。普段は疑い深い癖に
「それに俺はお前の言う事なら信じる。お前もそうだろ?」
『………ん』
修兵さんの自信満々な問いに頷けば彼は満足そうに笑った。何か僕の事理解されてて腹立つ。くそイケメン爆発しろ
何となくジト目で見ていればそれにしても、と修兵さんが呟いた。そしてまた抱き付いて来る。
「…目を覚ましてくれて良かった……」
僕の首筋に頬を擦り付けて修兵さんが目を細めた。え、ちょっと何この生き物可愛過ぎる。やっぱ爆発しなくて良いよ修兵さん
あれか、寂しかったのか。他の人に構って貰えなかったのか?
『………寂しかった?』
「……当たり前だろうが…」
え、ちょっとほんとどうしたの修兵さん。何か素直過ぎて怖い。寂し過ぎて頭やられたんですか
そんな事を考えていると小さく震える声で修兵さんが呟いた
「…なかなか目ぇ覚まさねぇし…このままお前が起きなかったらどうしようかと思ってた…」
『……心配させてごめん…』
「あんま心配させんじゃねぇよ馬鹿……」
そっとさらさらな髪を撫でればぎゅっと抱き締められた。多少息苦しいけれどまぁ内臓の圧死を企んでいる様な強さではない為良しとする。
わんこの頭を撫でながら、ふと言いそびれている言葉を思い出した
『修兵さん』
「……何だよ」
おはよう
(ああ…おはよ。お寝坊なお姫サマ)
(姫違う)
(何だよ、抱き締めて起こしてやったのに)
(王子の起こし方が姫にとっては命懸けなんで慎んで辞退させて頂きます)
(遠慮すんなって)
(話訊けよ)
真っ暗な空間。只寒くて
――死なせてあげへんよ
声が、聞こえた
「あれ、ちびさぎチャン。何で此処に居るん?」
『あ、市丸隊長』
何もない原っぱ。其処に隊首羽織を着た市丸隊長は立っていた。
「…ああ、迷い込んでしもうたんやね」
『?』
ぽんぽんと頭を撫でられる。何時もとは違う優しい笑みに首を傾げていれば後ろから足音がした
「………桜花?」
「ちびさぎ!オメーも此方に来たのか!?」
『…東仙隊長、海燕さん』
軽く会釈すれば海燕さんに頭をわしわしと撫でられた。懐かしい、撫で方だ。もう二度とされる事はないと思っていた為目頭が熱くなる。
死んだ筈の彼が何故此処に居るんだろうとは思ったが、此処はそういう場所なのだろうと何となく理解した。
「…桜花、君は此処に迷い込んでしまったのか?」
『?』
「そうみたいっすね」
東仙隊長の言葉に同意する海燕さん。さっき市丸隊長にも言われたけど"迷い込む"って何の事だろう
訊けば海燕さんに気にすんなと頭を撫でられた。他二人も教えてくれそうな気配はない
ふとにこにこ笑う海燕さんに伝えたかった事を思い出した
『海燕さん。僕隊長になりました』
自身の白い羽織を引っ張れば海燕さんが目を丸くした
「凄ぇじゃねぇかちびさぎ!良く頑張ったな!」
『まぁ修兵さんに言われたからなったって感じなんですけどね』
実際なる気はなかったし。そう言えば海燕さんがオメーは相変わらずだなと呆れた様に笑った。
「しっかり隊長サン出来とったよ?」
『そ、そうですか…?』
「ああ。君はもう立派な九番隊の隊長だ」
市丸隊長と東仙隊長にそう言われ嬉しくなる。あの決戦の時に二人が見てくれていたんだろうか。そう思うと何だか胸が暖かくなる
「お、ちびさぎ!オメー良い顔で笑う様になったじゃねぇか!」
『へ?』
そう言った海燕さんがまるで自分の事の様に喜んでくれた。隊長二人も優しく微笑んでくれる。
――独月
『?』
不意に誰かに呼ばれた気がして辺りを見渡した。けれど此処には海燕さん達以外の気配はない。
「そろそろ時間の様だな」
東仙隊長がぽつりとそう呟いた。
時間とは何の事だと思っていれば東仙隊長が膝を着いて僕と目線を合わせた
「桜花、これから沢山悩み苦しむかも知れないが、君は一人ではないという事を忘れないでくれ。私達は君達を何時も想っているのだから」
『………はい』
「檜佐木も君も抱え込んで無理をしてしまうから…彼にもそう伝えておいてくれないか」
『判りました』
そう言えば優しく僕の頭を撫で、東仙隊長が立ち上がった。
次に海燕さんがしゃがんで僕と目線を合わせる
「ちびさぎ、俺の願いは生きる事だ」
『…生きる事?』
頷いた海燕さんが自分の胸に拳を当てた
「そうだ。どんな時でも自分を見失わずに、自分らしく生きる事。それが俺の願いだ」
『…海燕さんの、願い……』
呟いた僕の胸に海燕さんが拳を当てる。
「ちびさぎ、俺の願いをオメーに預ける。それを胸に刻んでしっかり生きてくれ。心は殺しちゃいけねぇんだ」
『……はい!』
「おーし、良い返事だ!」
にかっと笑った海燕さんにわっしわっしと頭を撫でられた。ぽんぽんと頭を叩いて海燕さんが立ち上がる。
入れ替わる様に僕の前に来たのは市丸隊長
「ちびさぎチャンは少し無理してしまう時があるからなぁ。ちゃんと檜佐木くんの言う事聞くんやで?」
『……はい』
「ちゃんとご飯も食べぇよ?」
『……はい』
「体調には気ぃ付けよ?ちびさぎチャン身体弱いんやから」
『……はい。市丸隊長何かお母さんみたいですね…』
「おかんは嫌や」
そう言った市丸隊長が懐から何かを取り出した。
「手出して」
『?…はい』
言われた通りにすれば小さな何かを掌に置かれる
『あ………』
「良い子なちびさぎチャンには飴ちゃんや」
そう言って優しく微笑んだ市丸隊長。掌のそれは何時もと同じ檸檬味。優しく頭を撫でられて泣きたくなった
「頑張って生きるんやで、ちびさぎチャン。ボク等は何時も応援してるさかい」
『………はい』
最後に笑った市丸隊長も立ち上がった。
背筋を伸ばして三人を見る。
僕は出来るだけ隊長らしくしっかりした態度を意識しながら口を開いた
『市丸隊長、東仙隊長、海燕さん。また会えて凄く嬉しかったです』
その言葉を聞いた三人が優しく笑って頷いた。
また呼んでる声がする。少し寂しそうな声。早く行ってあげないと。きっとこの人は僕が起きるのを待ってる
三人に向かって口角を上げる。今出来る僕の最大限の笑顔
『行って来ます』
その言葉を最後に意識が薄れていく
――行ってらっしゃい、と言われた気がした
『………………』
目の前は真っ白な天井だった。後右側に顔面卑猥。
「………………」
顔面卑猥様は僕を見て硬直した。何故固まる。僕まだ何もしてないんだけど
「………………」
『………………』
「………………」
『………………』
「…………独月……?」
『はい。何ですか修兵さん』
恐る恐るといった感じで呼ばれた名前に返事をすれば修兵さんが目を見開いた
「独月っ!!」
『う、わ』
勢い良く飛び付かれる。抱き付いて来た修兵さんにぎゅうぎゅうと締め付けられた。ちょっ、痛い。痛いから修兵さん。何か身体がみしみし言ってるから。あんたは僕を圧死させる気か
『しゅーへーさ……ギブ…』
「へ?あ、悪ぃっ!!」
必死こいて背中をタップすれば慌てて修兵さんが僕を離した。あー痛かった。肩を回したりしていれば今にも泣きそうな顔で修兵さんが僕を見ていた。え、何でそんな顔してんの?
「お前……起きるの遅過ぎんだよ…!」
『は?…ぐえっ』
再びしがみついてきた修兵さんに締められる。覆い被さって人をぎゅうぎゅう抱き締める修兵さんの頭を撫でようとして左手に何かを握っている事に気付く。あれ、何で飴?取り敢えず今はこの絞め殺しを阻止する為に飴を置き、修兵さんの頭を撫でた。さらさらの髪を撫で続ければ少しだけ力が弱まり、息が楽になる。
てか起きるのが遅過ぎるってどういう事だ
そう呟けば顔を上げた修兵さんが僕を見た
「お前、どれくらい寝てたと思ってる…?」
『え?んー…三日ぐらい?』
「馬鹿。そりゃ俺だ」
『え』
修兵さん三日も寝込んだのか。
そう思って顔を見れば修兵さんは呆れ顔。何でこんな顔されてるんだろうか僕
「あのな、独月」
『ん?』
「お前、1ヶ月寝てた」
『………………ん?』
え、今、何て?
「あの決戦から1ヶ月ずっとお前は寝てたの」
『………えええええ!』
「っ…うるせぇな…」
『あ、ごめん』
眉を寄せた修兵さんに反射的に謝る。てか普段出さない大声出したら喉痛い。
そういえば今更ながらに此処は何処だと辺りを見渡して四番隊の救護詰所かと推測。
て事は1ヶ月も個室でぐーすか寝てたのか
ひとまず深呼吸して、気になっていた事を聞く
『修兵さん、藍染達はどうなった…?』
「……藍染は黒崎一護が倒した。市丸隊長は藍染に殺された。隊士達も各々重傷だったりしたが奇跡的に死者は零だ」
『……市丸隊長…』
だからあの人は彼処に居たのか。海燕さんや東仙隊長と一緒に。
ふと視界の端に黄色い包みが入り、目を向ける。
『……飴…』
――良い子なちびさぎチャンには飴ちゃんや
檸檬味の、何時も挨拶する度にあの人がくれていた飴。あれは夢じゃなかったのかと目頭が熱くなった
「何だ、もう一つ持ってたのか?」
『え?』
もう一つに首を傾げれば修兵さんがほらと手を差し出す。其処にちょこんと乗っていたのは机に置いたのと同じ飴
「戦いの後に何時の間にか握ってたんだよ」
渡された飴と机に置いた飴を掌に置き眺める。
そういえば真っ暗な中に居た時も市丸隊長みたいな声が聞こえた気がする。あれも夢だったんだろうか
『………修兵さん』
「ん?」
僕を見た修兵さんに向かって、静かに口を開く
『……海燕さんと市丸隊長と東仙隊長に逢ったよ』
「……へぇ…」
夢での出来事を話せば横になる僕の隣で頬杖をついた修兵さんが目を細めて笑った
「東仙隊長に心配されてるとは…俺達がしっかりしねぇと隊長もゆっくり出来ねぇな」
『そうだね』
修兵さんは夢を否定する訳でもなく、只優しい顔で聞いていた。東仙隊長からの伝言も嬉しそうに聞いて、相槌を打つ
『………あのさ、修兵さん』
「ん?」
『自分から話しておいて何だけど、たかが夢だろとか思わないの?』
「あ?思わねぇけど?」
何言ってんだお前みたいな表情に思わず目を見開く。多分今の僕はきょとん顔だ
「お前迷い込んだんだろ?なら死後の世界ってヤツに迷い込んで隊長達に逢ったんだよ」
『……んー…』
いや自分でも信じ難いのに何でそんなあっさり信じるかな。普段は疑い深い癖に
「それに俺はお前の言う事なら信じる。お前もそうだろ?」
『………ん』
修兵さんの自信満々な問いに頷けば彼は満足そうに笑った。何か僕の事理解されてて腹立つ。くそイケメン爆発しろ
何となくジト目で見ていればそれにしても、と修兵さんが呟いた。そしてまた抱き付いて来る。
「…目を覚ましてくれて良かった……」
僕の首筋に頬を擦り付けて修兵さんが目を細めた。え、ちょっと何この生き物可愛過ぎる。やっぱ爆発しなくて良いよ修兵さん
あれか、寂しかったのか。他の人に構って貰えなかったのか?
『………寂しかった?』
「……当たり前だろうが…」
え、ちょっとほんとどうしたの修兵さん。何か素直過ぎて怖い。寂し過ぎて頭やられたんですか
そんな事を考えていると小さく震える声で修兵さんが呟いた
「…なかなか目ぇ覚まさねぇし…このままお前が起きなかったらどうしようかと思ってた…」
『……心配させてごめん…』
「あんま心配させんじゃねぇよ馬鹿……」
そっとさらさらな髪を撫でればぎゅっと抱き締められた。多少息苦しいけれどまぁ内臓の圧死を企んでいる様な強さではない為良しとする。
わんこの頭を撫でながら、ふと言いそびれている言葉を思い出した
『修兵さん』
「……何だよ」
おはよう
(ああ…おはよ。お寝坊なお姫サマ)
(姫違う)
(何だよ、抱き締めて起こしてやったのに)
(王子の起こし方が姫にとっては命懸けなんで慎んで辞退させて頂きます)
(遠慮すんなって)
(話訊けよ)