If you kill enough
雨の中、ふと感じ慣れた霊圧を感知した。ちらりと振り返る。そこに立っていたのは顔に傷のある男
今冬なのに袖ないけど寒くないのかなこの人
「おう、隊長。迎えに来たぜ」
『……ありがとう』
差し出されたその手に自分のそれを乗せる。
「邪魔の入らねぇ所に行こうぜ」
手を引かれ来たのは何もない丘の上。東仙隊長が居なくなって直ぐに、二人で飲みに来た場所。
「――さて」
手を離し、静かに彼が此方を向いた。
「約束通り、お前の命を貰いに来たぜ。独月」
『……奇遇だな。僕も貴方の命を貰いに来た。檜佐木修兵………いや、霊骸』
「最初から気付いてたみてぇだけど、何故だ?」
不思議そうに首を傾げた霊骸に向かって己の首を指し示す
『修兵さんの首には咬み痕が付いてるし、今は上衣着てるしクロスのペンダント首から下げてる』
それにあの人は今現世で僕の霊骸と戦って療養中だし
「あー、誕生日に貰ったアレに上衣か。つか咬み痕…どうせ俺が考え付いたんだろ」
納得した様に笑った霊骸。彼はすらりと斬魄刀を抜いた
それに合わせて僕も藤凍月を抜く
『……虚空に色付け――『藤凍月』』
「刈れ――『風死』」
『破道の六十三・雷吼炮』
「ちっ」
『避けるな!』
「避けねぇと当たるだろうがっ!!」
電撃を躱した霊骸が風死を投げる。それを撃ち落とせば不機嫌そうな顔をした
「それ卑怯じゃね?」
『戦いなんて何でもアリです』
向かって来た霊骸の刃を受け止める。
鍔迫り合いになった時に右目を細める癖も。斬撃のリズムも。呼吸すらも
全てが修兵さんと重なる。時々目が青白く光るのを見逃してしまえば本物かと間違えてしまう程に
「迷ってんのかよ、独月」
『…何の事だ』
「さっきからずっと辛そうな顔してんぞ」
『!』
言葉と共に飛んできた風死を躱し損ねた。左肩を斬り裂き鎌が飛んでいく
「図星か」
『………違う』
迷ってなんかない。霊骸を倒す覚悟は出来ている。
ぎゅっと藤凍月を握り締め、霊骸を見た。
只でさえ雨が降っているのにその勢いが増してきた。視界が悪い。ぼやける前方を見ていれば、背後から声
「縛道の六十二・百歩欄干」
『――っ!』
飛んできた光の棒に身体を縫い付けられた。木に磔にされた状態の僕に霊骸が近付いて来る
「俺が何でお前を殺したいか、判るか…?」
判るかそんなもん。
無言で睨み付けていれば霊骸が笑う
「まぁ判んねぇかも知れねぇな。お前には」
そう言って自己完結。何なんだお前。そういうとこまで修兵さんと一緒なのか
「じゃあ、そろそろ終わりにしようや」
霊骸が風死を構えた。
僕は長刀を持つ手を僅かに捻る
「っ!」
氷の槍が霊骸の背後から襲い掛かる。身を反らして躱した霊骸の頬から血が滑り落ちた
僕から目を離している隙に外套を脱ぎ捨て拘束から脱出する。死覇装が何ヶ所か破れたが仕方ない。
身に纏う防寒具を全て投げ捨て僕は拳銃を霊骸に向けた
「ちっ……」
弾丸は霊骸の左肩を貫いた。これでもう左腕は使えないだろう。
霊骸が血を流す姿を見る度痛む胸を無視する。アレは修兵さんじゃない。偽物で、敵だ
『縛裟氷映』
瞬歩で霊骸の背後に回り込んで長刀を振るう。
刃が霊骸の背を捉えようとして――
「お前も俺を斬るのか?東仙隊長みたいに」
『――っ!!!!』
ぴたりと刀を振る手が止まった。此方を見ている寂しそうな目。あの日の辛そうな顔が脳裏を過ぎる。
反射的に飛び退けば霊骸は寂しそうな目のまま僕に笑いかけた
「何だよ、斬らねぇの?俺、お前になら斬られても良いぜ?」
ほんとは寂しいけどな。
その呟きに藤凍月を持つ手が震えた。違う。あいつは修兵さんじゃない。霊骸だ
悲しそうな笑顔。寂しそうな目。苦しそうな笑い方
違う。修兵さんじゃ…ない………
「独月」
優しい声で近付いて来る。寂しそうな笑みを浮かべて。血を流しながら
『…っ…あ…』
喉が引きつってまともな声が出せなくなる。修兵さんに怪我を負わせたのは、辛い記憶を思い出させたのは、修兵さんにあんな顔させているのは――
「独月」
僕、だ。
その場に座り込み、震える自身の身体を抱き締める
胸が痛い。殺したくない。殺せる訳がない
震える手の中で藤凍月の始解も解けてしまった。もう藤凍月の声も聞こえない
ざり、と地面を踏みしめた修兵さんが目の前にしゃがみ込んだ。
僕の頭を撫でて笑う
「んな顔すんなよ。泣きそうじゃねぇか」
僕の手から藤凍月を抜き取った。そっと風死を隣に置いて、僕を引き寄せる。
雨で冷えた身体は冷たい
「俺な、お前になら斬られても良いと思ってる」
耳元で修兵さんが囁く。その言葉にふるふると首を横に振った。嫌だ、修兵さんを斬りたくない
それに気付いた修兵さんが微かに笑った
「でもな、独月」
僕の髪を梳きながら、優しい声で
「――俺はお前を殺したいとも思ってる」
『………っ』
衝撃。
ざくりと何かを肉に突き刺す様な音
刹那、背中を襲う激痛。息が詰まる。焼ける様に熱い。あまりの痛みに汗が出る
僅かに振り向けば背中に突き刺さった鎌が見えた。風死だ。
――修兵さんの風死が僕の背中に突き立てられている
「痛いか?」
囁く彼の右手は依然として僕の髪を梳いたまま。
震える身体で背中を見れば方法は判った
修兵さんは左腕で風死を握っていた。何故。撃たれて左腕は使えない筈じゃ――
「俺な、超速再生出来んの」
そう言った修兵さんが自らの死覇装を捲った。肩に銃痕はない。変わりに刻まれている桜の刺青に目が行く。
あの時僕とお揃いだと言っていた、刺青。
『……けほ…っ』
小さく咳き込めばごぼりと嫌な音がして吐血した。苦しい。気管が変な音を立てている
「さぁ、楽にしてやる」
修兵さんが優しく笑った
ぐっと風死に力が込められる。
『……、…』
修兵さんの胸元に手を掛けた。力の入らない両手の掌を胸に押し付ける
「今更そんな抵抗したって無駄だ。お前も判ってんだろ?」
修兵さんがくつくつと笑った。大雨の中、彼の目が青白い光を放つ
「大好きだ、独月」
優しい声で囁いて、風死を持つ手に力が込められた
『………修兵、さん…』
――ザシュッと肉を裂く音が雨の中響いた
大雨の中、流れ出る赤は薄まっていく。
「……何で…」
小さな呟き。彼の身体から力が抜ける。そのまま僕に凭れてきた
『………代刀・青蓮』
僕の両手から出た氷が霊骸の胸を貫いていた。
蓮の花が連なった刃から血が滴り落ちる
斬魄刀を持っていない状態でのこの技は辺りに大量の水分がないと使えない。雨の日だからこそ使えた技
『……流石にこれなら…超速再生は出来ない…だろ…?』
現に霊骸の胸からは血が流れ続けている。恐らくこの氷を解かなければ彼は死ぬだろう
ごぼりと口から血を吐いて、霊骸が笑う。その姿はやはり修兵さんに見えてしまって、辛くなる
「……何で…刺せた?あの様子なら…何も出来ねぇと思ったのに……」
確かにあの時は殺せないと思った。背を刺している風死に身を任せた方が良いと思った
――でも、思い出したんだ
『…殺されるなって、言われた事』
その言葉に霊骸が僅かに目を細めた。叶わねぇなと呟き、彼は緩く口角を上げた
「……なぁ、独月…」
『……何…?』
僕の肩に頭を預けたまま彼は口を開いた。氷から手を外して霊骸の頬に触れる
「…お前の手で…俺を…」
殺してくれ。
そう、呟いた
ゆっくりと身を起こし、血塗れの手で僕の手を導く。彼自身の、首へと
『……っ…』
「…氷なんかじゃなくて…お前自身の手で…」
僕の震える手を首に当て、優しく笑った。何で、そんな笑みを浮かべる?
「……おら…早くしろ……」
『………っ』
少しずつ、震える手に力を込める。喉を締める生々しい感覚。締められる事で段々と早くなっていく脈。苦しそうなのに、霊骸は満足そうに笑っている
「…わら…て…くれ……」
掠れた声で霊骸が囁いた。見開いた目から熱いものが零れる。
「………な、まえ……よん…で……?」
『……修兵、さん…』
視界が滲む。また震えそうな手に力を込めて、彼の首を締め続ける。
少しずつ、霊骸の身体から力が抜けていくのが判った。力の抜けてきた手をゆるゆると動かして、僕を抱き締める様に背に回す。
「…………独月……」
空気を求める気管が僕の手の力に抗おうと懸命に動く。聞こえてくる呼吸音。ひゅーひゅーと喉が鳴っている。早く殺さないと苦しいのはこの人だ。早く、殺して、楽にしてあげないと
「…なく…な…」
そう言った霊骸の手が僕の頬を撫でて、地面に落ちた。
霊骸の肌が人形の様な土気色になって、砂になる。
着る者を失った死覇装が砂の山にぱさりと落ちた
『……っ…』
砂まみれになった彼の死覇装を抱き締める。霊骸とは言え彼は確かに修兵さんだった
――大切な人を、この手で殺してしまった
彼の胸を貫いただけではなく、首まで締めて
『……痛い、な…』
ぎゅっと死覇装を握る手に力を込める
雨も流れ落ちる涙もどちらも止む気配はなくて
『……修兵、さん…』
嗚呼。胸が、痛い。
Farewell gift to you
(せめて貴方の弔いに、この氷の蓮の花を)
今冬なのに袖ないけど寒くないのかなこの人
「おう、隊長。迎えに来たぜ」
『……ありがとう』
差し出されたその手に自分のそれを乗せる。
「邪魔の入らねぇ所に行こうぜ」
手を引かれ来たのは何もない丘の上。東仙隊長が居なくなって直ぐに、二人で飲みに来た場所。
「――さて」
手を離し、静かに彼が此方を向いた。
「約束通り、お前の命を貰いに来たぜ。独月」
『……奇遇だな。僕も貴方の命を貰いに来た。檜佐木修兵………いや、霊骸』
「最初から気付いてたみてぇだけど、何故だ?」
不思議そうに首を傾げた霊骸に向かって己の首を指し示す
『修兵さんの首には咬み痕が付いてるし、今は上衣着てるしクロスのペンダント首から下げてる』
それにあの人は今現世で僕の霊骸と戦って療養中だし
「あー、誕生日に貰ったアレに上衣か。つか咬み痕…どうせ俺が考え付いたんだろ」
納得した様に笑った霊骸。彼はすらりと斬魄刀を抜いた
それに合わせて僕も藤凍月を抜く
『……虚空に色付け――『藤凍月』』
「刈れ――『風死』」
『破道の六十三・雷吼炮』
「ちっ」
『避けるな!』
「避けねぇと当たるだろうがっ!!」
電撃を躱した霊骸が風死を投げる。それを撃ち落とせば不機嫌そうな顔をした
「それ卑怯じゃね?」
『戦いなんて何でもアリです』
向かって来た霊骸の刃を受け止める。
鍔迫り合いになった時に右目を細める癖も。斬撃のリズムも。呼吸すらも
全てが修兵さんと重なる。時々目が青白く光るのを見逃してしまえば本物かと間違えてしまう程に
「迷ってんのかよ、独月」
『…何の事だ』
「さっきからずっと辛そうな顔してんぞ」
『!』
言葉と共に飛んできた風死を躱し損ねた。左肩を斬り裂き鎌が飛んでいく
「図星か」
『………違う』
迷ってなんかない。霊骸を倒す覚悟は出来ている。
ぎゅっと藤凍月を握り締め、霊骸を見た。
只でさえ雨が降っているのにその勢いが増してきた。視界が悪い。ぼやける前方を見ていれば、背後から声
「縛道の六十二・百歩欄干」
『――っ!』
飛んできた光の棒に身体を縫い付けられた。木に磔にされた状態の僕に霊骸が近付いて来る
「俺が何でお前を殺したいか、判るか…?」
判るかそんなもん。
無言で睨み付けていれば霊骸が笑う
「まぁ判んねぇかも知れねぇな。お前には」
そう言って自己完結。何なんだお前。そういうとこまで修兵さんと一緒なのか
「じゃあ、そろそろ終わりにしようや」
霊骸が風死を構えた。
僕は長刀を持つ手を僅かに捻る
「っ!」
氷の槍が霊骸の背後から襲い掛かる。身を反らして躱した霊骸の頬から血が滑り落ちた
僕から目を離している隙に外套を脱ぎ捨て拘束から脱出する。死覇装が何ヶ所か破れたが仕方ない。
身に纏う防寒具を全て投げ捨て僕は拳銃を霊骸に向けた
「ちっ……」
弾丸は霊骸の左肩を貫いた。これでもう左腕は使えないだろう。
霊骸が血を流す姿を見る度痛む胸を無視する。アレは修兵さんじゃない。偽物で、敵だ
『縛裟氷映』
瞬歩で霊骸の背後に回り込んで長刀を振るう。
刃が霊骸の背を捉えようとして――
「お前も俺を斬るのか?東仙隊長みたいに」
『――っ!!!!』
ぴたりと刀を振る手が止まった。此方を見ている寂しそうな目。あの日の辛そうな顔が脳裏を過ぎる。
反射的に飛び退けば霊骸は寂しそうな目のまま僕に笑いかけた
「何だよ、斬らねぇの?俺、お前になら斬られても良いぜ?」
ほんとは寂しいけどな。
その呟きに藤凍月を持つ手が震えた。違う。あいつは修兵さんじゃない。霊骸だ
悲しそうな笑顔。寂しそうな目。苦しそうな笑い方
違う。修兵さんじゃ…ない………
「独月」
優しい声で近付いて来る。寂しそうな笑みを浮かべて。血を流しながら
『…っ…あ…』
喉が引きつってまともな声が出せなくなる。修兵さんに怪我を負わせたのは、辛い記憶を思い出させたのは、修兵さんにあんな顔させているのは――
「独月」
僕、だ。
その場に座り込み、震える自身の身体を抱き締める
胸が痛い。殺したくない。殺せる訳がない
震える手の中で藤凍月の始解も解けてしまった。もう藤凍月の声も聞こえない
ざり、と地面を踏みしめた修兵さんが目の前にしゃがみ込んだ。
僕の頭を撫でて笑う
「んな顔すんなよ。泣きそうじゃねぇか」
僕の手から藤凍月を抜き取った。そっと風死を隣に置いて、僕を引き寄せる。
雨で冷えた身体は冷たい
「俺な、お前になら斬られても良いと思ってる」
耳元で修兵さんが囁く。その言葉にふるふると首を横に振った。嫌だ、修兵さんを斬りたくない
それに気付いた修兵さんが微かに笑った
「でもな、独月」
僕の髪を梳きながら、優しい声で
「――俺はお前を殺したいとも思ってる」
『………っ』
衝撃。
ざくりと何かを肉に突き刺す様な音
刹那、背中を襲う激痛。息が詰まる。焼ける様に熱い。あまりの痛みに汗が出る
僅かに振り向けば背中に突き刺さった鎌が見えた。風死だ。
――修兵さんの風死が僕の背中に突き立てられている
「痛いか?」
囁く彼の右手は依然として僕の髪を梳いたまま。
震える身体で背中を見れば方法は判った
修兵さんは左腕で風死を握っていた。何故。撃たれて左腕は使えない筈じゃ――
「俺な、超速再生出来んの」
そう言った修兵さんが自らの死覇装を捲った。肩に銃痕はない。変わりに刻まれている桜の刺青に目が行く。
あの時僕とお揃いだと言っていた、刺青。
『……けほ…っ』
小さく咳き込めばごぼりと嫌な音がして吐血した。苦しい。気管が変な音を立てている
「さぁ、楽にしてやる」
修兵さんが優しく笑った
ぐっと風死に力が込められる。
『……、…』
修兵さんの胸元に手を掛けた。力の入らない両手の掌を胸に押し付ける
「今更そんな抵抗したって無駄だ。お前も判ってんだろ?」
修兵さんがくつくつと笑った。大雨の中、彼の目が青白い光を放つ
「大好きだ、独月」
優しい声で囁いて、風死を持つ手に力が込められた
『………修兵、さん…』
――ザシュッと肉を裂く音が雨の中響いた
大雨の中、流れ出る赤は薄まっていく。
「……何で…」
小さな呟き。彼の身体から力が抜ける。そのまま僕に凭れてきた
『………代刀・青蓮』
僕の両手から出た氷が霊骸の胸を貫いていた。
蓮の花が連なった刃から血が滴り落ちる
斬魄刀を持っていない状態でのこの技は辺りに大量の水分がないと使えない。雨の日だからこそ使えた技
『……流石にこれなら…超速再生は出来ない…だろ…?』
現に霊骸の胸からは血が流れ続けている。恐らくこの氷を解かなければ彼は死ぬだろう
ごぼりと口から血を吐いて、霊骸が笑う。その姿はやはり修兵さんに見えてしまって、辛くなる
「……何で…刺せた?あの様子なら…何も出来ねぇと思ったのに……」
確かにあの時は殺せないと思った。背を刺している風死に身を任せた方が良いと思った
――でも、思い出したんだ
『…殺されるなって、言われた事』
その言葉に霊骸が僅かに目を細めた。叶わねぇなと呟き、彼は緩く口角を上げた
「……なぁ、独月…」
『……何…?』
僕の肩に頭を預けたまま彼は口を開いた。氷から手を外して霊骸の頬に触れる
「…お前の手で…俺を…」
殺してくれ。
そう、呟いた
ゆっくりと身を起こし、血塗れの手で僕の手を導く。彼自身の、首へと
『……っ…』
「…氷なんかじゃなくて…お前自身の手で…」
僕の震える手を首に当て、優しく笑った。何で、そんな笑みを浮かべる?
「……おら…早くしろ……」
『………っ』
少しずつ、震える手に力を込める。喉を締める生々しい感覚。締められる事で段々と早くなっていく脈。苦しそうなのに、霊骸は満足そうに笑っている
「…わら…て…くれ……」
掠れた声で霊骸が囁いた。見開いた目から熱いものが零れる。
「………な、まえ……よん…で……?」
『……修兵、さん…』
視界が滲む。また震えそうな手に力を込めて、彼の首を締め続ける。
少しずつ、霊骸の身体から力が抜けていくのが判った。力の抜けてきた手をゆるゆると動かして、僕を抱き締める様に背に回す。
「…………独月……」
空気を求める気管が僕の手の力に抗おうと懸命に動く。聞こえてくる呼吸音。ひゅーひゅーと喉が鳴っている。早く殺さないと苦しいのはこの人だ。早く、殺して、楽にしてあげないと
「…なく…な…」
そう言った霊骸の手が僕の頬を撫でて、地面に落ちた。
霊骸の肌が人形の様な土気色になって、砂になる。
着る者を失った死覇装が砂の山にぱさりと落ちた
『……っ…』
砂まみれになった彼の死覇装を抱き締める。霊骸とは言え彼は確かに修兵さんだった
――大切な人を、この手で殺してしまった
彼の胸を貫いただけではなく、首まで締めて
『……痛い、な…』
ぎゅっと死覇装を握る手に力を込める
雨も流れ落ちる涙もどちらも止む気配はなくて
『……修兵、さん…』
嗚呼。胸が、痛い。
Farewell gift to you
(せめて貴方の弔いに、この氷の蓮の花を)