『……隠密機動に移隊…ですか?』

「おう」

朝っぱらから隊首室を訪れた拳西さんに言われた一言。

────修兵さんの隠密機動への移隊

何でも砕蜂隊長が修兵さんの速さと白打に目を着けたんだとか。それで二番隊で鍛えないか、と

『……期間は?』

「まぁ、二年ぐらいだとでも思っとけ」

『……二年…』

鍛えるという面から考えればまぁ短い方か。お茶を運んで来た修ちゃんが首を傾げる

「拳西さん、あいつが居ない間副隊長はどうなるんすか?」

「あ?てめぇが代行すりゃ良いだろ」

「寧ろその為に俺は能力を追加したんだが?」

俺?と自分を差した修ちゃんに頷く拳西さんと直哉さん。因みに今修ちゃんはぬいぐるみの姿ではない。院生時代の修兵さんの姿だ
何でも直哉さんが義魂丸をちょっとばかり弄って、自分の意志でぬいぐるみから人型になれる様にしたそうで。ほんとうちの三席何でもアリだな
頬をぽりぽり掻いた修ちゃんが困った様に僕を見た。副隊長、か。確かに修兵さんが居ないと色々な面で支障が生じるだろう。
それは、判ってるんだけど

『…副隊長は、修兵さんだけだ……』

何か自分で言ってて虚しくなった。自然と俯けばぽんと頭に手が乗せられた

「わーってるよ」

そっと見れば修ちゃんが優しく笑っていた。拳西さんも口角を上げている。直哉さんが笑っているのは通常運行

「原種を副隊長の座から降ろせって言ってる訳じゃねぇ。あいつが居ねぇ間のお前の世話を俺にさせろっつってんだ」

『世話って…』

何か失礼な事言われてる気がする。そう思って二人を見るが彼等は頷くだけ。何なんだこいつら
お茶を飲んだ拳西さんが顔を上げた

「何にせよこの隊には三席が二人居る。修兵が居ねぇ間俺達で仕事すりゃ良いだろう」

「じゃあ俺が独月の世話係代行っすね」

「おう」

「修に仕事をさせれば更に円滑に進むだろう。元々コイツは副隊長の檜佐木修兵なのだからな」

「結局俺が副隊長代行じゃねぇか」

話がどんどん進んでいくのをただぼんやりと眺める。
や、本当は三人の話し合いに混ざらないといけないんだろうけど。

『……移隊、か…』

修兵さんが隣から居なくなるという事が、まだ何となく想像出来なかった


























あの話が出た翌日

「……桜花隊長」

『…何、檜佐木副隊長』

零時を回った頃、修兵さんが改まった表情で僕を呼んだ。

「俺、二番隊で修行して来ようと思ってます」

やっぱり、この話か

『………判った』

静かに頷けば修兵さんが俯いた。その日珍しく腕に巻いていた副官章を僕の前に差し出す

「副官章、預かっておいて頂けますか?」

『…預かる?』

はいと頷いた修兵さんが僅かに笑う

「俺は、自分を制御して、より貴女を支えられる様になって帰ってきます」

だから、と続けた修兵さんが目を細めた。

「帰って来たら、また貴女の背中を護らせて下さい」

『……当たり前』

受け取った副官章を抱き締める。

『修兵さん以外を副隊長にする気はない』

そう言って修兵さんを見れば、彼は目を見開いていた。そんなに驚く事か?

『修兵さんがこの隊に居ない間、副隊長代行や三席が代わりをする事になる』

つまり副隊長の座は空席になる。僕は修兵さん以外を副官にする気はないから、その席が修兵さんの居ない間に埋まる事はないだろうし

『だから、早く強くなって帰って来て下さい』

修兵さんが僕に何かを隠している事は知っている。時折襲う頭痛が隠し事と関係している事も。でもそれを聞かないのは修兵さんが自分から言ってくれるのを待ちたいから。
言いたくない事を無理矢理聞き出したくはないし

「…判った。約束、します」

修兵さんの微笑みが酷く綺麗だった





I can not be anyone I instead of you






次の日、修兵さんは居なくなっていた。