真央霊術院に入ってはや一月。早速起きております、例のアレが



「あの子が天才児だって」

「何でも此処に入って初めての実習で上級鬼道使えたらしいよ」

「目の色が両方違うとか気持ち悪ぃ」

「実は虚なんじゃねぇの?」



『………』

そう、それはひそひそ話という名の陰口。
全てこの場に居る人間の話である。
教室の前を通る生徒からもちらちら視線を感じて、気持ち悪い事この上ない。てかわざわざ見に来んな。ジロジロ此方見るな。文句があるなら正面から言いに来い。
てか僕があんたらに何か嫌な事でもした?いやしてないだろ、関わってすらいないんだし。
頼むから僕に構うな。ほんの少し友達欲しいとか思ってたけどそれも訂正するからほっといてくれ。ほんとそっとしといて下さい。
そう言ってやりたいものの、僕は口下手である。つまり本心の五分の一も満足に伝える事も出来ず自爆してしまう可能性が高いのだ。
自爆して敵増やすとかやだ、泣ける。
そう思って口を閉じていれば、調子に乗ってるだのお高く留まってるだの悪口は増える一方で。
もうこれほんとどうしよう。
や、悪口を言われるだけなら良いんだよ。視線も鬱陶しいけど無視出来るし。
でもね、僕にもどうにも出来ないものが一つだけあるんだよ

『……きた』

何時もより強張った霊圧が近付いてくる。
呼んでもないのに勝手に出て来るこれは一種の召喚魔法か何かか。
外から悲鳴らしきものが聞こえてくる。
取り敢えず、あの人が現状を放置してくれる筈がないのは確かで

「……おいてめぇら」

「檜佐木先輩っ!?」

教室の中に響く低い声
開けっ放しの扉から入ってきた修兵さんに、周りは驚いていた。
ああ、出来れば来ないで欲しかった。下らない事に修兵さんを巻き込みたくはないのに。
眉間に皺を寄せた修兵さんは、僕の傍まで来ると薄く笑った。僕を安心させる為に浮かべたその笑みも、何処と無く固い。
……ああ、怒ってる
僕の頭を撫でてから、修兵さんは教室内を見渡した

「こいつは俺の知り合いだ。文句があんなら俺んトコ来いよ」

普段より一段階低い声。此方からは見えないが、きっとその鋭い目で周りの生徒達を睨んでいるんだろう

「ひぃ……っ!」

誰かの悲鳴と共に、空気が重くなった…気がする。
修兵さんの霊圧は僕には向けられていないから、いまいち判らないけど。
あちこちから怯える声が聞こえる。腰を抜かした者も居る。これは明らかに隣の人が原因だろう

『……修兵さん、そんなに霊圧上げたら…この人達、きぜつする』

「良いんだよ。一回痛い目に遭わせときゃ、もうあんな事言えなくなるだろ」

『……それ…よくない』

それあんたの評判悪くなるからね。優等生がこんな事しちゃ駄目でしょ。
無言で袖をぐいぐい引っ張れば、漸く修兵さんが霊圧を元通りに戻した。
未だ不機嫌そうな表情を浮かべているこの人怖い。どんだけ嫌がらせしたかったんだよあんた。これ以上したら絶対騒ぎになるから。先生来たら厄介だから。
それらを口にする事が出来ず悶々としていれば、修兵さんにわしゃわしゃと髪を掻き混ぜられた。
ちょっ、髪ぐしゃぐしゃになるっ!
手をばしばし叩けば漸くぐしゃぐしゃ攻撃は収まった。
この野郎と睨めば、修兵さんはへらりと笑う

「俺を呼ばなかった罰だ」

『………』










クラスの方は脅されました











(…修兵さん、授業は?)

(……やっべ!じゃあまた後でな!)

(ん。行ってらっしゃい)






執筆訂正
20140324