蘆之院家
鏡に映る姿は幻想
伸ばしたこの手は空を掴む
偽りは己を嗤い
目覚めてはまた繰り返す
門番に中へ通され蘆之院家の敷地に入る。目に入ったのは馬鹿でかい屋敷。朽木家程ではないがなかなかに立派なものだ
「で、どう警備するだとか具体的な内容は聞いてんのか?」
そう訊ねれば修兵に化けた独月はんーと唸りながら頬を掻いた
『それが全然判んねぇんすよ。手紙にも書いてなかったし』
「何だそりゃ」
予想外の答えに眉を寄せるが独月は困った様に苦笑したまま。その表情は勿論雰囲気までも似てんのは、こいつがそれだけ修兵の傍に居たって事なんだろう。いや、似てるを通り越して本人そのものだ
じっと見つめる俺を変に思ったのか、独月が俺の名を呼びながら首を傾げる
「テメーがあんまりにも修兵に似てっから驚いただけだ」
そう言うと独月は目を見開いて、それからくつくつと喉の奥で笑った。その笑い方まで忠実に再現される。これじゃそのうち独月か修兵か見分け付かなくなるな
『そりゃ百年近く隣に居れば自然と真似出来る様にもなりますよ』
「そういうもんか?」
『そういうもんです』
そう言ってにっと笑った修兵の笑顔は何処か寂しげで。
『何時になったら帰ってきて、俺に本当の事教えてくれるんだか』
背伸びしながら何気なく言われた言葉に胸が苦しくなった
本当の事、って事は独月は二番隊での修行が嘘だと気付いてるのか
「………」
修兵はまだ二番隊には行ってねぇ。最近漸く虚の力を上手く扱える様になったと平子達から連絡があった
あいつが虚の力を完全に使える様になってから、二番隊に行かせるらしい。だから、二番隊での修行は半分嘘で半分本当だ
その事実を知っているのは二番隊隊長である砕蜂と、仮面の軍勢、それから浦原喜助に四楓院夜一のみ。
独月は知らない。
あいつに心配をさせたくないから、と修兵がさっきのにそっくりな寂しげな笑顔で俺達にそう言ったから
『帰って来ねぇからアンタに化けちまいました、なんて…笑えねぇ……』
独月は小さくそう呟いた
「ようこそお越し下さいました」
『歓迎傷み入る』
通された広間で軽く頭を下げて、挨拶をする。ふくよかな男性に柔らかい雰囲気の女性。
この二人が依頼者か?
「お頼みしたいのは、娘の事なのです」
『娘さん、か』
二人は頷いた。
話を聞けばどうやら二人の娘が最近怪しい奴等に付け狙われているとの事。此処何日も怪しい物音や危険物の投げ込み、果ては暗殺未遂などが続いている。故に護廷十四隊に助けを求めた、と
『一つ質問があるんだが』
「はい、何でしょうか」
『何故九番隊の指名を?他の隊でも俺達とは引けを取らない実力だ。わざわざ俺達を指名した理由が知りたい』
「隊長格と女不要って意味もな」
拳西さんの言葉に頷けば二人は表情を曇らせた。何だろう、それなりに訳あり?
「お二人も知っての通り蘆之院は上流貴族。故にこの様な醜態は外には晒せぬのです」
『……醜態?』
狙われる事が醜態だと言うのは可笑しい。恐らくその事を指している訳ではないだろう。
貴族がやたらと隠したがる事、例えば………
『……御家騒動、ってヤツか?』
「「!」」
ぽつりと呟くとぎょっとした顔で見られた。うわ、当たり?
前にあった霞大路家の事件を思い出してただけなんだけど
「当たりみてぇだな」
拳西さんが不機嫌そうに呟いた。や、その怖い顔で二人を威嚇しないで頂きたい
「じ、実は────」
『……はぁ…』
「随分厄介な事になっちまったな」
『おう…』
後頭部に引っ付いている修ちゃんの言葉にうなだれる。
この警備任務面倒臭い。やっぱ引き受けたのが間違いだったか。
隊長格のみを呼んだのは、出来るだけ少ない人数で護衛に回って欲しかったから。女性隊士不要と言った訳は息子の重尚殿が一目惚れでもしたら困るから。因みに娘の春霞殿は男性恐怖症な分安心出来るとか
というかこの理由は最早只の馬鹿。そんな理由の所為で僕は修兵さんに化けないといけなかったのかと無性にイライラする
『……はぁ…』
「働け隊長」
『へいへい』
後頭部のぬいぐるみの言葉に従い渋々腰を上げる。
てかこの見た目で後頭部にぬいぐるみを引っ付けてるっていうのは如何なものか
変じゃないよね?まぁ拳西さんが引っ付けてるよりはマシか
縁側で目の前の庭を見渡して、溜息
此処とは反対側の庭を張っている拳西さんから特に連絡もないし、此方でも何もない。
『引き受けたのは失敗だったか…』
怪しい者を捕まえるまでという期限ナシの面倒な任務。長い。そして怪しい奴等も一向に姿を見せない。ほんと面倒臭い。何でこんなもんをわざわざうちの隊に頼むんだか
「あ、あの………」
『あ?』
掛けられた声に振り向くと、其処には大人しそうな女の子が立っていた
あ、やばい普通に印象悪い返事しちゃった気がする。というか修兵さんの真似って楽過ぎて困る。自然体で修兵さんになってしまう
内心おろおろしつつ彼女を見ていればぺこりと頭を下げられた。
「あの、隊長様…宜しければこれどうぞ」
そう言って差し出されたのは包み。えーと、何だろうこれ
聞けばおむすびですと小さな声で答えられた
『ありがとな』
笑顔で受け取れば柔らかい笑みを浮かべた。何か頬が赤いのが気になるが大丈夫かこの人。
首を傾げれば更に顔が赤くなった。え、ほんと大丈夫?
「あ、あ、あの………っ」
『何だ?』
「な、なな、な」
『…落ち着け』
取り敢えず片手を前に出して待ったのポーズをすれば、春霞殿はこくこくと頷いた。振り過ぎて首振り人形みたいになってるんですけど。僕は何かしてしまったんだろうか
「な、なななまっ」
『生?』
や、生ではないだろう。人の顔見ながら生って意味が判らないにも程がある。なま、なま……ああ
『もしかして、名前か?』
「は……はいっ!」
聞いてみれば見事にビンゴ。僕の名前が聞きたかったらしい
『俺は檜佐木修兵。どうぞお見知り置きを、お姫サマ』
そう言ってにっと笑えば、春霞殿はみるみる内に真っ赤になった。さっき赤み引いて来たのに
『おい、大丈夫か?』
「〜〜〜〜っ!!」
修兵さんの胸までしかない春霞殿の顔を覗き込めば、彼女は目を見開いた。うわ、マジでトマトみたい。
具合悪いなら最初から言えば良いのに
『部屋まで帰れるか?』
「はっ、はいいいいっ!!」
『え、ちょっ』
声を掛けようとした瞬間猛ダッシュ。何じゃありゃ、そんなにキツかったのか?
『ま、良いか……』
「お前馬鹿だろ……」
『え、何で』
今まで黙っていた修ちゃんがぼそりと呟いた。聞き返したものの返事はなし。解せぬ
蘆之院家の護衛
(どうしたんだろうなあの子(修兵さんの真似しただけなのに))
((こいつタラシか))
伸ばしたこの手は空を掴む
偽りは己を嗤い
目覚めてはまた繰り返す
門番に中へ通され蘆之院家の敷地に入る。目に入ったのは馬鹿でかい屋敷。朽木家程ではないがなかなかに立派なものだ
「で、どう警備するだとか具体的な内容は聞いてんのか?」
そう訊ねれば修兵に化けた独月はんーと唸りながら頬を掻いた
『それが全然判んねぇんすよ。手紙にも書いてなかったし』
「何だそりゃ」
予想外の答えに眉を寄せるが独月は困った様に苦笑したまま。その表情は勿論雰囲気までも似てんのは、こいつがそれだけ修兵の傍に居たって事なんだろう。いや、似てるを通り越して本人そのものだ
じっと見つめる俺を変に思ったのか、独月が俺の名を呼びながら首を傾げる
「テメーがあんまりにも修兵に似てっから驚いただけだ」
そう言うと独月は目を見開いて、それからくつくつと喉の奥で笑った。その笑い方まで忠実に再現される。これじゃそのうち独月か修兵か見分け付かなくなるな
『そりゃ百年近く隣に居れば自然と真似出来る様にもなりますよ』
「そういうもんか?」
『そういうもんです』
そう言ってにっと笑った修兵の笑顔は何処か寂しげで。
『何時になったら帰ってきて、俺に本当の事教えてくれるんだか』
背伸びしながら何気なく言われた言葉に胸が苦しくなった
本当の事、って事は独月は二番隊での修行が嘘だと気付いてるのか
「………」
修兵はまだ二番隊には行ってねぇ。最近漸く虚の力を上手く扱える様になったと平子達から連絡があった
あいつが虚の力を完全に使える様になってから、二番隊に行かせるらしい。だから、二番隊での修行は半分嘘で半分本当だ
その事実を知っているのは二番隊隊長である砕蜂と、仮面の軍勢、それから浦原喜助に四楓院夜一のみ。
独月は知らない。
あいつに心配をさせたくないから、と修兵がさっきのにそっくりな寂しげな笑顔で俺達にそう言ったから
『帰って来ねぇからアンタに化けちまいました、なんて…笑えねぇ……』
独月は小さくそう呟いた
「ようこそお越し下さいました」
『歓迎傷み入る』
通された広間で軽く頭を下げて、挨拶をする。ふくよかな男性に柔らかい雰囲気の女性。
この二人が依頼者か?
「お頼みしたいのは、娘の事なのです」
『娘さん、か』
二人は頷いた。
話を聞けばどうやら二人の娘が最近怪しい奴等に付け狙われているとの事。此処何日も怪しい物音や危険物の投げ込み、果ては暗殺未遂などが続いている。故に護廷十四隊に助けを求めた、と
『一つ質問があるんだが』
「はい、何でしょうか」
『何故九番隊の指名を?他の隊でも俺達とは引けを取らない実力だ。わざわざ俺達を指名した理由が知りたい』
「隊長格と女不要って意味もな」
拳西さんの言葉に頷けば二人は表情を曇らせた。何だろう、それなりに訳あり?
「お二人も知っての通り蘆之院は上流貴族。故にこの様な醜態は外には晒せぬのです」
『……醜態?』
狙われる事が醜態だと言うのは可笑しい。恐らくその事を指している訳ではないだろう。
貴族がやたらと隠したがる事、例えば………
『……御家騒動、ってヤツか?』
「「!」」
ぽつりと呟くとぎょっとした顔で見られた。うわ、当たり?
前にあった霞大路家の事件を思い出してただけなんだけど
「当たりみてぇだな」
拳西さんが不機嫌そうに呟いた。や、その怖い顔で二人を威嚇しないで頂きたい
「じ、実は────」
『……はぁ…』
「随分厄介な事になっちまったな」
『おう…』
後頭部に引っ付いている修ちゃんの言葉にうなだれる。
この警備任務面倒臭い。やっぱ引き受けたのが間違いだったか。
隊長格のみを呼んだのは、出来るだけ少ない人数で護衛に回って欲しかったから。女性隊士不要と言った訳は息子の重尚殿が一目惚れでもしたら困るから。因みに娘の春霞殿は男性恐怖症な分安心出来るとか
というかこの理由は最早只の馬鹿。そんな理由の所為で僕は修兵さんに化けないといけなかったのかと無性にイライラする
『……はぁ…』
「働け隊長」
『へいへい』
後頭部のぬいぐるみの言葉に従い渋々腰を上げる。
てかこの見た目で後頭部にぬいぐるみを引っ付けてるっていうのは如何なものか
変じゃないよね?まぁ拳西さんが引っ付けてるよりはマシか
縁側で目の前の庭を見渡して、溜息
此処とは反対側の庭を張っている拳西さんから特に連絡もないし、此方でも何もない。
『引き受けたのは失敗だったか…』
怪しい者を捕まえるまでという期限ナシの面倒な任務。長い。そして怪しい奴等も一向に姿を見せない。ほんと面倒臭い。何でこんなもんをわざわざうちの隊に頼むんだか
「あ、あの………」
『あ?』
掛けられた声に振り向くと、其処には大人しそうな女の子が立っていた
あ、やばい普通に印象悪い返事しちゃった気がする。というか修兵さんの真似って楽過ぎて困る。自然体で修兵さんになってしまう
内心おろおろしつつ彼女を見ていればぺこりと頭を下げられた。
「あの、隊長様…宜しければこれどうぞ」
そう言って差し出されたのは包み。えーと、何だろうこれ
聞けばおむすびですと小さな声で答えられた
『ありがとな』
笑顔で受け取れば柔らかい笑みを浮かべた。何か頬が赤いのが気になるが大丈夫かこの人。
首を傾げれば更に顔が赤くなった。え、ほんと大丈夫?
「あ、あ、あの………っ」
『何だ?』
「な、なな、な」
『…落ち着け』
取り敢えず片手を前に出して待ったのポーズをすれば、春霞殿はこくこくと頷いた。振り過ぎて首振り人形みたいになってるんですけど。僕は何かしてしまったんだろうか
「な、なななまっ」
『生?』
や、生ではないだろう。人の顔見ながら生って意味が判らないにも程がある。なま、なま……ああ
『もしかして、名前か?』
「は……はいっ!」
聞いてみれば見事にビンゴ。僕の名前が聞きたかったらしい
『俺は檜佐木修兵。どうぞお見知り置きを、お姫サマ』
そう言ってにっと笑えば、春霞殿はみるみる内に真っ赤になった。さっき赤み引いて来たのに
『おい、大丈夫か?』
「〜〜〜〜っ!!」
修兵さんの胸までしかない春霞殿の顔を覗き込めば、彼女は目を見開いた。うわ、マジでトマトみたい。
具合悪いなら最初から言えば良いのに
『部屋まで帰れるか?』
「はっ、はいいいいっ!!」
『え、ちょっ』
声を掛けようとした瞬間猛ダッシュ。何じゃありゃ、そんなにキツかったのか?
『ま、良いか……』
「お前馬鹿だろ……」
『え、何で』
今まで黙っていた修ちゃんがぼそりと呟いた。聞き返したものの返事はなし。解せぬ
蘆之院家の護衛
(どうしたんだろうなあの子(修兵さんの真似しただけなのに))
((こいつタラシか))