恩返し
修兵さんが修行に出て約十七ヶ月。
ああ、黒崎一護の能力消失からも同じだけ経っているのか。
『此方はそれなりに平和です…っと』
そう打ち込み、電子書簡を送る。相手は現世死神代行組の井上織姫。以前彼女が卯ノ花隊長から伝令神機を貰った時にアドレスを交換していたのだ。それからちょくちょく電子書簡が送られてくる。僕としては彼女達現世組の様子も判るし暇潰しにもなるから大助かりだ
基本的には暇だしね…瀞霊廷通信の締切さえなければ。
ずっと向かっていた机から離れ伸びをする。暇になるのが嫌でつい隊士達の書類も引き受けてしまっているが、それでも終業時間までは程遠い。今日はもう瀞霊廷通信の原稿チェックも終わったし、特に急いでする事もない
さてこれから何をしようか、そう考えた時机の上に置いたままだった伝令神機が震えだした
『ん…?』
ランプの点滅する色は青。思わず目を見開いた。それはずっと光る事のなかった色。たった一人しか登録していない色────
はっとして未だ振動を続ける伝令神機に手を伸ばす。受信した電子書簡を開いた
【久し振りだな、元気にしてるか?俺も後少しで修行が終わりそうだ。もう直ぐ帰れるからそれまでは良い子にしてろよ?あと無理はしない様に。
話は変わるがこの話は結構重大なヤツだ
隊長達にゃバレねぇ様にこっそり回してるみてぇだし、お前も回りに気を付けて見るんだぜ? 檜佐木修兵《転送:朽木ルキアです》】
『………これは…』
電子書簡の本文に目を通し、驚く。
────浦原喜助が力を失った黒崎一護に死神の霊力を取り戻させる術を完成させた。それは特殊な刀に複数名で霊圧を込め、それで黒崎を貫き力を注ぎ込む事で再び死神化させる────
確かにそう書いてある。そして勿論、掟に背く行為だという事も
『掟に背く、か…』
小さく呟き、さてこれは誰かに回した方が良いのかと考える。所々で聞こえてくる話し声。どうやら殆どの隊士達は知っている様だし、今更僕が回す必要もないだろう。
僕は隊首室を出て、執務室に向かった。
此方を見てくる隊士達に向け、口を開く
『────今日は、天気が良いから終業時刻を早めよう』
「独」
後ろからぽんと頭を叩かれた。僅かに振り向けば怠そうな男
『何だぜんざい』
「財前や」
面倒そうにそう言った財前が隣に並ぶ。そういえばこいつと話すのは久し振りな気がする。それも僕が殆ど隊首室もしくは編集長室から出なかったっていうのもあるんだが
「お前も行くんやろ?」
『ああ』
「さよか」
それきり財前は黙りこんだ。まぁ僕から話したい事も特にはないし別に良いんだが。ふと見れば左手が副官章に触れていた。そろそろこの癖も治さなくては。何時までもこの腕に着いている訳じゃないし
「まだ帰って来ぉへんのか?」
『もう少しだとは言われた』
「ほーん」
互いに顔を見ずに話しながら、一番隊の隊舎前に着く。僕はそのまま門を潜った。
一番隊隊舎、隊首会議場。
浦原さんが持ってきた刀の説明をして、それを聞いた総隊長がなるほどと小さく呟いた。
「…事情は相判った」
そう言った総隊長が隊長達を見渡す。
「先刻、涅、浮竹、両隊長より、初代死神代行が黒崎一護に接触したとの報告を受けた」
「初代死神代行…銀城空吾か!」
日番谷隊長がそう言った途端に場の空気がぴんと張り詰めた。
「黒崎一護が、漸くエサとしての役割を果たしたという事だネ……」
そう言った涅隊長の目は浮竹隊長に向けられていた。浮竹隊長は何も言わず、只悲しそうな目をして俯いていた
「銀城空吾が接触してきた以上、最早一刻も無駄には出来まい…その刀を持って寄れ!浦原喜助!」
「総隊長、それでは…!」
卯ノ花隊長が目を見開いた。他の隊長達も驚いた顔で総隊長に視線を向ける
「……形はどうあれ、我等は黒崎一護に救われた。
今度はその黒崎一護を、我等が救う番じゃ。縦え仕来たりに背こうと、此処で恩義を踏み躙れば、護廷十四隊永代の恥となろう」
『総隊長……』
総隊長が一歩前に足を踏み出した。
そして僕達隊長格を見渡し、高らかに言った
「総隊長命令である!護廷十四隊全隊長・副隊長は、全てこの刀に霊圧を込めよ!」
威厳に満ち溢れた総隊長の声が静まり返った会議場に響き渡る。
────ああ、総隊長は変わられたのか
「……儂の命を待たずして、既に数多くの死神が霊圧を込めたとの報告を受けておるが…此度に限り、罪には問うまい」
その言葉の後に聞こえた複数の安堵の息。隣の狛村隊長も強張っていた表情を緩めた。すると聞こえてきたぎりぎりという音。え、何?
音のする方を見れば涅隊長が恐ろしい表情で浦原さんを睨み付けていた。もしかして歯軋りの音?あの顔かなり怖いんだが
「良いか、浦原喜助!必ずや、黒崎一護に死神の力を取り戻させよ!」
浦原さんは顔を上げ、真っ直ぐに総隊長を見た
「はい、必ず……!」
「じゃあ桜花サン、お願いします」
『はい』
静かに刀を握る。それだけでどれだけ大量の死神達が霊圧を込めたのかが判った。傍に寄っただけでも凄かったのに、触れれば更に自分の予想を上回る数の協力者が居た事を知る
……あ、修兵さんの霊圧だ
『凄い男だな…黒崎一護』
最初は只海燕さんに似ているだけだと思っていた。だからルキアが何かとあの男を庇い、手を貸すんだと。でもそれは違った
あの男はルキアだけには留まらず総隊長までも変えた。尸魂界に生きる死神全てを
『────はっ!』
深呼吸して、一気に霊圧を込める。
尸魂界を救ってくれた彼に恩を返す為に
In order to reward him even a little
(あいつはきっと、自分も変えられたって事には気付いてねぇんだろうな…)
(ふん…修行を再開するぞ)
(お手柔らかに、砕蜂隊長)
ああ、黒崎一護の能力消失からも同じだけ経っているのか。
『此方はそれなりに平和です…っと』
そう打ち込み、電子書簡を送る。相手は現世死神代行組の井上織姫。以前彼女が卯ノ花隊長から伝令神機を貰った時にアドレスを交換していたのだ。それからちょくちょく電子書簡が送られてくる。僕としては彼女達現世組の様子も判るし暇潰しにもなるから大助かりだ
基本的には暇だしね…瀞霊廷通信の締切さえなければ。
ずっと向かっていた机から離れ伸びをする。暇になるのが嫌でつい隊士達の書類も引き受けてしまっているが、それでも終業時間までは程遠い。今日はもう瀞霊廷通信の原稿チェックも終わったし、特に急いでする事もない
さてこれから何をしようか、そう考えた時机の上に置いたままだった伝令神機が震えだした
『ん…?』
ランプの点滅する色は青。思わず目を見開いた。それはずっと光る事のなかった色。たった一人しか登録していない色────
はっとして未だ振動を続ける伝令神機に手を伸ばす。受信した電子書簡を開いた
【久し振りだな、元気にしてるか?俺も後少しで修行が終わりそうだ。もう直ぐ帰れるからそれまでは良い子にしてろよ?あと無理はしない様に。
話は変わるがこの話は結構重大なヤツだ
隊長達にゃバレねぇ様にこっそり回してるみてぇだし、お前も回りに気を付けて見るんだぜ? 檜佐木修兵《転送:朽木ルキアです》】
『………これは…』
電子書簡の本文に目を通し、驚く。
────浦原喜助が力を失った黒崎一護に死神の霊力を取り戻させる術を完成させた。それは特殊な刀に複数名で霊圧を込め、それで黒崎を貫き力を注ぎ込む事で再び死神化させる────
確かにそう書いてある。そして勿論、掟に背く行為だという事も
『掟に背く、か…』
小さく呟き、さてこれは誰かに回した方が良いのかと考える。所々で聞こえてくる話し声。どうやら殆どの隊士達は知っている様だし、今更僕が回す必要もないだろう。
僕は隊首室を出て、執務室に向かった。
此方を見てくる隊士達に向け、口を開く
『────今日は、天気が良いから終業時刻を早めよう』
「独」
後ろからぽんと頭を叩かれた。僅かに振り向けば怠そうな男
『何だぜんざい』
「財前や」
面倒そうにそう言った財前が隣に並ぶ。そういえばこいつと話すのは久し振りな気がする。それも僕が殆ど隊首室もしくは編集長室から出なかったっていうのもあるんだが
「お前も行くんやろ?」
『ああ』
「さよか」
それきり財前は黙りこんだ。まぁ僕から話したい事も特にはないし別に良いんだが。ふと見れば左手が副官章に触れていた。そろそろこの癖も治さなくては。何時までもこの腕に着いている訳じゃないし
「まだ帰って来ぉへんのか?」
『もう少しだとは言われた』
「ほーん」
互いに顔を見ずに話しながら、一番隊の隊舎前に着く。僕はそのまま門を潜った。
一番隊隊舎、隊首会議場。
浦原さんが持ってきた刀の説明をして、それを聞いた総隊長がなるほどと小さく呟いた。
「…事情は相判った」
そう言った総隊長が隊長達を見渡す。
「先刻、涅、浮竹、両隊長より、初代死神代行が黒崎一護に接触したとの報告を受けた」
「初代死神代行…銀城空吾か!」
日番谷隊長がそう言った途端に場の空気がぴんと張り詰めた。
「黒崎一護が、漸くエサとしての役割を果たしたという事だネ……」
そう言った涅隊長の目は浮竹隊長に向けられていた。浮竹隊長は何も言わず、只悲しそうな目をして俯いていた
「銀城空吾が接触してきた以上、最早一刻も無駄には出来まい…その刀を持って寄れ!浦原喜助!」
「総隊長、それでは…!」
卯ノ花隊長が目を見開いた。他の隊長達も驚いた顔で総隊長に視線を向ける
「……形はどうあれ、我等は黒崎一護に救われた。
今度はその黒崎一護を、我等が救う番じゃ。縦え仕来たりに背こうと、此処で恩義を踏み躙れば、護廷十四隊永代の恥となろう」
『総隊長……』
総隊長が一歩前に足を踏み出した。
そして僕達隊長格を見渡し、高らかに言った
「総隊長命令である!護廷十四隊全隊長・副隊長は、全てこの刀に霊圧を込めよ!」
威厳に満ち溢れた総隊長の声が静まり返った会議場に響き渡る。
────ああ、総隊長は変わられたのか
「……儂の命を待たずして、既に数多くの死神が霊圧を込めたとの報告を受けておるが…此度に限り、罪には問うまい」
その言葉の後に聞こえた複数の安堵の息。隣の狛村隊長も強張っていた表情を緩めた。すると聞こえてきたぎりぎりという音。え、何?
音のする方を見れば涅隊長が恐ろしい表情で浦原さんを睨み付けていた。もしかして歯軋りの音?あの顔かなり怖いんだが
「良いか、浦原喜助!必ずや、黒崎一護に死神の力を取り戻させよ!」
浦原さんは顔を上げ、真っ直ぐに総隊長を見た
「はい、必ず……!」
「じゃあ桜花サン、お願いします」
『はい』
静かに刀を握る。それだけでどれだけ大量の死神達が霊圧を込めたのかが判った。傍に寄っただけでも凄かったのに、触れれば更に自分の予想を上回る数の協力者が居た事を知る
……あ、修兵さんの霊圧だ
『凄い男だな…黒崎一護』
最初は只海燕さんに似ているだけだと思っていた。だからルキアが何かとあの男を庇い、手を貸すんだと。でもそれは違った
あの男はルキアだけには留まらず総隊長までも変えた。尸魂界に生きる死神全てを
『────はっ!』
深呼吸して、一気に霊圧を込める。
尸魂界を救ってくれた彼に恩を返す為に
In order to reward him even a little
(あいつはきっと、自分も変えられたって事には気付いてねぇんだろうな…)
(ふん…修行を再開するぞ)
(お手柔らかに、砕蜂隊長)