急ぎやれ急ぎやれ
この道は
こんこん狐の出る道じゃ 出る道じゃ
さぁさ急いで通りゃんせ
おお こわ こわや 狐はこわや
こんこん狐が出りやこわや

急ぎやれ急ぎやれ
この藪は
日暮にゃ狐の出る藪じゃ 出る藪じゃ
さぁさ日暮じゃ急ぎやんせ
おお こわ こわや 日暮はこわや
こんこん狐が出りやこわや

急ぎやれ急ぎやれ
この橋は
雨夜にゃ狐の出る橋じゃ 出る橋じゃ
さぁさ急いで渡りやんせ
おお こわ こわや 狐はこわや
こんこん狐が出りやこわや















「―――っ!!!?」

朽木が歌った瞬間、周りがぐにゃりと歪んだ。
二番隊隊舎前に居た筈なのに、目の前にはずらりと並んだ赤い鳥居。一体何がどうなったんだ

「何処だ此処…」

「判らぬ…だが微かに虚の気配がする」

それぞれ斬魄刀を抜いて構える。鳥居の奥から虚の気配がしているのは間違いねぇ。
恐らく独月が居るとすれば其処。確証はねぇが漠然とそう思う。
今のところ虚が出て来る兆しはねぇ。
行くなら、今だ

「行くぜてめぇら!!」

「おう!」

「はい!」










鳥居の聳え立つ中に飛び込んで暫く。幾ら走っても景色が変わらねぇ事に焦りを覚える。彼方も此方も鳥居だらけ。おまけに霧まで出てきやがった。虚の気配も今じゃさっぱり掴めねぇ
これはまさかとは思うが…

「迷っちまったか…?」

辺りを見渡し、ふと着いてきていた筈の二人が見当たらない事に気付く

「……黒崎?朽木?」

呼び掛けるが返事はねぇ。最悪だ。迷った上にはぐれたのか

「しゃーねぇな…」

あいつらなら多分大丈夫だろ。自己完結をして再び走り出す。黒崎は隊長並みの強さだし朽木も副隊長だ。 自分の身は自分で護れるだろ







「檜佐木殿とはぐれてしまったか…」

「みてぇだな」

ルキアと背中合わせに立って斬月を構える。
霧が出て来たと思って周りを見た時、檜佐木さんは居なくなっていた。俺が正面から目を離したのは数秒。その短い間に何処に行ったんだか

「来るぞ、一護!」

「おう!」








「………っ」

ひたすらに霧の中を走り続ける。
何時の間にか鳥居は御札がぎっしりと貼り付けられたものに変わっていた。
幾つも御札だらけの鳥居を潜って、漸く見えてきたのは小さな祠。近付いて見てみれば、祀られていたのは灰色の珠。

「何だこりゃ…」



――修兵さんの目の色に似てる



「っ!?」

手に取ろうとした瞬間、脳に響いた声。
今の声は間違いねぇ。確かにあいつの声だった

「独月……!」

名を口にした瞬間、灰色の珠が輝きを放った












――急ぎやれ急ぎやれ この道は



良く知る声があの唄を歌っている。
桜の咲き乱れる中、扇を持ったあいつがくるくると舞っている。
まるで何かを喚ぶ様に。くるくる、くるくると

「独月っ!!」

『――なぁに?』

名を呼ぶと随分近くから返事があった。依然として舞っているあいつじゃねぇ。なら、今俺の背後に立っているこいつは――

『あーあ、振り向いちゃっタ』

真っ白な狐の面が、嗤った
















「っ何だ!?」

急に来た衝撃波。私の身体は耐えきれず宙に舞う。
木にぶつかる寸前、身体を温もりが包んだ

「一護!」

「掴まってろ!」

卍解した一護が私を抱えて鳥居の中を飛ぶ様に駆け抜ける。目指すは衝撃波の発生源。
もしかしたらその場所に私達の探している桜花独月が居るのかも知れない



















「てめぇは、誰だ」

ぎりぎりと音を立てる刃。仮面の奥の赤い目が爛々と光る

『あんたとは一度会った事あるだろ?檜佐木修兵』

「………独月の中の虚か」

『正解』

愉しそうな声で虚がくつくつと嗤った。
両手にぐっと力を入れて虚を弾き飛ばす。虚は宙でくるりと一回転して着地した

「てめぇはあの時俺が倒した筈だ。なのに何故また出て来やがった」

『それは此処がそういう場所だから』

そう言って虚はゆっくりと歩き出した。灯篭の前に立つと、懐から何かを引き出す。白い長方形の紙に赤色の文字。御札、か?
複数枚のそれを灯篭の火に投げ込む。御札を焼く火の色が赤から黒へと変わった

『"此処"は死者が再び身体を得る世界』

詠う様に虚が言葉を口にする。

『ほら…こんな風に』

すっと白く細い指が差された先に――

「……東仙、隊長…」

――嘗ての上司が、立っていた



さぁ、惑え




(…………っ!!?)

(どうした一護!?)

(お…おふくろ…)