『………良し』

右肩に着けた鎧の着け心地を確かめる。腕を動かしても支障はない。軽くて頑丈だし

「着け心地は?」

『良い感じ』

青い鱗の様なもので覆われた鎧は特殊な造りになっているらしい。霊圧を込めた攻撃なら吸収出来るとか。そしてそれをそのまま反射する事も出来るし、僕の力に変換する事も出来る。うん、ほんと便利。

『ありがとう直哉さん』

「礼には及ばん」

直哉さんは小さなケースの中の生き物に餌をあげていた。何だか見た事ない不思議な生き物なんだが何だこれ。じっと見ていると此方を見た生き物がギャウと鳴いた

「それはケルベロスだ。召喚に失敗した所為で本来の大きさではないが」

『へー……』

因みに本来の大きさは現世のライオンぐらいだとか。うん、小さくて良かった。
ケルベロスは小粒のドッグフードをもっさもっさ食べている。え、悪魔ってドッグフードで飼えんの?

「相変わらず意味判んねぇ実験してんな…」

修ちゃんがうげっとした表情。そんな顔されても困るんだが。てか嫌なら修兵さんとお留守番しとけば良かったのに。そう言うと修ちゃんはお前を一人に出来るか、と。え、そんなに信用ない?

「その肩当ての鱗はセイリュウという悪魔のものだ。何かあればまた持ってこい」

『判った』

礼を言い頼まれていた現世のゲーム機を渡す。
何に使うのかは知らないけどアレで良かったんだろうか。受け取った直哉さんは満足そう。表情から推測するにアレで良かったらしい

「これで研究が捗る」

『それは良かった』

「良いのかよ……」

修ちゃんの頭を撫でて部屋を出る。
そろそろ戻って仕事をしないと残業になってしまう。別に一人でやる分には良いが修兵さんや修ちゃんまで残ってしまうから好ましくない。
帰れって言っても帰らないもんなあの二人。疲れてるだろうから早く休んで欲しいのに

『ただいまー』

「お帰りー」

隊首室の扉を開ければ修兵さんが此方にひらひらと手を振った。それに手を挙げて返し執務机に向かう。そこに積んであった筈の書類の少なさに首を傾げた

『……檜佐木さん』

「んー?」

『…此処にあった書類は?』

「さぁ?知らねぇな」

そう言った修兵さんの机の上には書類の山。新たに積み重ねていくあたりあれはもう終わったものだろう。たった一時間休憩に入っただけでこの有り様ですか

『僕の机の書類はしなくて良いって言わなかったっけ、檜佐木さん』

「そんな事言ってたっけか?」

書類に目を向けたまま修兵さんがさらりと返す。堂々とシラを切るつもりかこの野郎。椅子から立ち上がり、修兵さんの机の前に行く。まだ未処理の書類の束を引ったくり、顔を上げた修兵さんの額を指先で弾いた

「って……何すんだよ」

『勝手に僕の仕事までやった罰』

隊士には負担にならない量しかやらせない様にしているのに、何で副隊長が隊長の分までやっているのか。僕に楽をさせてどうする。そう言うと眉を寄せた修兵さんが口を開いた

「何で副隊長に楽させようとしてんだよ」

『や、何で隊長に楽させようとしてんの』

隊長は忙しくて当然なのに。そう言うと修兵さんの眉間の皺が増えた。うわ悪人面

「お前は仕事し過ぎ。もう少し他に回せ。
大体こんなのはヒラにやらせれば良いだろ」

ひらひらと処理済みの書類を振る。
でもこれ以上は只でさえ忙しい隊士達を追い詰める事になるから無理だ。九番隊は瀞霊廷通信に虚退治に書類整理に追われる。くたくたの隊士達に過労死はさせたくない
そう言えば修兵さんは溜息を吐いた

「なら俺に回せ、良いな?」

『えー…』

「返事」

『………はい』

「良い子だ」

微笑んだ修兵さんに頭を撫でられる。何か修兵さんが隊長な気がしてきた。早く卍解会得してくれないかな。絶対修兵さんの方が隊長に相応しいよ
じっと見ていると修兵さんが首を傾げた。どうかしたのかと視線を辿れば右肩の鎧。ああ、これどうしたんだって事ね

『直哉さんに作って貰った』

「ふぅん……」

ちょんちょん指先でつつく修兵さんが何か可愛い。末期か僕。こんな厳つい人が可愛いって
せめて格好良いの方が当て嵌まるだろうに

「……今失礼な事考えなかったか?」

可愛い、とか。その一言に肩が跳ねた。ちらりと修兵さんを見ればじとーっとした目で僕を睨んでいる。ごめん可愛いって考えてました

「俺の何処が可愛いんだか」

首筋に擦り付いてきた修兵さんの頭を撫でる。
それだよ。そういう行動が可愛いんだよこの顔面卑猥様め。くそ、格好良いのに可愛いってどんなハイスペックだあんたは

「そういや新しいの渡してなかったな」

『?』

僕の首を指先でなぞった修兵さんが言った言葉に疑問符が浮かぶ。そして自分のチョーカーは蘆之院家の事件の時に使ってしまった事を思い出す。多分修兵さんが言っているのはそれの事だ

「鈴は持ってるか?」

『ん』

頷いて鈴を取り出す。今でも鈴は懐に入れていた。僕と同じ様に懐に手を入れて修兵さんが何かを取り出す。握られていたそれは修兵さんが着けている物と同じチョーカー。受け取った鈴をチョーカーに付けると修兵さんはそれを僕の首に巻いた。
もう一つを腕に巻く

「ん、出来た」

『ありがとう』

「俺とお揃いだ。使ったらまた新しいのやるからな」

鈴を指先でつついた修兵さんが笑う。うん、多分使わないと思う。勿体無いし
せめて次使う時は阿近さんに作って貰った攻撃専用のヤツを使おう。確か猛毒を仕込んである筈

「これで完全にちびさぎだな」

『……でかひさぎめ』

────にっと笑った修兵さんは格好良かった



お揃い



(そういやこれには空気に溶ける神経毒仕込んであるから扱いには注意しろよ)

(うわ、普通に危な。因みに修兵さんのは?)

(俺?俺のはこれが神経毒で、此方が一滴でも皮膚に付いたらぐずぐずに溶かしちまう溶解液、んで此方が吸ったら脳細胞を破壊する大気中に撒くタイプの猛毒)

(……………)

(ん?どうした?)

(…前みたいに爆竹とか生易しい物じゃなくなってる(修兵さんが生物兵器と化してる……))

(敵に手加減してやる必要はねぇからな。他にも色々あるぞ、ほら)

(ちょっと待って何処からそんな大量の暗器出した!?)