「やはり桜花に殲滅させるのは早かったのでは?」

「ボクもそう思うなぁ」

「遅かれ早かれあやつにはやらせるつもりじゃった。無論、日番谷にもな」

























それは殲滅任務から数週間経った頃。修兵さんと修ちゃんと三人で書類整理をしていた時の事だった

「五席、雨宮です」

「入れ」

「失礼します」

入ってきたのはうちの五席。彼は書類を手に持っていた。それを受け取ろうと修兵さんが手を伸ばし、そのまま雨宮に向けた。え、あの手の構えは縛道の────

「縛道の六十一・六杖光牢!」

『檜佐木さん!?』

「近付くな隊長!こいつ今斬魄刀を抜こうとしやがった!」

鋭い目をした修兵さんが苦無を取り出した。修ちゃんが動けない雨宮の腰から斬魄刀を外し床に転がした。
雨宮は普段の穏やかな表情からはかけ離れた形相で此方を睨み、拘束を解こうともがいている。一体どうしたというのか
修兵さんの鬼道なら破られる事はないとは思うが、念の為もう一つ掛けておこうか
そう思い構えようとした時、雨宮が口を開いた

「護廷十四隊を倒せ!!」

『!!!』

「隊長、こいつまさか……」

修兵さんが目を見開き僕を見る。恐らく見返す僕も同じ様な顔をしているだろう。
間違いない、雨宮のこの様子は殲滅任務の時の奴等と同じだ

「ちっ…牢に入れるぞ!」

修ちゃんが這縄で雨宮を縛り、部屋を出た。床に転がした雨宮の斬魄刀を掴み、修兵さんが僕を見る。僕は静かに頷いた

『総隊長の所へ行こう』



























「事情は相判った」

緊急隊首会が開かれ、中央に立ち状況の説明をする。僕の背後には修兵さんが控えていた。
鋭い目で総隊長が僕を見る。現在の九番隊は落ち着いているが何時誰があの状態になるか判らない。もしかしたら殲滅任務の時に怪我した事を黙っている隊士が居るかも知れないし、怪我した事すら気付いてない者も居るかも知れないからだ
下手したら雨宮が誰かを怪我させている可能性もある。そう考えると九番隊は────

「数週間、九番隊を隊舎にて監視する」

『……了解、致しました』

やっぱりそうなったか。予想通りの措置に内心溜息を吐く。念の為手枷を付けられ、砕蜂隊長に九番隊隊舎まで護送される事になった。

「随分と厄介な事になったな」

『はい』

砕蜂隊長の言葉に静かに頷く。雨宮と彼の斬魄刀は十二番隊に回され解析される。九番隊は騒動が終息するまで隊舎内謹慎。特に殲滅任務に参加した者は監視も厳しいだろう

「あーあマジで面倒臭ぇ事持って来やがったなちびさぎ隊長」

「────大前田、死にたくねぇなら黙ってろ」

何気なく大前田副隊長がそう言った時────ぞっとする程冷たい声が聞こえた。慌てて振り向けば修兵さんがあの目で大前田副隊長を睨め付けている。やばい、目がマジだ

『檜佐木さん!』

「っ……何だ、隊長」

名を呼べば修兵さんが此方を見た。その目にもう冷たさはない。内心安堵しながら早く行こうと急かした。それを見て少し先で立ち止まっていた砕蜂隊長が口を開く

「あの男は随分と気が短くなったな」

『そうですね……』

何だか修行に行ってから切れやすくなった気がする。そう呟くと砕蜂隊長は鼻で笑った

「それだけ大切なんだろう」

『へ?』

「そら、着いたぞ」

顔を上げれば九番隊隊舎前。砕蜂隊長が僕の手枷を外した。同じ様に手枷を外された修兵さんが手をぷらぷらさせながら隣に並ぶ。
それを横目で見た砕蜂隊長が僕達に背を向けた

「何か判れば連絡してやる。それまでは大人しくしていろ」

『有り難うございます、砕蜂隊長』

砕蜂隊長は大前田副隊長を引き連れ帰っていった。その時にふと思う

『身長差凄いな……』

「お前がそれを言うか」

そう言われ修兵さんを見上げた。うん、今は距離が近いから首が痛い。僕の後頭部に手を回し、頭を支える様な状態になった修兵さんが笑う

「な?俺らも凄いだろ?」

『……首が痛い』

「なら俺が運んでやろう」

修兵さんが僕の膝裏に手を回し持ち上げる。そしてそのまま腕の上。うわ随分懐かしい…じゃなくて

『何してんの修兵さん』

「運んでんの」

そのまますたすたと歩き始めた為慌てて修兵さんの頭に引っ付く。すると修兵さんがけらけらと笑った

「お前ドキドキし過ぎ」

『修兵さんの所為』

「ははっ」

素直に言えばまた笑う。何がそんなに面白いのか。そう思いつつ修兵さんに運ばれていく。
久々の特等席は何だか擽ったい気持ちになった





軟禁





(久々の特等席はどうよ、お姫サマ?)

(……悪くはない)

(ははっ、そいつは良かった)