護り合う
────薄々は感付いていた。
あの人が傷付いているのは、僕の所為だって
『……月閉風死の力の代償が。僕の状態異常を修兵さんが引き受ける事なら』
以前から考えていた事を口に出した
『あの時藍染に何かされた、それも状態異常として修兵さんに移していたなら』
思い付くのは双殛の丘でのあの戦い。あの時藍染は僕に何かしようとしていた
それと空座町での最終決戦。藍染と戦ったあの時、僕はあの男にまた何かされた
『修兵さんが異常を訴え出したのは空座町での最終決戦の後だ。だから、こう考えた』
修兵さんが僕が気を失っている間…つまり藍染に何かされた後に月閉風死を使っていたとしたら
もし藍染にされた何かのどちらか…若しくは両方が修兵さんに影響を及ぼしていたのなら
『────虚が目覚めるのは、本当は僕だったんじゃないかって』
修兵さんが息を呑む。
それが肯定の意を証明していた
「……やっぱりお前にゃ隠し事は出来ねぇか」
見詰め合って暫く────修兵さんが小さく笑った。その笑みは自嘲的なそれで。思わず眉を寄せれば修兵さんが目を伏せてがしがしと頭を掻いた
「その推測は大体当たってる。はぁ…しゃーねぇな……判ったよ、全部話す」
すっと目線を上げた修兵さんと目が合った。その目にもう迷いはない。逸らされる事のない目に気を引き締める
「空座町での最終決戦の時、お前は…」
すっと息を吐いた修兵さんが静かに口を開いた
「───────お前は、虚にされた」
『…………虚、に…?』
予想外の言葉に目を見開いた。や、確かに藍染に何かされたけど、僕虚にされたの?
僕の頭を数回撫でた修兵さんが続ける
「虚になったお前と俺が戦って、一緒に死ねたと思ったんだよ。そしたら生きてた」
『へぇ………え?』
頷こうとして、思わず首を傾げた。何だか聞き逃せない言葉が出た気がする。一緒に死ねたと思ったとか妙な言葉が聞こえた気がする
『……あの、修兵さん?』
「ん?」
『今、変な言葉言わなかった?』
「あ?変な言葉?」
首を傾げた修兵さん。え、変な言葉だと思ってないのか?言い辛い言葉をゆっくりと声に出す
『…一緒に死ねた、とか』
頼む、違うと言ってくれ。そう願った瞬間────
「ああ、言ったぞ」
『……………』
あっさりと肯定され思わず口が開いた。え、一緒に死ねたって何だ。何なのその衝撃的な言葉。何であんたはそんな不思議そうな顔で僕を見てるんだ
「俺お前に殺されそうになってな、その時にお前に双蓮蒼火墜使ったんだよ。あの時は俺マジで死ぬと思ってたし、結構本気でやったんだ。だから、一緒に死ねたかなーって」
『………………』
どうしよう、開いた口が塞がらない。かなーって何だかなーって。そんな風に可愛く言ってみたって内容が内容だから全然可愛くない
てか僕が修兵さんを殺しかけたってどういう事だ。知らないぞそんな事。しかも双蓮蒼火墜撃たれてるし
『因みに修兵さん』
「ん?」
『双蓮蒼火墜、何処に撃った?』
「顔」
ジェスチャーにより顔面を掴んでのゼロ距離発射だった事を知る。凄い今更だけど良く無事だったな僕の顔。
思わず自分の顔をぺたぺた触っていれば修兵さんが笑った
「虚は仮面が割れれば消えるだろ?だからお前の仮面を割った時にお前は死んだんだと思ったんだよ。
でもお前は生きてた。まぁ孔が半開きで完全に虚になりきってなかったってのも、助かった要因だとは思うが」
そして修兵さんはその後に月閉風死を使ったらしい。何でも蛸みたいに沢山触手の生えた奴と戦ったとかで
…え、蛸?
『…その蛸、ルピ…とか名乗ってなかった?』
「ん?言われてみればそんな名前だった気もするな…」
修兵さんも詳しくは覚えていない様だ。もしそいつが僕の考えている奴で間違いないならそれはそれで問題だ。
僕はルピと戦って、氷付けにして砕いたのだ。それなのにもし修兵さんが倒した蛸がルピなら、あいつはどうにかして復活した事になる。
「んで、その後は頭痛が始まって、夢を見て虚が完全に目覚めた事に気付いた」
『……つまりは僕の所為か』
「あ?」
首を傾げた修兵さんに何でもないと返す。
もしあの時僕が砕いた後に廃炎でも使って炭にしていれば、もしかしたら修兵さんは月閉風死を使わなくて済んだかも知れないのだ
本を辿れば────
「おい、勝手にてめぇの所為にしてんじゃねぇぞ」
『った!』
額に衝撃。両手で押さえれば呆れた様な表情の修兵さんが構えた手を下ろした。え、デコピン?今のが?
やたら痛いんだけど。ピン所かバンッて感じの痛みなんだけど
「あの時俺が戦ったのも、月閉風死を使ったのも、俺の意志だ。誰の所為でもねぇ」
『…………でも』
「でもだのだけどだのは言わせねぇ。俺は月閉風死のリスクも知ってた。だからこそ、使い続けてきた」
強い言い方の修兵さんに強制的に黙らされる。
「確かにお前の状態異常を引き受けるのが月閉風死の代償だ。でもそれは、俺にとっては都合が良い」
『…………?』
修兵さんの言葉に眉を寄せた。その代償に良い面があるなんてとてもじゃないが思えないんだが
「お前にとって悪いもんを月閉風死を使えば全部俺に移せるんだ。俺はお前が無事ならそれで良い」
『………っ』
修兵さんは酷く優しい笑顔でそう言った。
───────その考え方が僕を苦しませている事なんて、貴方はきっと知らない。
『…修兵さんがそんな事したら、僕はどうすれば良いのさ』
「……独月?」
少しだけ眉を下げた修兵さんを睨む。それに修兵さんは更に困った様な顔をした
『知らないでしょ、修兵さんは強いから』
自己犠牲をされた方がどんなに辛いのか。
『護られる辛さなんて、知らないんでしょ』
修兵さんを睨み付けたまま、ずっと心の奥底に沈んでいた想いを声に出す。
『修兵さんが僕を庇って怪我する度、僕がどんな想いして来たかなんて知らないから…!』
思ったよりも声が震えた。でも構わない。今此処で全部吐き出さないと、きっとまた想いを沈め続ける事になる
『何時も自分の事なんかそっちのけで僕を心配するしっ僕が隊長なのに僕を護ろうとするしっ…心配しても平気だとしか言わないし…!!』
圧倒された表情で此方を見つめる修兵さんに更に怒りが込み上げる。何なんだその顔は。僕が文句言ったら悪いのか
『相棒だって言うならもっと僕の事頼れよ…!何でも一人で解決しようとすんな!!』
「………………」
『っはー…はー…』
ありったけの声量で叫んだ所為で喉が痛い。そして若干酸欠気味。苦しくて涙目になってる。ぜーはーと肩で息をしていれば頭に何かが乗せられた。
僕の頭に手を乗せた修兵さんは、酷く優しい顔をしていた
「…そうだよな…すっかり忘れてた」
『…………?』
「俺、お前を護ろうとしてた。全部からお前を護ろうって、お前が戦わなくて済む様にって」
『………』
「でも、それは違うんだよな」
くつくつと笑った修兵さんが僕を抱き締めた。首筋に顔を埋めて、言葉を続ける
「お前は戦えるんだ。無理に戦ってる訳じゃねぇ、ちゃんとお前の意思で刀を握ってるんだ…それを、忘れてた」
『…修兵さん…』
僕の頭を撫でながら修兵さんが囁く
「ごめんな、独月。お前の事判ってやれなかった」
その言葉に首を横に振る。やばい、視界が滲んできた。下唇を噛んでいれば、顔を上げた修兵さんが唇切るぞとそれを止めさせる
「なぁ独月、今でもお前は俺を護りてぇと思ってくれてるか?」
『ん』
「即答かよ」
修兵さんの問いに直ぐ様頷けば笑われた。当たり前だ、修兵さんを護れるなら僕は死んでも構わない。今でもそう思ってるんだから。それを言ったら馬鹿な事言うんじゃねぇって怒られるだろうから言わないけど
「なら独月、こうしねぇか?」
『……?』
優しく笑ったままの修兵さんがこつりと僕の額に自分のそれを合わせる。
「俺はお前を護りてぇ。でもそれはお前も同じだ。なら、互いに互いを護るってのはどうだ?」
『……互いに互いを?』
「そ。俺がお前を護る。んでお前が俺を護んの」
つまりは護り合うって事か。それなら僕も修兵さんを護れるし、護りたがりな修兵さんも僕を護れる
『…判った』
「良し、なら交渉成立だな」
取り敢えず仲直り
(…でも月閉風死は使っちゃ駄目だから)
(あ?何で)
(リスクが大き過ぎる)
(お前から傷を移した後の俺を治療してくれれば良いだろ?だから使うぞ)
(…………)
(護り合うって言ったろ?)
(………(畜生嵌められた))
あの人が傷付いているのは、僕の所為だって
『……月閉風死の力の代償が。僕の状態異常を修兵さんが引き受ける事なら』
以前から考えていた事を口に出した
『あの時藍染に何かされた、それも状態異常として修兵さんに移していたなら』
思い付くのは双殛の丘でのあの戦い。あの時藍染は僕に何かしようとしていた
それと空座町での最終決戦。藍染と戦ったあの時、僕はあの男にまた何かされた
『修兵さんが異常を訴え出したのは空座町での最終決戦の後だ。だから、こう考えた』
修兵さんが僕が気を失っている間…つまり藍染に何かされた後に月閉風死を使っていたとしたら
もし藍染にされた何かのどちらか…若しくは両方が修兵さんに影響を及ぼしていたのなら
『────虚が目覚めるのは、本当は僕だったんじゃないかって』
修兵さんが息を呑む。
それが肯定の意を証明していた
「……やっぱりお前にゃ隠し事は出来ねぇか」
見詰め合って暫く────修兵さんが小さく笑った。その笑みは自嘲的なそれで。思わず眉を寄せれば修兵さんが目を伏せてがしがしと頭を掻いた
「その推測は大体当たってる。はぁ…しゃーねぇな……判ったよ、全部話す」
すっと目線を上げた修兵さんと目が合った。その目にもう迷いはない。逸らされる事のない目に気を引き締める
「空座町での最終決戦の時、お前は…」
すっと息を吐いた修兵さんが静かに口を開いた
「───────お前は、虚にされた」
『…………虚、に…?』
予想外の言葉に目を見開いた。や、確かに藍染に何かされたけど、僕虚にされたの?
僕の頭を数回撫でた修兵さんが続ける
「虚になったお前と俺が戦って、一緒に死ねたと思ったんだよ。そしたら生きてた」
『へぇ………え?』
頷こうとして、思わず首を傾げた。何だか聞き逃せない言葉が出た気がする。一緒に死ねたと思ったとか妙な言葉が聞こえた気がする
『……あの、修兵さん?』
「ん?」
『今、変な言葉言わなかった?』
「あ?変な言葉?」
首を傾げた修兵さん。え、変な言葉だと思ってないのか?言い辛い言葉をゆっくりと声に出す
『…一緒に死ねた、とか』
頼む、違うと言ってくれ。そう願った瞬間────
「ああ、言ったぞ」
『……………』
あっさりと肯定され思わず口が開いた。え、一緒に死ねたって何だ。何なのその衝撃的な言葉。何であんたはそんな不思議そうな顔で僕を見てるんだ
「俺お前に殺されそうになってな、その時にお前に双蓮蒼火墜使ったんだよ。あの時は俺マジで死ぬと思ってたし、結構本気でやったんだ。だから、一緒に死ねたかなーって」
『………………』
どうしよう、開いた口が塞がらない。かなーって何だかなーって。そんな風に可愛く言ってみたって内容が内容だから全然可愛くない
てか僕が修兵さんを殺しかけたってどういう事だ。知らないぞそんな事。しかも双蓮蒼火墜撃たれてるし
『因みに修兵さん』
「ん?」
『双蓮蒼火墜、何処に撃った?』
「顔」
ジェスチャーにより顔面を掴んでのゼロ距離発射だった事を知る。凄い今更だけど良く無事だったな僕の顔。
思わず自分の顔をぺたぺた触っていれば修兵さんが笑った
「虚は仮面が割れれば消えるだろ?だからお前の仮面を割った時にお前は死んだんだと思ったんだよ。
でもお前は生きてた。まぁ孔が半開きで完全に虚になりきってなかったってのも、助かった要因だとは思うが」
そして修兵さんはその後に月閉風死を使ったらしい。何でも蛸みたいに沢山触手の生えた奴と戦ったとかで
…え、蛸?
『…その蛸、ルピ…とか名乗ってなかった?』
「ん?言われてみればそんな名前だった気もするな…」
修兵さんも詳しくは覚えていない様だ。もしそいつが僕の考えている奴で間違いないならそれはそれで問題だ。
僕はルピと戦って、氷付けにして砕いたのだ。それなのにもし修兵さんが倒した蛸がルピなら、あいつはどうにかして復活した事になる。
「んで、その後は頭痛が始まって、夢を見て虚が完全に目覚めた事に気付いた」
『……つまりは僕の所為か』
「あ?」
首を傾げた修兵さんに何でもないと返す。
もしあの時僕が砕いた後に廃炎でも使って炭にしていれば、もしかしたら修兵さんは月閉風死を使わなくて済んだかも知れないのだ
本を辿れば────
「おい、勝手にてめぇの所為にしてんじゃねぇぞ」
『った!』
額に衝撃。両手で押さえれば呆れた様な表情の修兵さんが構えた手を下ろした。え、デコピン?今のが?
やたら痛いんだけど。ピン所かバンッて感じの痛みなんだけど
「あの時俺が戦ったのも、月閉風死を使ったのも、俺の意志だ。誰の所為でもねぇ」
『…………でも』
「でもだのだけどだのは言わせねぇ。俺は月閉風死のリスクも知ってた。だからこそ、使い続けてきた」
強い言い方の修兵さんに強制的に黙らされる。
「確かにお前の状態異常を引き受けるのが月閉風死の代償だ。でもそれは、俺にとっては都合が良い」
『…………?』
修兵さんの言葉に眉を寄せた。その代償に良い面があるなんてとてもじゃないが思えないんだが
「お前にとって悪いもんを月閉風死を使えば全部俺に移せるんだ。俺はお前が無事ならそれで良い」
『………っ』
修兵さんは酷く優しい笑顔でそう言った。
───────その考え方が僕を苦しませている事なんて、貴方はきっと知らない。
『…修兵さんがそんな事したら、僕はどうすれば良いのさ』
「……独月?」
少しだけ眉を下げた修兵さんを睨む。それに修兵さんは更に困った様な顔をした
『知らないでしょ、修兵さんは強いから』
自己犠牲をされた方がどんなに辛いのか。
『護られる辛さなんて、知らないんでしょ』
修兵さんを睨み付けたまま、ずっと心の奥底に沈んでいた想いを声に出す。
『修兵さんが僕を庇って怪我する度、僕がどんな想いして来たかなんて知らないから…!』
思ったよりも声が震えた。でも構わない。今此処で全部吐き出さないと、きっとまた想いを沈め続ける事になる
『何時も自分の事なんかそっちのけで僕を心配するしっ僕が隊長なのに僕を護ろうとするしっ…心配しても平気だとしか言わないし…!!』
圧倒された表情で此方を見つめる修兵さんに更に怒りが込み上げる。何なんだその顔は。僕が文句言ったら悪いのか
『相棒だって言うならもっと僕の事頼れよ…!何でも一人で解決しようとすんな!!』
「………………」
『っはー…はー…』
ありったけの声量で叫んだ所為で喉が痛い。そして若干酸欠気味。苦しくて涙目になってる。ぜーはーと肩で息をしていれば頭に何かが乗せられた。
僕の頭に手を乗せた修兵さんは、酷く優しい顔をしていた
「…そうだよな…すっかり忘れてた」
『…………?』
「俺、お前を護ろうとしてた。全部からお前を護ろうって、お前が戦わなくて済む様にって」
『………』
「でも、それは違うんだよな」
くつくつと笑った修兵さんが僕を抱き締めた。首筋に顔を埋めて、言葉を続ける
「お前は戦えるんだ。無理に戦ってる訳じゃねぇ、ちゃんとお前の意思で刀を握ってるんだ…それを、忘れてた」
『…修兵さん…』
僕の頭を撫でながら修兵さんが囁く
「ごめんな、独月。お前の事判ってやれなかった」
その言葉に首を横に振る。やばい、視界が滲んできた。下唇を噛んでいれば、顔を上げた修兵さんが唇切るぞとそれを止めさせる
「なぁ独月、今でもお前は俺を護りてぇと思ってくれてるか?」
『ん』
「即答かよ」
修兵さんの問いに直ぐ様頷けば笑われた。当たり前だ、修兵さんを護れるなら僕は死んでも構わない。今でもそう思ってるんだから。それを言ったら馬鹿な事言うんじゃねぇって怒られるだろうから言わないけど
「なら独月、こうしねぇか?」
『……?』
優しく笑ったままの修兵さんがこつりと僕の額に自分のそれを合わせる。
「俺はお前を護りてぇ。でもそれはお前も同じだ。なら、互いに互いを護るってのはどうだ?」
『……互いに互いを?』
「そ。俺がお前を護る。んでお前が俺を護んの」
つまりは護り合うって事か。それなら僕も修兵さんを護れるし、護りたがりな修兵さんも僕を護れる
『…判った』
「良し、なら交渉成立だな」
取り敢えず仲直り
(…でも月閉風死は使っちゃ駄目だから)
(あ?何で)
(リスクが大き過ぎる)
(お前から傷を移した後の俺を治療してくれれば良いだろ?だから使うぞ)
(…………)
(護り合うって言ったろ?)
(………(畜生嵌められた))