『…………』

散々泣きじゃくった所為で目蓋は重いし頭も痛い。でもそんな事言ってられる程暇なんてない訳で

「賊軍の尖兵は“開戦は五日後”と告げた…が、強襲をかける奸倭邪知の言葉など信ずる可くも無し」

総隊長の声が広い室内に響く。

「直ちに全霊全速で戦備を整えよ
二度と奴らに先手など取らせてはならぬ!」

























「……はぁ」

散々泣かせた独月を少し休憩させてから隊首会に行かせたが、大丈夫だろうか。副官専用の待合室の椅子の上でだらけていれば、今まで黙っていた吉良が口を開いた

「ちょっと良いかな、各隊の調査報告について聞きたいんだ」

「……?」

その様子に首を傾げる。どうやらこいつは何か気になる事があるらしい。

「どうしたんだよ、吉良」

「檜佐木さんは此処最近起きている事件の事を何処まで把握していますか?」

吉良からの質問に軽く視線を彷徨わせる

「あ?確か…流魂街の事件と、虚圏、反乱軍の事件がそれぞれ繋がってるんだろ?」

これは独月とも話し合った事だ。だがそれがどうかしたのか

「十二番隊の調査報告については?」

調査報告?…ああ、流魂街の住人失踪事件か

「十二番隊による最初の報告によれば、住民の消失は内輪揉めによるものとして、すぐに調査を打ち切った……だったか」

「そうです。それ以降も住民の消失が続いていたにも関わらず」

その事については俺と独月も可笑しいと思っていた。幾ら内輪揉めしたからって、大量に住人が消えるとも思えねぇ。しかもその報告の後も放置するなんて、可笑し過ぎる。
住人達の失踪なんて、トチ狂った科学者共の巣窟である十二番隊なら喜んで食い付きそうな事件だ。なのに奴等は適当に誤魔化してさっさと引いた。
……明らかに十二番隊…涅隊長は何かを隠してる

「この中に50地区より外側を調査した副隊長は居るか?」

「つるりんとゆみちーが64地区を調査したよ!」

挙手した草鹿がそう言った。
報告は他の隊と同じ。村人の足跡が一箇所に集まって消えていた、と。

「虚の足跡はなかったってー!」

「足跡の種類は?」

「はだしとぞうり」

これもうちの隊と同じか。裸足と草履、ねぇ……

「……ん?」

待てよ、裸足と草履?
その言葉に引っ掛かりを覚え、過去に見た資料を思い出す
確か生活水準の急速な悪化が原因で、過去五百五十年に渡って59地区以降の地区の住人達は皆裸足。草履なんか履いてる奴は居ねぇ筈だ。
という事は──────────

「…64地区に草履の足跡が残ってたって事は、それは死神の物である可能性が高ぇ」

そうだろ?
その意味も込めて見れば、吉良が頷いた

「それに、調査を行う場合は霊子調査チームから人員を連れて行くのが常の筈だが、その措置が取られていなかった」

────────つまりはあの人が怪しい
すっと視線をあのマッドサイエンティストの副官に向ける

「───────なぁ涅、最初の調査を行った十二番隊の涅隊長は、何を隠してんだ?」

「…マユリ様はこの件について情報を与えて下さらなかったので知りませんが、マユリ様が悪行をなさる筈がありません」

「……そうかい」

人形は何も知らねぇってか。舌打ちしそうになるのを堪え、目を閉じる。
独月の状態を確認してから、大丈夫なら報告しよう。今のあいつは不安定だ。出来れば無理はさせたくねぇ。後で拳西さん達とも意見交換しとくか

「…この件は総隊長に報告させて貰うぞ」

そう言った吉良の声がやけに冷たかった






思惑






(早く終わらねぇかな、隊首会)