『う、そ……何で……?』

手の中で震えているのは、形の変わらなかった斬魄刀。
もう一度、集中する

『────────卍解!!』

けれど、藤凍月は応えない。

『藤凍月!何でだよ!卍解させろよ!』

反応しない藤凍月に懇願する。男が手にしているのは金属板。
まだ卍解をしてないから、封印された訳じゃない。けれどその力を僕が望んでも使う事が出来ない。
────────つまり、藤凍月が卍解を拒んでいる。

『頼む…藤凍月…!』

卍解じゃないと勝てないんだよ。頼む、頼む────────!!


───────貴様は俺達の力を失いたいのか、馬鹿が


『………え…?』

赤色の言葉に首を傾げた瞬間、不意に脳内に声が聴こえてきた


[────────天挺空羅!!]


『……乱菊さんか』

彼女からの報告を聞き、目を見開いた

「…卍解を奪う、だと……!?」

修兵さんが困惑した表情で僕を見た。封印するのではなく、奪う。
奪われてしまえば封印を解くとかそんな話じゃなくなる。相手からどうにかして取り返さないといけない。それに奪われた力を敵が使わないとは考え辛い。もし奪われてしまえば、自分の卍解と戦う事になると考えても良いだろう。
そこまで考えて、はっとする。
もし今素直に藤凍月が卍解をしていたら、僕も卍解を奪われていた…?


───────ふん、精々感謝しろ、馬鹿


───────卍解でなくとも、我等を使えば敵わぬ事はない



『…ありがとう、赤色、銀色』

恐らく藤凍月は敵から何かを感じ取り、卍解を拒んだんだろう。相棒が聡くて良かった
小さく呟いて、斬魄刀を構える

『虚空に色付け────────“藤凍月”』

始解した藤凍月を構えた。そうだ、卍解じゃなくても藤凍月なら、十分やれる。
それに、修兵さんも居てくれる

「なんだぁ?卍解しねぇのかぁ?」

懐に金属板をしまった男が嫌な笑みを浮かべる。大丈夫、卍解なしで、いける

「刈れ───────“風死”」

始解した修兵さんが僕の隣に立った。

『…申し遅れたが、九番隊隊長、桜花独月だ』

戦う相手には名乗れ。それは修兵さんが教えてくれた事。告げれば隣の修兵さんも名乗った

「同じく九番隊、副隊長の檜佐木修兵だ」

大男が野太い声で笑い出す。

「星十字騎士団団長、ドリスコール・ベルチだ!!死ぬ前に覚えときな、死神共!!」

























深淵に眠る赤き罪

伸ばされた手が白く染めた

鍵を外された白き狂気

黒い鎖が連れ去って行く

化身が混じり浮かぶ赤

その咎さえも、喰われて消える

雨よ、彼の空に降ってくれるな

我が身を濡らし消えて行け

雲浮かぶ彼の空を護る為なら

僕は世界に牙を向けよう


























『縛裟氷映!』

「あーあ」

背後から斬り付ければ躱された。向かって来た拳を瞬歩で避ける。
僕と入れ替わりで斬り掛かった修兵さんが殴り飛ばされた。
勢い良く白壁に叩き付けられる。

「ぐっ!!」

『修兵さん!』

「辛ぇなぁ」

すぐ近くから声がして─────────

『──────────うあ゙っ!!』

振り向いた瞬間、重たい何かを右頬に喰らった。
壁に叩き付けられ、地面に落ちた僕の身体が浮いた。目の前には大男。どうやらドリスコールに胸倉を掴まれているらしい。

「つれーつれーつれーつれーつれーつれーつれーつれーつれーわ!!
弱ぇーってのはつれーなぁオイ、隊長、副隊長!!」

『っぐ!あぅっ!』

「独月っ!!」

喋っている間にも奴は僕を殴り続ける。痛い。脳が揺さぶられる。吐きそう。
くそ、マジでこいつぶっ飛ばす

『っ…氷狐・爪撃!!』

長刀の飾り紐に付いた勾玉が姿を変える。ドリスコールの背後に現れたのは巨大な狐

「ああ?何だこりゃ」

ドリスコールが腕を振り上げた狐に目を奪われている隙に、拳銃で胸倉を掴む手を撃って逃げ出す。

「クソガキぃぃぃぃ!!」

『ちっ…氷華!』

捕らえようと伸ばされた手を、華を模した氷で固める。奴が氷を粉砕している隙に氷狐を勾玉に戻し、修兵さんの隣まで後退した
最悪だ、頭がぐわんぐわんする

「大丈夫か?」

『そっちこそ』

お互い顔を殴られたらしく、腫れている。骨が折れてないだけマシか。
長刀を手首で回し、増やす。

『化けろ───────“千本桜”』

六本出した刀を全て桜吹雪に変え、けしかけた

「こんなもんが効くか!」

ドリスコールが片手を勢い良く振り抜いた。桜吹雪がその一撃で散らされる。
化けていたそれは六本の刀に戻り、石畳に突き刺さった

「くそっ…こんな事があるかよ… 力の差がデカ過ぎる…まるで歯が立たねぇ………」

『……畜生』

悔しいが修兵さんの言う通りだ。僕達じゃ勝てない。
にやにやと笑うドリスコールが口を開いた

「俺の強さが怖ぇかよ?
俺が陛下に与えられた文字はO“大量虐殺”
俺は敵も、味方も、獣でも、殺せば殺す程強くなる」

そう言ったドリスコールが足元に横たわる隊士を踏みつけた

「今日は此処へ来てからだけで百人は殺した、前に来た時も百人、てめぇと同じ副隊長も殺したっけなァ!」

副隊長…雀部副隊長か。
あの人は、こんな奴に殺されたのか。

『!』

藤凍月がかたりと揺れた。隣の修兵さんを見る。その意味に気付いたらしい修兵さんがにやりと笑った
僕も口角を上げ、藤凍月を空に向ける
空気中に舞う氷の粒。
準備は、整った

『─────────長々と喋ってくれて、ありがとう』























「……ああ?」

『─────────氷葬樹』

唱えた時、辺りを霧が覆った。
ドリスコールを囲む様にして突き刺さっていた刀が氷になった。ぐねぐねと曲がる氷がドリスコールに巻き付き、縛り上げる
身体に巻き付いた氷から沢山の棘が出た。腕を貫通する程度には長いそれを刺したまま、ドリスコールが喚く

「こんなもんが効く訳ねぇだろうが!」

『あれ、あいつ痛覚ないのかな』

「寧ろ見てる此方が痛ぇわ」

そう言いつつ、にやりと笑った修兵さんが顔の前で手を構える。どうやら一気に終わらせるつもりらしい

「─────────他の奴等には内緒だぜ?」

「ぶっ殺してやる死神共ぉぉ!!」

叫んだと思えば、ドリスコールが懐から何かを取り出した。金属に星の彫られた板。さっき僕に向けた物とはきっと別の物だ。直感的にぞくりとした。駄目だ、あれはやばい気がする

「卍か─────────」

『氷狐!!』

藤凍月を振り、飾り紐に付いた勾玉から氷の狐を出した。飛び出した狐が大口を開け、ドリスコールの手首に噛み付く。
瞬歩で近付き、その手から金属板を奪い取った

『…………?』

それを手に取った瞬間、優しく笑うあの人の姿が脳裏を過った。何で?
そう思いつつ、頭を切り替えてドリスコールを見る。
奴は氷狐を薙ぎ払い、憤慨した様子で此方に手を向けた

「ちぃっ…!なら串刺しにしてやるよぉ!!」

その言葉と同時に光り出す掌。霊子の矢が僕に照準を合わせている。
避けた方が良いのかも知れないが、今瞬歩を使った所為かまた吐き気がぶり返してきた。
ならもう無駄に動かずに、直哉さんから貰ったこの鎧を使った方が良いだろう。
頭が揺れる感覚がするのを堪えながら青龍の鎧で受け止めようとした時、奴の目の前に虚化した修兵さんが現れた

「─────────させるかよ」

狼を模した仮面を被った修兵さんが風死を振るった。ドリスコールの腕が落ちる

「ああああああああああああ!!!」

「てめぇが堅ぇのは良く判ってる。けどそれは、俺がもっと切れ味を上げれば良いだけの話だ」

仮面の奥から修兵さんが冷たい目でドリスコールを睨み付けた。

「だがもっと有効なのは、てめぇの無駄に高ぇ霊圧を奪い取る事」

修兵さんが大きく育った氷の樹を見つめる

「隊長がそれを設置するにはどうしても時間が掛かる。だから、俺達は敢えて避けられる攻撃も喰らった」

そう、これは綾瀬川五席の瑠璃色孔雀の応用だ。大っぴらに使うのは、彼の今までの行動を無駄にするのと同じ。だから能力だけを使わせて貰った。
ちらりと樹を見る。これを使うには大樹を形成する為の種が必要だった。それと大量の氷。
種は増えた藤凍月。六本全てを威力を弱くした千本桜に化けさせたのはわざとだ。理由は種をドリスコールを囲む様に配置する為
わざと攻撃を受けたのは、奴の身体に僕の霊圧を込めた氷を纏わせる為。
てか今思うと縛裟氷映で全身を固めてみれば良かったんじゃ……
うわ、殴られ損。

『修兵さん、多分殴られ損だ。ごめん』

「…今言うか、それ」

呆れた様に呟く修兵さんから目を逸らし、大樹を見る。枝に付けた沢山の蕾。多分これから受ける修兵さんの一撃で致命傷だろうが、敢えて霊圧も全て奪い取ってやろう。散々殴ってくれた仕返しだ
修兵さんが大樹から距離を取る。ああ、そろそろ終わりか

「敵わねぇフリをする俺達を殴るのは楽しかったか?殺した奴等と俺達にてめぇの命で詫びろ、大量虐殺サンよ」

風死を構えた修兵さんが駆け出した。

「残影──────────天」

「う……おおおおおおおおおお!!!」

叫んだドリスコールの身体が血塗れになった。
僕は藤凍月を空に向ける。ぼんやりと光る氷の樹。

『氷葬樹・葬送』

枝に付いた蕾が一斉に花開く
残らず霊圧を吸い付くされたドリスコールは、骸骨になった。
夥しい血と肉片、骸骨。それらを纏った咲き誇る氷の樹。…随分と悪趣味なアートだ。
終わったのを感じ、石畳に座り込む。ああ、頭がぐわんぐわんする。暫くは動けないかも

「……ふぅ」

仮面を取り払った修兵さんが大量虐殺の成れの果てを見て、それから僕を見た
そして僕の姿を見て眉を寄せる

「随分ボロボロになっちまったな…」

『ん?……ああ』

何の事だと考えて、それが自分の格好を指している事に気付く。何時破れたのか、死覇装も隊首羽織もボロボロだ。胸元なんか最早ずたずたにされた布に近い。あれか、あいつに胸倉掴まれて殴られたからか。確かにビリッて音も聞こえた気もする
それにしてもこのボロ布動きにくいな。袴はまだマシだが、上衣の中途半端に破れた布が腕の動きを阻害してくる。これじゃあ次戦闘になった時支障を来す。
そう思い、背負っていた藤凍月の鞘を下ろした。右腕から鎧を外し、地面に置く。隊首羽織と上衣を脱いでいれば、修兵さんが僕を止めた。え、何でそんなに慌ててんの?

「何で脱いでんだよ!!」

『動きにくいから』

寧ろそれ以外に理由はない。あったらあったで何か怪しい気もするけど。
首を傾げつつ布切れを放り捨てる。そして自分の格好を見て、ああと声を出した
ついと自分の胸元を指してみる

『サラシ巻いてるから大丈夫』

「問題そこじゃねぇ…!!」

『?』

絶壁だが生物学的には僕は女だから、多分修兵さんはそれを気にしたんだろう。ない胸を晒すな、と。あんまり…というか胸がないから殆ど意味はないが、サラシを巻いてるから大丈夫、他の人のお目汚しはしないよ。
その意味を込めて言ったのに、何故か修兵さんが頭を抱えた。問題そこじゃねぇって…え、じゃあ問題どこ?寧ろそれ以外に見当たらないんだけど
首を傾げつつ藤凍月を背負えば、溜息を吐いた修兵さんが上衣を脱ぎ出した。何でだ。修兵さんもお揃いにしたいのか?
見ていれば、上半身裸になった修兵さんが脱いだ上衣を僕にずいっと押し付けてきた

『?』

「女がんな格好で歩くもんじゃねぇ。これ着てろ…や、頼むから着て下さいお願いします」

口許を手で隠しそっぽを向いたまま、早口に修兵さんがそう言った。横顔が赤い。頬は殴られたのも関係あるだろうが、それだけじゃなく耳まで赤い。何故。…ああ、乱菊さんがこんな格好してたら、とか想像したんだろう。修兵さん変態だし。想像ってか、妄想?ほんと戦ってる時は格好良いのにふとした時に残念だなあんた。
掴まれたままの上衣を受け取る

『ありがと、借りる』

「……おう。血とか汗とか付いちまってるけど我慢しろ」

『気にしない』

修兵さんが此方に背を向けている間に上衣を着る。さっきまで修兵さんが着ていたから温い。袴の中に裾を入れるのも面倒でそのまま着れば、何というか残念な感じになった。
半袖のワンピース状態。確かこれは袖無しなだけだった筈なんだが。僕の肩幅は修兵さんのそれの半分くらいしかないのか
小さく溜息を吐き、先程捨てたボロ布を腰帯代わりに使った。
一通り確認してから修兵さんを呼ぶ

『着た』

「ん。…胸元を閉めろ」

振り返った修兵さんに早速言われた。

『これが限界』

普段の乱菊さん状態だが、僕には胸というものがない為ただ胸元ががっつり開いてるだけだ。胸というか胸板に近い気がする。…あれ、そう考えると乱菊さんより更木隊長に近いかも知れない。
てか胸を心配しなくても、サラシ巻いてるから大丈夫だってば。あれ、余計に乱菊さんより更木隊長に近付いた気がする
そう考えていれば修兵さんがまた頭を抱えた

「ヘアピンとか使って閉めろっての…」

何故頭を抱える

『…修兵さんは良く判らん…』

「お前に言われたくねぇ」

何故。首を傾げつつ髪からヘアピンを取り、ぐいっと引っ張って袷を止める。無理矢理止めたから皺が凄いが、これで良いのかと修兵さんを見れば彼は頷いた

「頼むから予測外の爆弾を落とすな…」

『?』

深々と溜息を吐いた修兵さん。爆弾なんか落としてないんだが。あれか、ドリスコールに殴られて頭可笑しくなったのか。可哀想に、後で四番隊に連れていってやろう。
そう考えつつ身形を整えていれば、後ろから大きな霊圧を感じた

「賊軍を屠ったのはお主らか」

『「総隊長!」』

ゆっくりと歩いてきた総隊長に会釈する。
立ち上がろうとすればそのままで良いと制された。
氷の大樹を一瞥した総隊長に、僕はゆっくりと口を開いた

『…雀部副隊長を殺したのも、この男かと』

「……そうか」

戦闘中に奴から奪った金属板を総隊長に渡す。恐らくそれに入っているのは、あの人の卍解。受け取った総隊長が目を細めた

「悔しかろう…この様な物にお主の努力は奪われたのか……」

呟いた総隊長が骸骨に歩み寄り、その頭蓋骨を踏み砕いた

「……漸くお主を弔う事が出来た。長次郎よ、さらば」

「…総隊長……」

「良くやった」

振り返った総隊長が僕達の前に立った。僕と修兵さんの頭に大きな手が乗せられる
そして僕達を見て、優しく言った

「案ずるな。
奴等賊軍一人残らず儂がこの手で叩ッ斬る」

『総隊ちょ─────────っ!?』

名を呼ぼうとした瞬間、物凄い風が吹いた。突如目の前で起きたそれに吹っ飛ばされる

「隊長!」

聞こえた低い声。視界が肌色に変わる。暖かな温もり。修兵さんが捕まえてくれたのか
修兵さんに抱き締められたまま風が止むのを待つ。てか何だ今の。爆発でもしたのか。けど随分近くで起きた気もする

「…平気か?」

『ん、ありがと』

そっと離され、先程の暴風の原因を発見する。抉れた石畳。其処はさっき総隊長が立っていた場所で

『…まさか、瞬歩?』

「……マジかよ」

二人で顔を引き攣らせる。え、瞬歩で暴風起こしたの?僕吹っ飛ばされたんだけど。これでも一応隊長なんだけど。石畳抉りまくってるこれが攻撃じゃなくてただの瞬歩とか、総隊長が化物過ぎる

「あー……怒ってらっしゃるなぁ、総隊長」

修兵さんが総隊長の向かっていったらしい方角を眺め、そう言った

『…尸魂界中に霊圧が木霊してる』

怒りを抱えた霊圧が彼方此方で鳴り響く。見ていた方角で大きな砂煙が上がった。総隊長がまた瞬歩を使ったのかも知れない

『……何か怒られてる気分』

「同感」

さっきは良くやったって言って貰えたけど、此処まで怒った霊圧が壁跳ね返って此方に来てたら、そう考えても仕方無いと思う
藤凍月を背負い直し、修兵さんを見る

『…僕達ももう少し頑張りますか』

「おう。けど少し休憩してからな?」

そう言って修兵さんが僕を座らせ、自分も隣に腰を下ろした。確かに休憩した方が良いかも知れない。というか休憩しないと僕は動けん。ああ、僕隊長失格だな。周りは戦ってるのに。
そう思いつつ修兵さんを見た

「大丈夫か?」

『少し休めば動けると思う』

言葉を交わし、空を見上げる。
総隊長が出撃なさったんだ。仰った通り賊軍を全部叩っ斬り、すぐにこんな戦争を終わらせてくれるだろう。
小さく疲れたと零す修兵さんを見て、ふと思い付いた事を聞いてみる

『そういえば修兵さん筋肉付いた?』

「あ?まぁ鍛えたしな。それなりには付いたかも知れねぇ」

自分の上半身を眺める修兵さん。その身体をまじまじと見つめる。細いけど前より胸板厚くなった気がする。うわ、かったいな。てかこれ筋肉だけど僕より胸あるんじゃないか。ちょっとへこむ。

「擽ってぇ」

修兵さんがくすくすと笑う。
それを見ているとまた頭がぐるぐるしてきたので修兵さんに倒れ込んだ。
僕を受け止めた修兵さんが、優しい手付きで横にしてくれた。
所謂膝枕。枕がガッチガチに硬いのは仕方ない。
近くにあった板チョコ並みに割れてる腹筋を叩いていれば、眉を下げた修兵さんが僕の髪を撫でた

「やっぱりお前が殴られてんの、止めるべきだったな…」

『あれは僕の不注意だから、修兵さんは気にしなくて良い』

ドリスコールに胸倉を掴まれ殴られたのは、一重に僕の不注意の所為だ。だからこそ今にも飛び出さんとしていた修兵さんを目で止めた。
修兵さんにこれ以上怪我して欲しくなかったし。
そう考えていれば、修兵さんは違ぇよ、と。

「俺はお前の副官なんだ。それがたとえ隊長の指示でも、護れねぇのは辛ぇんだよ」

『……修兵さん…』

酷く苦しそうな表情で、修兵さんはそう呟いた。
切なさも含ませた顔で、僕を見つめる

「隊長、俺はお前を護る為に強くなった。お前を護れねぇなら、こんな力何の意味もねぇんだよ。
俺はお前を護りてぇんだ…護らせてくれよ、隊長……」

哀切に満ちた声で懇願され、思わず頷く。
すると修兵さんが安心した様にへにゃりと笑った

「なら、もうあんな事すんなよ?お前が傷付くのなんか見たくねぇ」

『判った……何かごめん…』

「判ってくれたんならもう良い。許す」

笑った修兵さんが僕の髪を優しく撫でた。
護らせてくれって…あれ、この人何時まで副隊長で居るつもり?

『…ちょっと修兵さん、さっさと卍解会得してよ』

僕がそう言うと、修兵さんはあからさまに目を逸らした

「……それはそれだ」

『……やっぱり護らせてあげない』

「え」








An icy flower and darling time








(いやいやいや、そんなのナシだろ!今護らせてくれるって言ったじゃねぇか!)

(明らかに一生副隊長で居るつもりでしょ。なら護らせてあげない)

(そりゃねぇよ隊長……!!)




───────その時は、まさか総隊長があんな事になるなんて思わなかった