『───────え、?』

目を見開く。
あんなにも響いていた霊圧が、消えた。
嘘、だ

『──────────総隊長!!』

「っ落ち着け隊長!」

駆け出そうとすれば修兵さんに肩を掴まれた。離してよ、総隊長の所に行かないと。行って、無事な姿を確認しないと

『離せ!総隊長が…総隊長がっ!』

「ちょっと待て!」

『離せよ!総隊長の所に行かないと!』

「─────────────ッ!
落ち着け、桜花隊長!!貴女が今すべき事は何だ!?瀞霊廷の守護だろうが!!戦場で隊長が簡単に取り乱すんじゃねぇ!!!」

『っ!!』

壁に背中をぶつけられ、修兵さんに怒鳴られた。…そうだ。僕がやらないといけないのは瀞霊廷の守護。護廷十四隊は何の為に存在するのか。それは、尸魂界の守護の為
………総隊長を護る為じゃ、ない

『……ごめん檜佐木さん、ありがとう』

「どーいたしまして。で、どうします、隊長?」

肩から手を離した修兵さんが僕を見た。辺りを見て、小さく頷く

『まずは好き勝手暴れてる滅却師の群れを蹴散らす。これ以上瀞霊廷を壊されてたまるか』

「りょーかい」

藤凍月を抜き、修兵さんと共に走り出す。まだ他の隊長達は戦ってるか。
朽木隊長と阿散井の霊圧が感じられない。吉良とルキアと更木隊長も。…皆、大丈夫なのか

「…気ぃ抜くな、隊長。俺達だって下手すりゃやられんぞ」

『……判ってる』






















あれから急に滅却師の軍勢は去った。残されたのは沢山の隊士達と僕自身が斬った滅却師の死体。それから、無惨な姿の瀞霊廷

「……隊長」

僕の後ろに集まってきたのは九番隊の隊士達。負傷者も居るが殆ど欠けていない様だ。直哉さんと修ちゃんが上手くやってくれたんだろう。…少しでも多く生きていてくれて良かった

『…各自怪我をした者は四番隊へ。重傷者には手を貸してやれ』

足許にあった滅却師の死体を踏み潰そうとして、止める。こんな事したって空しいだけだ。彼等にも彼等なりの正義がある
それが──────戦争だ

『檜佐木さんと直哉さんは九番隊の統轄に。軽傷者は念の為周辺警備、それから負傷者を見掛けたら四番隊へ連れて行ってやれ』

「はい」

「了解した」

『拳西さんと修ちゃんは僕と一緒に緊急隊首会に。僕より隊長経験のある貴方にサポートを頼みたい』

「おう」

「判った」

垂れてきた血を拭っていれば修兵さんが眉を寄せた

「隊長、まずは御自分の怪我を…」

『必要ない』

前を見据え、足許の滅却師の死体を踏み越えて進む。修兵さんから案じる様な視線を感じたが、振り向きはしなかった













「総隊長の亡骸と思われるものは見付からなかったそうだ」

隊葬の中、一拍置いて、目を伏せて浮竹隊長が言った

「敵に破壊し尽くされたに違いない」

山本総隊長の遺体は見付からないまま。彼の斬魄刀の残骸だけが発見された。
持ち主の見付からない斬魄刀を囲み、皆自然と神妙な面持ちになる

「……隊長…」

『…僕なら大丈夫』

小声で呼び掛けて来た修ちゃんの頭を撫でていれば裏廷隊らしき姿の人間が来た。伝令、か

「ご報告致します」

頭を下げた伝令が口を開く

「六番隊隊長朽木白哉、並びに十一番隊隊長更木剣八、両名の死を回避する事が出来ました」

『……良かった』

呟けば後ろに居た拳西さんに頭を撫でられた

「しかし隊長業務に復帰する事は困難と思われ…」

何かを迷う様にして黙り、伝令が言葉を続けた

「場合によっては目覚めない事も考えられま す」

「下がれ!!」

急な怒鳴り声に肩を震わせれば拳西さんに強めに頭を撫でられた。心配する様に修ちゃんも頬に顔を擦り付けてくる。……ごめん、不甲斐ない隊長で

「今はそんな事を聞きたくはない!解らんの か!?
総隊長がお亡くなりになったのだぞ!他に何の報告を聞けというのだ!?」

声を荒げ、砕蜂隊長が伝令を責める。すると僕の後ろに立っていた拳西さんが溜息を吐き、僕の隣に並んだ

「止めろ、痛々しいぞ」

拳西さんがそう言った瞬間、砕蜂隊長のターゲットが伝令から拳西さんに変わる

「痛々しい!?貴様がそんなに落ち着いてい られるのは総隊長が嫌いだったからではないのか!」

「てめぇよく…」

え、ちょっそこで喧嘩腰になっちゃうの?慌てて拳西さんを止めようとしても彼は一切僕を見ない。悩んでいれば溜息を吐いた財前が二人を見た

「なんやもうちょい落ち着こうや…こんな事やっとる場合やないやろ」

「貴様は黙っていろ財前!」

あ、財前怒られた。ざまぁとは思うがそうなると僕が止めるしかない

『砕蜂隊長、拳西さんはそんな事思ってません。どうか落ち着いて下さい』

「はっ、どうせ貴様も総隊長の死を悲しんではいないのだろう!あんなにも総隊長の御世話になっていた癖に、この薄情者が!!」

「てめぇうちの隊長を馬鹿にしてんじゃねぇぞ!」

『え、ちょっ拳西さん止まって!修ちゃんも飛び出さない!』

何故かスイッチが入った二人を必死こいて押し留める。良かった此処に修兵さん居なくて。あの人まで居たら僕一人じゃ止められない

「止めろ砕蜂!!叫びたいのがお前だけだと思うのか!!??」

狛村隊長に一喝され、漸く砕蜂隊長が沈黙した。た、助かった…!
でも今度は重苦しい空気が漂う。や、これが正しい気もするけど喧嘩した後だと物凄く険悪だ。
困って修ちゃんの頭を撫でていれば誰かが歩いてくる足音が聞こえてきた

「は〜いはい、判った判った。ケンカはそ〜こまで」

『…京楽隊長』

「何時もだったらこんな事してたら山爺の拳骨が飛んでくるよ
そしてこう言うんだろうね。遺品の前で喚くなどけしからんって。そうだろう?」

現れた京楽隊長がそう言うと、また砕蜂隊長が睨み始めた

「京楽、貴様……」

「十四隊ってのはさ、死者を悼んだり尸魂界の被害を嘆く為に作られたんじゃないんだ」

砕蜂隊長を見ながら、けれど何処か自分に言い聞かせる様に京楽隊長は言う

「尸魂界を護る為に在るんだよ」

『………………』

「前を見なきゃね」

笑った京楽隊長に頭を撫でられた

「僕達は─────護廷十四隊なんだからさ」







People fight with the others just because its justice is believed







(総隊長が亡くなって悲しくない人なんて、居ない)