「…隊長?」

『何?』

不意に隣から聞こえた声にはっと顔を上げる。いかん、ぼーっとしてた

「無理してるんじゃねぇか?少し横になるか?」

『平気。檜佐木さん包帯取って』

修兵さんの気遣う様な視線から目を逸らし、自分の怪我に手を当てる。啓活を使っていれば救急箱ごと持ってきた修兵さんが目の前に座った

「ほら、怪我見せろ。治療してやる」

『…檜佐木さんは自分の治療した方が良い』

「俺は頑丈だから良いんだよ。つかお前多分貧血気味だぞ。四番隊行け」

溜息を吐いた修兵さんが僕の腕を取って治療し始めた。何だその溜息

『只でさえ忙しい四番隊に迷惑掛ける訳にはいかない。それにこんな怪我消毒液掛けて包帯巻いとけば治る』

「取り敢えず重傷なんだがな。しゃーねぇな…あんまり慣れてねぇが文句言うなよ?」

『?何を……』

修兵さんが僕の額に手を伸ばした。そこから放たれる緑色の光。これは、明癒?修兵さん回復鬼道使えたの?

「俺には向いてねぇらしいしな。傷口を塞ぐだけでも結構神経使うんだ、今話し掛けんなよ?」

『…判った』

物凄く真剣な表情で額の傷を治療する修兵さんをぼんやりと眺めながら、これからの事を考える。取り敢えず第一にすべきは次の侵攻に備える事。奴等がまた来ないとは言えないし、来るとしたら今度こそ尸魂界を滅亡させる為に来るんだろう。
だが侵攻に備えると言っても戦力増強は殆ど見込めないだろう。此方の被害が甚大過ぎる。上位席官でもこのザマだ、平隊士を補充した所で犬死にしろと言う様なもの。だとしたら限られた情報を掻き集め、次の奴等の侵攻までに出来る限りの対策を練るしか─────

『ったい!』

「一人でうだうだ考えてんじゃねぇぞ隊長」

不意に鼻を襲った痛みに声を上げれば修兵さんに睨まれた。その手の構えはデコピン。ちょっと待てそれ鼻にするものじゃないし。てかデコピンが物凄く痛いとかどういう事だ

「まーたてめぇは一人で全部抱え込みやがって。何時も俺を頼れって言ってんだろうが。良い加減にしねぇとそろそろマジでキレるぞ俺も」

『は?別に何も溜め込んでなんか痛い痛い!!』

「言わねぇともう一度この傷を開く。さっさと吐け」

修兵さんが塞いだばかりの額の傷に爪を食い込ませた。え、何この人怖い。でも怯えて話さなければほんとに傷口開かれる気がする。目がマジだ。この人絶対やる
てか何でこの人こんなに機嫌悪いの?アレか、さっき緊急隊首会に連れて行かなかったから?

『…滅却師の侵攻対策を考えてた』

渋々口を開けば手が離れていった。血…は出てないな、良かった

「他は?」

『他……砕蜂隊長に言われた言葉がちょっとショックだった?』

「何言われた」

何時の間にか額にはガーゼを貼られ、殴られて腫れた頬には氷嚢を宛がわれた。氷なんか何時持ってきたんだろう。準備良いな修兵さん

『…薄情者って』

「薄情者?」

眉を寄せた修兵さんから目を逸らし、言われた言葉をそのまま伝えれば明らかに修兵さんの雰囲気が固くなった
見れば風死を持った修兵さんが席を立とうとしている

『いやいやいや修兵さん落ち着いてよ』

「ふざけんな独月が悲しんでねぇ筈ねぇだろうが。ちょっとお伺い立ててくる」

『言い方丁寧だけどそれ明らかに殴り込みだから!何でそんなに殺る気スイッチ入りやすいんだあんたら!』

飛び付けばなんとか修兵さんは止まった。どうしよう九番隊が喧嘩っ早過ぎる。特に上位席官が。あんたら少しは我慢を知れ
そう言うと明らかに不機嫌ですと言わんばかりの表情をされた

「てめぇの隊長が貶されて黙ってられっかよ」

『………………』

「え、何で照れた?」























『零番隊…初めて見る』

「俺もだ」

指定された場所に行けば、既に殆どの隊長達が集まっていた。修兵さんと拳西さんと修ちゃんを連れ、僕も隊長達に混ざる。
隣に立つと日番谷隊長が僕を見てほっと息を吐いた

「…ちゃんと治療したか、桜花」

『…そんなに酷かったですか?』

「ああ。後で卯ノ花に増血剤でも貰え。血の気がねぇ」

『……はい』

血の気がないってどんなだ。内心そう思っていれば顔が物凄い事になってる涅隊長と黒崎も来た

「平子!」

「おー一護、見物か?俺はおススメせんで」

「何処に零番隊が来てるんだ?」

そう言って黒崎が辺りを見渡す

「つーかなんでそいつらは瀞霊廷がこんなになってんのに出てこなかったんだ?何時もは何処に居るんだ?」

黒崎の問い掛けに京楽隊長が答えた

「霊王の所さ」

「京楽さん…霊王の所って…?瀞霊廷の中じゃねぇのか…?」

あ、そっか。こいつは人間だから尸魂界を詳しくは知らないんだ

「君が初めて此処に来た時、瀞霊廷の城壁が降ってきたのを覚えてるかい?」

黒崎が頷いたのを見て、京楽隊長が説明を続けた

「あれから随分な数のトラブルがあったから ね。城壁は常に瀞霊廷の周りを囲む事になったけど、本来は危機的状況の時にだけ降りてくるものなんだ
そう、城壁が危機的状況の時にだけ瀞霊廷を護るなら─────その壁は普段何処を護っている?」

黒崎の反応を見て、京楽隊長が空を見た

「見なよ、彼等のおでましだ」

京楽隊長が空を指差した瞬間───────巨大な柱が降ってきた

『……?』

「……柱?」

修兵さんと修ちゃんと共に首を傾げる。何これどうやって人乗るの?

「これは…」

「天柱輦」

見ていれば京楽隊長が僕の頭を撫でた。さっきから色んな人に撫でられるな…そんなに撫でやすい?

「零番隊が来たって事さ。零番隊のメンバーは全員其処に居る」

「全員!?あんな小さな空間にか…!?」

「零番隊には隊士は居ない、五人の隊長が居るだけなのさ。そして…」

柱の扉が開く。中から人影が現れた

「彼等五人の総力は十四隊全員の総力を凌駕する」

手裏剣みたいな隊章入りの旗を翻し、零番隊が姿を現した

「イェーーーーーイ!!!」

変な頭の男が太鼓やらラッパやら鳴らす。リーゼントの男が声を張り上げた

「其処退け其処退け零番隊のお出ましだ!久しいなぁ十四隊のひよっこ諸君!!良く食べ良く寝とるかね!?」

『…………なんと言うか…』

「………俺が期待しとったんとちゃうな…」

呆然と呟いた平子隊長に突然厚化粧のふくよかな女性が平手を食らわせた。…挨拶が痛過ぎる

「いったぁ!!何すんねん!」

「久し振りだねぇ真子、ひよ里ちゃんとは一緒じゃないのかい?珍しいねぇ」

「久し振り?何言うてんねん!?」

そう言った平子隊長がはっと目を見開いた

「……待てや…ひよ里ちゃんやと…?」

「アタシの事忘れたってのかい!?アタシだよ!桐生さ」

「あ…あんたが桐生さん!?変わっ…ええええ!?変わり過ぎやろ…!!誰やねん!?」

「やぁねぇ真子ったら、そんなに変わってや しないよ!あーハラへった!!」

『…濃い』

「確かに」

「取り敢えずまともなのは居ねぇのか」

少し離れた所に立ち傍観していればリーゼントが卯ノ花隊長に絡み始めた

「おうおう久し振りだなぁ卯ノ花
調子はどうだ?俺が教えた治療術はちゃんと使ってっか!?」

「当然です」

「ホントか!?だったら何でこんなに死なせてんだよ!?」

そう言って更に絡むリーゼントを立派な髭の人が強制的に黙らせた。…リーゼントが白目剥いてるんだが良いのか

「まぁ良い!!ほんに久し振りの事じゃ。話さねばならん事は山程あるが、それは後回しだ!」

それを聞いたリーゼントが舌打ちをした。
そんな彼等に京楽隊長が近付いて行く

「これはこれは…零番隊の皆様はお変わりない様ですねぇ、和尚」

髭の人に話し掛けた京楽隊長の物腰は柔らかい、けれど

「────それで? 今回はどういった理由で此処へ?」

敵意を隠そうともしない視線で京楽隊長は髭の人…和尚?を見つめていた。
その視線を受け止めた和尚が黒崎を見る

「…おんしが黒崎一護か?」

和尚は黒崎を確認してから京楽隊長を見る

「此度は霊王閣下より十四隊を再建せよとの命を賜り此処へ参った。その手始めとして────」

彼は黒崎を見て、にっこり笑う

「黒崎一護、おんしを霊王宮へ連れて行く」

和尚がそう言った瞬間──────

「ふざけるな!!!」

また砕蜂隊長がキレた

「どれ程の者かと思えば…瀞霊廷がこれ程までに疲弊しているというのに怠けおって!おまけに後からノコノコやってきて再建するだと!?斬ってくれる!」

『………』

や、でもこうなったのは僕達護廷隊の力不足の所為でもあって…ぶっちゃけ零番隊の人達を責めるのはお門違いだと思うんだが
そんな事を考えていれば、案の定零番隊は砕蜂隊長に背を向けた

「話を続けよう。ワシが言おうとしたのは…」

「おい!!」

「うるせぇんだよ」

砕蜂隊長が尚も食い下がると、何時の間にか背後に回ったリーゼントが彼女の右手を捻り上げていた

「…速ぇな」

修兵さんの呟きに頷く

「冗談って事にしといてやる。てめぇは何だ?十四隊だろ?ああ?
俺らの役目は霊王宮を守護する事。てめぇの役目は瀞霊廷を護る事
護廷ってのは…そういう意味だよな?
てめぇらが俺らに助けを求めるって事はつまり、それを護れなかったってこった
てめぇらの名を傷付けてるって事じゃねぇか!
そんなんじゃ護廷の名が泣くぜ!」

「ぐ…」

言い返せない砕蜂隊長を見ていれば、不意にリーゼントが此方を見た。そして奴が目を見開いた

「てめぇは─────っ痛ぇなクソ!!」

目が合った瞬間また和尚がリーゼントに拳骨を食らわせた。…僕あんな人と面識ないんだけど。首を傾げていれば和尚が溜息を吐いた

「後でと言っただろうが。まずは最優先事項を終えてからじゃ」

「必要ない。連行名簿にあったものは全て既に此処に揃えてある」

背中から腕を生やした女の人が進み出た。その腕が持つ球体の中に入っているのは何れも知った顔

「!!!」

「後は黒崎一護。そちだけじゃ」

派手な服装の女の人が黒崎を指差した

「其処の銀髪のガキもだ」

『え…?』

不意にリーゼントの声が背後から聞こえた。振り向けば奴が僕を見下ろしている。

「まさかこんなガキを使い手に選ぶとはなぁ……化物」

『……え…?』

その言葉と共に振り下ろされた拳に、僕は反応出来なかった







零番隊、来襲







(桜花!?)

(桜花隊長!)