「ま…待ってくれよ!傷を治す為に連れてくってんなら、何で俺まで連れて行くんだ!?俺の傷は瀞霊廷で充分治るだろ!」

「判っとる。おんしだけは別の理由で連れて行く……いや」

和尚が派手な服装の女の人を見て、それから僕を見た

「おんしもじゃ」

『…断る』

修兵さんに抱えられたまま首を横に振ればがっしりと何かに掴まれた。え、何これ?

「和尚、この二人は…」

京楽隊長が止めようと和尚に話し掛ければ、彼はにっと笑った

「安心せい。眠りに就かせる訳じゃないわい。この子を十分な戦力にする為には、不治痛尽を完全に従える必要がある。それは此処では行えん事じゃ」

「この男も連れて行くかえ?」

「ああ、入れてやれ」

「は!?ちょっ…」

『!?』

僕と修兵さんは女の人から生えた腕の持つ球体の中に別々に入れられた。え、何だこれ水?良く判らないが何かの液体で満たされている

『………?』

やばい、目蓋が閉じる。酷く身体が怠い。耐えきれず沈めば修兵さんの声が遠く聴こえた気がした






















───────カッコォン

何だ、今の音。鹿威し?それにしちゃ随分煩い気がしたんだけど

───────カッコォン

……いや、音があまりにも大きくない?何?僕すぐ近くに鹿威しでも置かれてんの?

───────カッコォン

「うるせぇよ鬱陶しい!人間威してどうすんだよ!?」

『…うるさい…鹿威しなんか壊れてしまえ』

「第一声がそれかよ……」

『……ん…?』

目を開ける。目に入ったのは頭に手拭いを乗せた修兵さんと、鹿威し。…でかいなおい

「大丈夫か?」

『…なにこれ…温泉?』

「麒麟殿って言うんだと。多分湯治だ」

『ふぅん……』

修兵さんに抱えられたままぼんやりと辺りを見る。何あのにゅってしてるやつ。…ああ、黒いフランスパンか

『ふらんすぱん』

「お前はもうあいつを人として認識したくねぇんだな」

『あいつ嫌い』

「つーかもっと重要な事じゃねぇのかよ!何で俺こんなとこ居んの!?」

「落ち着いて座れや、そんで黙れ」

『…黒崎うるさい、死ね』

「そこまで言うか!?つか目ぇ覚めたんだな!」

『…うるさい…熱い湯は逆上せるから嫌いなんだ…上がりたい…』

「俺は丁度良いけどな。お前はもう少し熱に耐性を付けろ」

てか今思ったけど何処だ此処。麒麟殿ってそんなとこ瀞霊廷にはなかった気がする。て事は此処はもう霊王宮?

「手拭いを湯に浸けねぇ様にしろよ」

「何で俺は温泉で寛いでんだよ!?何の為に此処へ来たんだ!?」

「あ?判んねぇのか?湯治ってやつだよ」

リーゼントが言ったのは修兵さんの言った通りの言葉。熱い。ぼんやりとそれを見ているとなんか黒いのが浮かんできた

「おっと、浮かんでくるんじゃねぇよ」

ゴボンとそれをリーゼントが乱暴に沈めた。あれ?あれってもしかしなくても四大貴族のあの人じゃ……

「白哉!?待て待て待て!!何で沈めるんだよ!?死んじまうだろ!
つーか何時此処へ連れてきたんだ!?」

「あー!うっせぇ奴だ」

そう言ったリーゼントが湯の中に手を突っ込んだ

「白哉だけじゃねぇよ」

そのまま引っ張り出されたのは赤い髪

「…あんなの絵本にあったよな」

『何だっけ…大きな蕪?』

皆で引っ張って引っこ抜くアレか

「恋次!?なに赤蕪みたいに掴んでんだよ!…ってルキアまで!」

後方で尻と後頭部だけが見えているアレは…ルキアか?女の子なんだから別の湯に浸けてあげれば良いのに。それか身体を隠すタオル巻いてあげるとかさ

「そいつは桃みてぇだって言うんだろ?」

『うわ黒崎…引くわ』

「うるせぇよ!!」

「つかお前も全裸なのを自覚しろ」

そう言った修兵さんに肩まで湯に浸けられた

『…熱い』

「丁度良いの。野郎ばっか居る場所で胸近くまで出すんじゃねぇ」

『僕なんか見たら目が腐るだけ。そして僕は何も減らない』

「何だその効果。ったく…お前はもう少し女だって事を自覚しろ。取り敢えずこの状態も俺以外とは死んでも駄目だ。判ったな?」

この状態?そう言われああと気付く。僕修兵さんの膝の上に座ってるのか

『そもそも他の人と風呂入らないだろうから大丈夫』

「なら良い」

胡座をかいてるらしい修兵さんの膝の上に座り直せばリーゼントが口を開いた

「こいつらを湯の中に漬けときゃあ、こいつらの傷付いた霊圧を血と一緒に絞り出す事が出来る」

「傷付いた霊圧?」

「向こうの赤い温泉が見えるか」

リーゼントが指差したのはなんか明らかにやばそうな赤いの

「…温泉っつーか…立札に“血の池地獄”って書いてある様に見えるんだが…」

「ありゃ温泉じゃなくてマグマじゃねぇか…?」

『血の池地獄、ねぇ…』

「ああ、その通りだ。あの血の池は完全に絞り出した白哉をぶち込む為のもんだ…そらぁ!!」

掛け声と共に四大貴族のあの人がマグマ擬きに投げ込まれた。朽木隊長が投げられるとか貴重な映像だな

「うお!!何やってんだよ!命の危険に晒してどーすんだ!」

「黙れっつったろうが!あいつの血は此処の骨が吸い出した!
後は血の池地獄で補充させりゃ良いんだよ
これを短い間隔で繰り返して、腐った血と霊圧を完全に吸い出す。
そんでこの温泉の水と入れ替える」

リーゼントの言葉でボッコンボッコン言ってる赤い温泉(仮)を見る。
…身体の中の血がアレになるとか、なんかやだ

「これが俺の治療術だ」

「ほんとにそれで治るのか…?」

黒崎の言う事は尤もだ。というかこいつ人の扱い方が雑。温泉にぽいぽい人投げ込んでる様にしか見えん

「てめぇ…浦原喜助の弟子だったな?」

「弟…違ぇ!!」

「あいつと四楓院夜一の隠れ家に、妙な温泉はなかったか?
あったのなら…それは浦原喜助が俺の温泉を解析して作ったもんだ」

『…熱い』

煮える。いやもう煮えてる。
修兵さんにぐてっと寄り掛かれば笑われた。
おい笑うな、僕は必死なんだ

「百数えたら上がって良いぞ」

『いち…に……さん………ひゃく』

「大分はしょったな!?」

「黙って浸かってろ。てめぇらくらいの怪我なら一晩経たずに治る
何よりまずは快復してからだ」

『おいリーゼント、上がりたい』

挙手すれば怒鳴られた

「話聞いてたかガキ!黙って浸かってろっつったろうが!そして俺の名はリーゼントじゃねぇ!
零番隊“銭湯鬼”麒麟児天次郎様だ!」

……麒麟、だと?
名を聞いた瞬間、修兵さんと二人で顔を見合わせる

『……キリンだから麒麟殿なのか』

「首が長ぇアレから一気に格好良い方になったな」

「てめぇら血の池地獄にぶち込むぞ!!
おい!手拭いを湯に浸けんなって言っただろ!」

「おぉ!? す、済まねぇ」

黒崎が怒られた。え、この手拭いそんなに重要なの?
訊ねれば麒麟児は鼻を鳴らして笑った

「問題ねぇ!
ちゃんと頭に置いとかねぇとてめぇの霊圧の核が出てきて死ぬけどな!」

「えぇ!?」

「問題大有りだ馬鹿野郎!」






温泉は天敵






(あーつーいー)

(百数えたらな)

(いーち…にーい……無理)

(諦めんの早ぇな!)

(黙って浸かってろてめぇら!)

(…なんか楽しそうだなオメーら)