マスキュリンの光線によって上がった火柱。俺達は独月の結界のお陰で何ともねぇ。
ぶっちゃけ炎で苦しんでるのはあいつの相棒だけだ

「スター…スーパー…スター…」

炎で苦しむジェイムズの群れがマスキュリンを呼んだ。なんつーか、あいつの扱い散々だな

「フハハハハ!!心配するなジェイムズ!スターとファンはいつも1つ!!
我輩が生きている限り、永遠に一緒だ!!」

「…へぇ」

漸く判った。
何でジェイムズがあんなになっても生きているのか。
あいつらはどちらか片方が死んでも、もう片方が生きている限り死なねぇ。
ならマスキュリンを殺ればジェイムズも死ぬんだろう。あの状態でジェイムズは生きているとは言えねぇだろうし、マスキュリンさえ片付ければこいつらは終わる

「…む…?」

────────ゆらりと揺らいだ炎から、白に近い銀色の斬魄刀が現れた。

「刀身の長い斬魄刀…それが貴様の卍解か?死ぬ前に発動したのか、無駄な事を…」

マスキュリンが呟いた時、所々に赤い色の入った真っ黒な銃が現れた。その砲身から音を立てて両刃の剣が飛び出した

「な…どういう事だ!?卍解が…形を変えられるのか!?」

驚愕するマスキュリンの目の前で、炎が掻き消えた。
傷一つない独月が目を細めた。
フードとゴーグルを外した右頭部に被っているのは、狐に似た虚の仮面

「…何とも凶暴な悪党よ…それに危険な卍解だ。ワガハイの最後の一撃を防いでみせるとは、ますます生かしてはおけん!!」

いきり立つマスキュリンを見つめながら、ゆっくりと独月が口を開いた

『────────一つ、訂正しておこうか』

「正義の名において貴様を討ち滅ぼすぞおお!!!」

独月の言葉にも一切構わずマスキュリンが襲い掛かった。

「死ねぇい!!!」

『僕のこれは、卍解じゃないぞ』

呟く様に言った独月が、左手に握った白い長刀をマスキュリンに向けた。
真っ白な羽の生えた斬魄刀がぐにゃりと形を変える

『やれ、銀色』

長ぇ刀身が、一瞬で刺々しい鎧を纏った腕になった。マスキュリンよりも大きな手が、がっしりと奴の腕を掴んだ

『これは、拳西さんの分』

紡がれた低い声を合図にする様に────────掴まれた腕が、嫌な音を立てて砕かれた

「ぎ…ぎゃあああああああああっ!!」

悲鳴を上げたマスキュリンを遠くの建物目掛けてぶん投げた。
飛んでいく覆面野郎を眺めながら、独月が長刀を元に戻した
右手に握った悪魔の羽みてぇなのが生えた銃を持ち上げ、引き金を引く。
銃弾の追撃を寸で躱したらしいマスキュリンが地面に着地した

「くそ!くそぉう!!このゴミクズめが!!
よくもこのスーパースターの腕を折ってくれたな!!許さんぞ!この虫ケラめ!!」

『お前が僕の部下の腕を折ったのが悪い』

「もう正義でも悪でもどうでも良い!!貴様は絶対に殺すっ!!!」

や、そこは構えよ。何で正義のヒーロー気取りの奴がそこほっぽっちまうんだよ。
内心突っ込みを入れていれば、億劫そうな表情の独月にマスキュリンが飛び掛かった

『赤色』

真っ黒な銃剣を構えた独月が、斜めに一閃した。
現れた赤い衝撃波がマスキュリン目掛けて襲い掛かる

「ぬおおおおおおおおおお…っ!!」

『…ああ、そうだ』

吹っ飛ばされたマスキュリンを眺めながら、良い事を思い付いたとでも言う様に独月が笑った。
僅かに口角を上げ、艶然と微笑む我等が隊長は、さらっと怖ぇ事を言ったのだ

『お前は刻んでも生きているのかどうか、試してみよう』

「…怖っ」

無駄に綺麗な笑み浮かべてるもんだから余計に怖ぇ。
独月の握った刀双振りが、急に光った。それは扇子と、さっきのより刀身が少し縮んだ刀になった。同時に頭部の仮面も消えた。
斬魄刀の始解を解いたらしい独月が扇子を宙に放り、鞘に戻した刀を構える。
そういや斬魄刀の見た目が前とは違う。氷の結晶みてぇなギザギザした形の鍔に、菱形を紫で象った白い柄。
青と紫の石が付いた飾り紐はあの扇子に着いている。

「ああああああああああああっ!!!」

粉塵の上がっていた場所から、勢い良く何かが飛び出してきた

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ!!」

突撃してきたマスキュリンを睥睨しながら、独月が斬魄刀を腰元で構えた。低く腰を落としたその体勢は、謂わば居合の構えに似ている。
凛とした声が、新たな名を呼んだ

『刹那滅殺──────“銀翼澄月”』

名を呼ばれた斬魄刀の鍔が増えた。刀身もさっきより長く伸びる。
斬魄刀に合わせて伸びた鞘に結ばれた、紫の下げ緒が風に揺られ靡いた。
その鞘尻には俺が院生時代に使っていたチョーカーが付けられていた。
宙に放られた柔らかそうな毛の付いた扇子が、鬼火みてぇな赤い狐の姿に変わる。
右頭部にはさっきと同じ様に狐に似た虚の仮面。
袴から覗く足は、巨大な獣のものに変わっていた。

「銀翼澄月…」

あれが、独月の本当の斬魄刀?
俺が見つめる中、独月が勢い良く霊子で固めた足許を蹴った。
刹那、ひゅっと銀の光が奔り、鍔鳴りの音が高く響いた。
少し離れた位置に現れた独月は、マスキュリンを冷めた目で見つめている。

「さぁ、死ね……あ?」

拳を振り上げたマスキュリンが怪訝そうな声を出した。

『鳳橋隊長と檜佐木さんの分、纏めて返させて貰った』

ぴしりぴしりとマスキュリンの身体に何重にも線が入る。
マスキュリンの表情が、この時初めて恐怖に彩られた

『さようなら、英雄サン』

独月がそう呟いた瞬間────────英雄の身体は、細切れの肉塊と化した








邪魔するならば斬り捨てる