朽木隊長の斬魄刀が静かに下ろされた


『それで三人目、ですね』


後ろに下がったまま朽木隊長の戦いを眺め、ゆっくりと目を瞬かせた。
彼は此方を一瞥して、すぐに前を向く。


周りに仲間は居ない。


石田の所為で阿散井達とはぐれてしまったから、朽木隊長と共に相手に向かった。修兵さんはすぐ近くに居る様だし、戦いが終わったら来るだろう。
三人を朽木隊長が一人で相手取ったから、ぶっちゃけ僕は何もしてない。
斬魄刀と扇も仕舞われたままだ。
でもそろそろ僕も働いた方が良いだろう。あの二人は此方に向かってきてくれないだろうか


「……ちっ、どいつもこいつも情けねーな」


「でも、実力的にはあたし達が残るのは妥当だと思うの…」


「それもそーだな」


二人の滅却師が話し始めた時、遠くから悲鳴が聞こえてきた。
良く聞けばそれは聞き覚えのあるもので。
静かに目を細める間も彼等の会話は続く


「しかしあの野郎、ホントにエス・ノトにフッ飛ばされたのと同じ奴か?
それにしちゃ随分ウデが立つじゃねーかよ、クソが」


「それならあの小さい子もドリスコールにやられた子だと思うの」


「新しい技まで習得してそうだぜ、クソヤロー共が……つーかペペの野郎は何処行ったんだよ!
あいつの能力がありゃこの戦いもちったぁマシになんだろが!」


「あの人キモいから居ても居なくても良いと思うの…」


「ゲロでもブタでも居ねぇよかマシだ!」


なかなか向かってこない二人を眺めていれば、後ろから瓦礫を踏む音がした


「桜花隊長、朽木隊長。此方一人片付きましたよ」


『ご苦労様』


「うっす」


声のした方を振り向き、労いの言葉を掛ける。
彼は辺りを見渡し、凄ぇなと呟いた


「もう三人も倒してたんすね」


『朽木隊長がね。僕は何もしてない』


「や、威張らないで下さいよ隊長」


呆れた顔で修兵さんが返した瞬間────────僕は、固まった










修兵さんの風死が、朽木隊長目掛けて振られたのだ。
それを弾いた朽木隊長が、眉を寄せた












「え…!?」


修兵さんが目を大きく見開く。


「な……何なんです!?どうしたんですか朽木隊長!?」


「此方の台詞だ」


朽木隊長がそう返す間も修兵さんは彼の頭部を狙い続けている。
その刃が首を狙った時、朽木隊長の刀に防がれた


「何故私に斬り掛かる。敵に操られているのか?」


一拍置いて、朽木隊長が口にした言葉にぞっとした


「それとも…兄は敵の化けた偽者か?」


『朽木隊長…!!』


「そんな!!俺は正真正銘俺ですよ!敵に操られてもいません!!」


修兵さんが偽物ではない事は、彼の隊長である僕が断言出来る。
戸惑った様子からしてこれは修兵さんの望んだ動きでない事も判る。
ならこれはやはり、操られているのか。
取り敢えず修兵さんを取り押さえようと鬼道を放とうとしていると、後ろから声が聞こえてきた


「来たな」


『…やっぱりお前らの所為か』


斬魄刀に手を掛けた時、修兵さんの口から聞き慣れない言葉が出てきた


「俺はただ単純に…ペペ様の、為に…」


『ペペ…?』


「にげ、ろ…独月…!!」


苦しげな顔で僕を見た修兵さん。
次の瞬間、彼は飛び上がり朽木隊長に攻撃を仕掛けた


『檜佐木さん!…止めろ、檜佐木ッ!!』


あれは本気で殺しに掛かっている。
大声で名前を呼ぶ間に二人の姿は見えなくなってしまった。
追い掛けようとした時、上空から笑い声が降ってきた。


「ゲッ…ゲッ…ゲッ…ゲッ…」


足を止め見上げた先に居たのは、不気味な笑みを浮かべる滅却師


「ゲッ…ゲッ…ゲッ…ゲッ…」


現れたのはサングラスを掛けた小太りで色黒の男。 円盤の様なものに乗っていて、宙に浮かんだまま男は掌を上にして、空に向けた。


「ココロは一つ。カラダも一つ。
ミーのヒトミに見つめられれば、キミのココロは真っ二つ」


『心と身体が…分かれる…?』


つまり修兵さんはこいつの所為で可笑しくなったのか。
睨み上げた時、男が満足そうに口角を上げた。
褐色の男は胸の前で手を重ね、ハートを象る


「二つになったココロとカラダ、一つに纏めてボクのモノ♡
星十字騎士団“L”の文字──────ペペ“愛”此処に登場♡」


『……愛、だと…?』


衝撃の事実に愕然とする。
やたら語尾を上げハートを付けるこの男……


なんてこった、こいつオカマだ。


こんな奴に修兵さん取られたのか。
…そんな事絶対許さん。
堪らず僕は男の前に進み出た


『…おいオカマ、僕の副官を返せ』


扇子をベルトから抜き、突き付ける。
それを一瞥したオカマは何故か仲間の方を向いた


「愛のローブで…吊られなさいッ♡」


そう言って手をハートの形にするオカマ。
帽子を被った滅却師は慌ててそれを避ける。
しかしペペとかいう名前であろうオカマの放ったハートの光線は、後ろにいた髪の長い滅却師に当たってしまった


「!…くそっ……」


「ペペ、さまぁ…」


ハートが頬に当たった滅却師の目が恍惚としたものになる。
次の瞬間、髪の長い滅却師の腕が筋肉で膨らんだ


「ばか…止めろミニー!!」


仲間に襲い掛かる滅却師に目を取られていた隙に。
背後から、気配


「────────さぁ、キミも♡」


『────────っ!!!』


ハートを模した手が、僕に向けられていた









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