庭を見ると修兵さんが笹に何かを吊していた。いや人んちで何してんのあんた

『何してんの修兵さん』

「ん?短冊下げてんの」

『………短冊?』

「そ、短冊」

何の為にかとは思うが判らない。今日は何か特別な日だったか?

「ああ、お前現世の行事知らないんだっけか」

ほら、と縦長の小さな紙を渡された。吊されているのと同じ物。今日は現世で言う七夕。年に一度天の川を渡って織り姫と彦星が逢瀬を果たす日。これに願い事を書いて笹に吊すらしい。願い事、ねぇ

『浮かばない』

「なら金が欲しいとか書いとけ」

そんなので良いのか。取り敢えず居間に行きお爺ちゃんに筆を借りる。筆をくるりと回して思い付いたものが一つ。金がありならこれもありだろう。書いた短冊を修兵さんに渡せば早かったなと頭を撫でられた

「何書いたんだ?」

『見て良いよ』

紐の通された水色の短冊を見た修兵さんがくしゃりと笑う

「おう、この願い事叶えてやるよ」

『……どうも、彦星サン』

「ならお前は織り姫か?」

『姫とかガラじゃない』

そう言えば修兵さんが頭をぽんぽんと叩いて来る

「俺にとっちゃじゃじゃ馬姫だ」

じゃじゃ馬とは失礼な。
文句を言おうとすれば彦星にはなりたかねぇなぁ、と修兵さんが呟いた

『何故?』

だってそうだろ?と修兵さんが頭を掻く

「本当に会いたい奴には年に一度しか会えねぇ。そんなのはごめんだぜ」

『……確かに…』

「雨が降っちまえばその年に一度も来年に持ち越しだしな」

修兵さんの言葉に頷く。そう考えると可哀想だ。一年待ったのにその日が雨で逢えなくなったなら僕だったら空を恨む。
見上げれば満点の星空。なら今日は逢えるのか

「お前の願い事を叶える為にも彦星にゃなれねぇわ」

『別になってくれても良いですよ』


来年もまたお爺ちゃんとお婆ちゃんと修兵さんと星を見られます様に


(お琴さんと太蔵さん呼びに行こうぜ)

(ん)