「良し、じゃあやってみろ」

『はい』

頷いて手を構える。心を落ち着かせてから詠唱を始めた

『血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ』

ぐっと高まった霊圧を統制する。蒼い爆炎をイメージ。掌に溜まった霊圧を更に凝縮する

『破道の七十三・双蓮蒼火墜!』

名を口にした瞬間、僕の手から放たれる爆炎。
蒼い炎は離れた場所に佇んでいた岩を砕いた。

「良い感じだ。次は詠唱破棄してやってみろ」

『はい』

頷いて再び手に霊圧を込める。さっきより強くイメージをする。蒼い爆炎。それが一直線に飛ぶ

『破道の七十三・双蓮蒼火墜!』

再び名を口にした瞬間、煌々と輝き始めた掌。
ただ光るだけで爆炎は現れない。え、何で?そう思った瞬間修兵さんが怒鳴った

「馬鹿野郎!気ぃ抜くんじゃねぇ!!」

『え』

溢れんばかりの眩い光。思わず目を細めれば視界が一気に蒼く染まった


















「……ってぇ…」

『…え?』

温もりが身動ぎした事に気付き目を見開く。目に映ったのは白。院生の制服だ。てっきり暴発した双蓮蒼火墜に呑まれたんだと思っていた。
けれど僕に覆い被さる彼は僕を見てそれを否定する

「馬鹿野郎!上級鬼道を使う時には気ぃ抜くんじゃねぇって何回も言っただろうがっ!」

『っ…ごめんなさい』

確かに何時も言われていた。鬼道を使う時、特に上級鬼道を使う時には決して気を抜くなと。
下手に暴発させてしまえば命の危険に関わるから、と
俯いた僕の身体が再び温もりに包まれた。背中に回された腕は痛いくらいに僕を締め付ける

「…心配…させんじゃねぇ……」

『……ごめんなさい…』

首筋に顔を埋めた修兵さんが弱々しい声を出した。その震える背中にそっと腕を回す。
ああ、またこの人に迷惑を掛けてしまった。自分の不甲斐なさに涙が出る。もう修兵さんには迷惑を掛けない様にしようと誓ったのに
そう思っていると修兵さんが顔を上げた。柔らかく微笑んで僕を見る

「……生きてて良かった」

『……っ』

じわりと滲む視界の中口を開く。僕はまだ修兵さんに大切な事を言えていない

『…助けてくれてありがとう…失敗しちゃってごめんなさい…』

それを聞いた修兵さんがへらりと笑う

「どーいたしまして。失敗なんかして当たり前だ。そんな事謝る必要はねぇ」

『でも…僕が気を抜いたから……』

「それはもう過ぎた事だ。次から気を付けりゃそれで良い。良く言うだろ?失敗は成功の元だって」

僕の頭を撫でながら修兵さんはそう言った。そして感慨深そうにこう呟く

「良く考えたらお前は最初から上手過ぎたんだよなぁ…なら今丁度良いか」

『?』

くすりと笑った修兵さんが、こつんと額同士をくっ付けてきた。至近距離で優しく目を細める

「良いか独月。今のうちに沢山失敗しとけ。そんで沢山泣け。沢山俺に甘えろ」

『え……?』

「今までのお前は何もかも最初から上手過ぎたんだ。だからこんな風に失敗に免疫がねぇ。そのままへこんじまうんだ。
もしそのまま死神になっちまったらきっとお前は潰れちまう。だから今沢山失敗して、沢山泣け。沢山俺に甘えろ。お前がもっと強くなる為に」

『……甘えても…良いの…?』

「おう、沢山甘えろ。カッコいい檜佐木サマが優しく受け止めてやる」

茶化したその言い方に小さく笑う。確かに格好良いけど自分で言うなよ。そう言えば彼は笑って事実だろ?と。……今度からナルシストって呼ぼうかな

「お前は俺に沢山甘えときゃ良いんだよ。変に気ぃ遣ってんじゃねぇ。んな事された方が逆に心配する」

『……う…』

ばれてた。目を逸らそうにも額同士をくっ付けている為どうしようもない。ぎゅっと目を瞑れば楽しそうな声がした

「何だ?キスでもして欲しいのか?」

『だが断る』

素早く目を開けて手で口を隠せばそれは残念と修兵さんは笑った。てかそんな事したら損するのは修兵さんだぞ。言えば修兵さんは何か可哀想なものを見る様な目で僕を見た。おい何だその目は。そんな目で僕を見るな

「や、ほんとアレだ……お前残念だよなーって」

『……黙れ顔面卑猥。歩く猥褻物。公害』

「ちょっ、そこまで言うか!?」





失敗して強くなれ




(……変態)

(ちょっとお仕置きかなー独月チャン?)

(………!!!)