優しく肩を揺らされて目を開ける。

『む……?』

「おはよ、独月」

視界に映った修兵さんは優しく笑って、それから首を傾げた。ん、何?どうしたの?

「お前、何か顔赤くねぇか?」

『ん……?』

修兵さんの手が僕の頬に触れる。手、おっきいなぁ。何か何時もより冷たい気もする。ぼんやりとそんな事を考えていると大きな手が額に触れた

「お前熱あんじゃねぇか」

『………熱?』

そう言われ、確かに頭がぼんやりしている事を思い出す。何か頭くらくらするかも。そう考えていると優しく頭を撫でられた

『……修兵さん…?』

「今日は寝てな。どうせ行ったって辛くて授業も身に入んねぇだろ」

『………ん…』

頷いて目を閉じる。優しく髪を梳く様に撫でられ、柔らかな眠気に襲われる。

「おやすみ、独月」

優しい声を最後に意識は沈んだ


















ゆるりと意識が浮上して、目を開ける。映ったのは毎日見ている天井。ああ、熱で霊術院を休んだんだっけ。
数回瞬きをして身を起こす。夢を見ていた気がするが思い出せない。まぁ夢は夢でしかないし、気にしていても仕方無いんだけど。
布団から立ち上がって部屋を出る。喉渇いた。
水飲みたい。覚束無い足取りで居間に向かえば、聞こえてきたカチャカチャという音。
え、何だ?今は僕しか居ない筈。首を傾げつつ壁伝いに居間に入れば、音の発生源と目が合った

「起きたのか?」

『……なんで…』

声を出せばがらがらと掠れた声が出た。それを聞いた修兵さんが、水の入ったコップを渡してくれた。受け取って喉を潤す。水が身体に入っていく感覚。どうやら思っていた以上に喉が渇いていたらしい
小さく息を吐いて、先程言い損ねた言葉を口にする

『……何で居るの、修兵さん』

「あ?そりゃお前が心配だからに決まってんだろ」

や、霊術院行けよ。何休んじゃってんのあんた。六回生は特に出席日数重要でしょうが。溜息を吐けば修兵さんが首を傾げる。うん、あんたのせいだよ

「何か食えそうか?出来れば薬を飲ませてぇんだが」

『んー……少しなら…』

食欲はないが、まぁ何口かなら食べられるだろう。頷けば修兵さんがまたガチャガチャと動き始めた。ソファに座りながらぼんやりとそれを眺める。今更霊術院に行けって言ったってもう無駄だろうし。そもそもそれを言ったとして、うん判ったと頷く確率は限りなく低い。要は修兵さんを霊術院に行かせる事は無理、と。ほんと迷惑掛けてばっかだな、僕
眺めていれば修兵さんが小さな鍋を持ってきた。お椀にお粥をよそって僕の前に置く

「ほれ、食え」

『ありがとう』

水の入ったコップを隣に置かれた。いただきますと手を合わせ、湯気の立つお粥にスプーンを向ける。掬ったお粥に数回息を吹き掛けてから口許に運んだ。ほんのり塩の効いた優しい味。
うん、美味しい

「美味いか?」

『…ん。美味しい』

「そ」

笑った修兵さんが向かい側に座って、頬杖を着きながら此方をじっと見つめる。え、何なの?首を傾げれば額に手が触れた

「朝よりは良いが、まだ熱高いな」

『………そう?』

「おう」

頷いた修兵さんが僕の頭を撫でた。何故か物凄く優しい顔で此方を見ている。や、そんなに見られると食べ辛いんだが。

『…修兵さん?』

「ん?」

『………何でもない』

何だか居たたまれなくなってきた。無言でお粥を食べていれば、修兵さんの手はひたすらに僕の頭を撫で続ける。何でそんな優しい顔なんですか、何か緊張するんですけど

「早く元気になれよ。じゃねぇと心配でしょうがねぇ」

『……………』




もう風邪は引かない様にしよう




(…明日までには治す)

(明日も休みだからな?)

(え)

(当たり前だ。大事を取って休め)

(……修兵さんは行ってね?)

(あ?俺も休むに決まってんだろうが)

(………………(駄目だこの人))