「さぁ飲むわよー!!」

張り切った乱菊さんがジョッキを持ち上げた。そのままぐいっと一気飲み。一気は身体に悪いんですよ乱菊さん

『年明け早々宴会って……』

「まぁ良いじゃねぇか。正月なんてそんなもんだろ」

隣で修兵さんが猪口を口許に運ぶ。まぁ何かの行事に託つけて酒が飲めるぞって騒ぐ歌もあるくらいだし、飲兵衛には嬉しい事なんだろう

『修兵さん、呑み過ぎない様にね』

「わーってるよ。ちゃんと考えて飲むって」

修兵さんがぽんぽんと僕の頭を撫でた。流石にこの前の忘年会みたいに卍解一升瓶を飲もうなんて考えてはいない様だ。うん、まぁあれで懲りてなかったら怒るけど

「しゅーへー!!勝負よッ!」

「お断りします」

にべもなくそう言った修兵さんが空になった猪口を僕に向けた。酒を注いでやれば頭を撫でられる。

「なによぉあたしに負けるのが怖いわけー?」

「そんな挑発に乗る訳ないでしょ、餓鬼じゃあるまいし」

そう言えば此方に寄ってきた酔っ払いが不意に僕を見てにやりと笑った。え、何?何か物凄く嫌な予感が────

「なら人質をとるまでよっ!」

『は………っわ!』

「独月っ!?」

急に身体を引かれ体制を崩す。何だと見れば身体に太い鎖が巻き付いていた。これは…鎖条鎖縛?多分始解すれば解く事は出来るだろうけど果たして楽しい宴会の席でそんな事して良いものか
悩んでいれば身体が浮いた。誰かに小脇に抱えられている。見上げれば見事な爆乳が見えた。
ああ、乱菊さんか

「さぁ、ちびさぎを返して欲しければあたしと勝負しなさいっ!」

「ったく…しゃーねぇな……判りました。受けりゃ良いんでしょ?」

目が合った修兵さんにごめんと言えば気にすんなと笑われた

「さっさと終わらせて独月を返して貰いますよ」

「そう簡単には行かないわよー?」

にやりと笑った乱菊さんに溜息を吐く修兵さん。二人を少し離れた場所から見ていれば、何だか申し訳なさそうな顔をした吉良が近付いてきた

「すみません桜花さん。乱菊さんが止まらなくて……」

『いや、気にするな。どうせ修兵さんが助けてくれるし』

あの人は笊だからきっと大丈夫だろう。そう言えば吉良が眉を寄せる

「乱菊さん、この勝負に勝ってまた桜花さんの写真集を作る気なんですよ」

『え、また?』

思わず目を見開いた。確かちびさぎと桜花独月で分けて二種類出した写真集。あれからは修兵さんが釘を刺した為次のものを撮らずに済んだ。それをまた作ろうと言うのか

『修兵さん!』

「あ?どうした独月」

大きな声で修兵さんを呼ぶ。やだよ、絶対やだ。早くも五杯目を飲み干した修兵さんが此方を見た

『絶対勝って!じゃないと僕また写真集撮らされる!』

「…んだと!?ふざけんな絶対勝つ!」

目を見開いた修兵さんが机を叩いた。飲み干したジョッキを脇に退けて新しいジョッキを受け取る。うん、頼む無理はしない様にしてくれ

「っ次!次持ってこい!」

「まだまだ飲むわよー!!」

二人はハイペースでジョッキを空けていく。乱菊さんはげらげら笑いながら、修兵さんは何だか鬼気迫る表情で
うん、あんまり一気は身体に良くないんだが。
あの二人悪酔いしなきゃ良いけど。心配しつつどんどん増えていくジョッキを見つめる

「凄いですね……」

『何時もよりペースが早いな…』

「次!」

「あははははー!」

あ、乱菊さんが壊れた。でもジョッキは離さない。げらげら笑っている間に修兵さんが更に飲んで引き離す。修兵さんが新しいジョッキを受け取っている間に乱菊さんが此方に向かってきた

「ほらちびさぎも飲みなひゃいよぉ!」

『ちょっ…乱菊さっ……!!』

「独月っ!?」

無理矢理ジョッキを口許に押し付けられた。ガツンと歯が当たる。ちょっ、痛いから。歯が折れたらどうしてくれる。
そんな事を考えている間に流し込まれる液体。
遠慮なく口の中に入ってくるビールを仕方なく飲み込む。くそ、縛られてなければ抵抗出来るのに。慌てて止めようとした吉良の脇腹に乱菊さんの肘が入った。白目を向いた吉良が床に沈む。すまん吉良
慌てて寄ってきた修兵さんが止めてくれたが結局ジョッキ一杯分飲まされた。急に大量のアルコール分を摂取させられたせいで頭がぐるぐるする。

「独月……?おい、独月…っ!?」

修兵さんの声がだんだん遠くなる。あ、やばいかも……











「独月!おい誰か水持ってこい!」

近くに居た隊士に命じて独月の頬をぺちぺちと叩く。あーくそ、頭がくらくらしやがる。ペース上げすぎたか。

「水持ってきましたっ」

「ああ、サンキュ。ついでに吉良と乱菊さんにも頼む」

あ、俺も水飲みてぇかも。独月の口許にコップを近付ける。少し傾けて水を流し込めば白い喉が小さく動いた。

『…ん……』

小さく唸った独月が緩く目蓋を動かした。頬を撫でればゆっくりと空と藤の瞳が現れる。

『………しゅーへーしゃん…?』

「おう、大丈夫か?」

真っ赤になった独月がぼんやりとした顔で俺を見る。あ、こいつ酔ってんな。
元から独月はゆっくり酒を飲むタイプだ。それなりに飲めるが一気飲みすればすぐに酔う。だから乱菊さんにジョッキ一杯飲まされ泥酔モードになった。

『うー………』

何だかふにゃふにゃした表情の独月が俺の首に腕を回した。耳許であーだのうーだの唸っている。久々に見たな、こいつの泥酔した姿

「独月、大丈夫か?」

『らいじょーぶー』

うん、大丈夫じゃねぇな。幼児化してるし。ぽんぽんと背中を叩いてやれば首筋に擦り付いてきた。猫かお前は
茫然とした様子で俺達を見ている奴等に吉良と乱菊さんを指差す。此方見てねぇでそいつらの介抱してろ

『ぎゅー』

「あーはいはい。ほらぎゅー」

『わーい!』

ちょっわーいって可愛いなおい!何だそのふわふわした微笑み!反則だろそれ!
ぎゅっと抱き締めていれば独月がもそもそと動いた

『いつもありがとー』

その言葉に続いて頬に柔らかな感触。あ?何だこの柔らけぇの。ちゅっと音をたててそれは離れた。そんな音から連想出来る行為はただ一つ。え?いや、マジで?思考停止した俺の目の前で柔らかな笑みを浮かべた独月が囁く

『しゅーへーしゃん、だーいしゅき』

「っ」

何だその不意討ち。反則だろ。顔が熱くなるのを感じる。顔というか、鼻?視界も酷く歪み始めた。こりゃやべぇかも。そう思って咄嗟に上を見た瞬間、噴き出た赤

「ぶふぅっ!!!!」

「「「檜佐木副隊長ーーっ!?」」」




今年も騒がしい一年だ




(檜佐木副隊長が鼻血噴いて倒れたぞー!!)

(しゅーへーしゃんどーしたのー?)

(桜花副隊長揺さぶっちゃ駄目ですっ!)