「明日が楽しみだな」

確かにあの人はそう言ったのだ。十二番隊の鬼は

























「………ん…」

ゆるりと目を開ける。目覚ましがなくても起きられるらしい俺は目を数回瞬かせた。そして腕の中に居る独月を見て───

「………あ?」

思わず首を傾げた。独月の髪が襟足を残してやけに短い。確かに俺が毎朝セットしてこの髪型にするが今日はまだ弄ってねぇし。昨日も寝る時は髪を下ろした状態だった筈だ
独月の頬を撫でてやはり首を傾げる。女らしい丸みがない。何というか、少し尖ってる感じ。男みたいに。元から綺麗な顔だがそれが益々綺麗になったっつーか、成長したっつーか…

「……ん?成長した?」

自分で言った言葉に引っ掛かりを覚える。改めて独月を見た。綺麗な銀髪。鼻筋の通った綺麗な顔。華奢な身体。そこで身に纏う衣服が妙に短い事に気付く。あれ、昨日こいつこの着流し大きめじゃなかったか?なのに何でこんなにぴったりした感じに……

「……や、ちょっと待て」

ふと目が行った部分、女なら膨らんでくる筈の場所に一切膨らみがない。確かに独月は胸は小さかったが流石にこんな絶壁じゃねぇ。
もしさっき俺が考えた通りにこいつが成長したとして、胸が逆に縮むってのはねぇ筈だ。てかそんな事になったら哀し過ぎる。そん時は俺が育て……って話が違ぇ
すやすやと眠っている独月の胸元にそっと手を伸ばす。別に疚しい事はしてねぇ。確認だ。もし仮に成長しているとして、胸がなくなるって事は───

「………マジかよ」

口許が引き攣るのを感じる。開いた胸元は真っ平ら。要は俺と同じ。白い胸板が呼吸に合わせゆるゆると上下している
どうやら俺の考えは当たったらしい。余りの事にフリーズしていれば独月が小さく唸った。その声も何時もより低い。つまりは、そういう事だ

「いきなり性別変更とか止めてくれ……!」

『ん………』

ゆっくりと目を開けた独月が俺を見た。何時もより目付きが鋭い。左右で違う瞳で俺を見て、それから胸元に視線を落とす。そこにははだけた胸に触れている状態の俺の手。
……ちょっと待て、これ明らかに俺の状態怪しいじゃねぇか
ぱっと手を離した瞬間、じとりと独月に睨まれた

『…何朝から盛ってんだ、変態』

「違ぇっ!!」












『……で、修兵さんは僕の胸を触ってたと』

「不可抗力だ!事故だ!決して疚しい思いはねぇっ!」

必死こいて弁解する修兵さんが面白い。別に胸なんか触られても平気なんだが。だってほんの少ししかないし。寧ろ触った相手に申し訳なくなると思う
それにしてもこれは予想外だ。自分の身体にぺたぺたと触ってみる。何時も以上に平べったい胸。出ている喉仏。大きな手。顔も鼻筋が通って何時もより鋭い印象を与える。どうやら本当に男になってしまったらしい

『まぁ面白いしいっか』

「良いのかよ」

げんなりした様子で修兵さんが呟いた。別に数日で戻るなら、ね。流石に一生このままなのは嫌だけど。
それにしても肩がキツい。何故だと肩に目をやって納得。寝る時に着ていた着流しが小さくなってるからか。もぞもぞと動いて着流しから腕を抜けば修兵さんが慌てて此方に背を向けた。え、どうしたの?

「おまっ、男の前で脱ぐんじゃねぇっ!」

『や、今は僕も男なんで』

別に今は僕も男なんだから見ても何ともないだろうに。そう言えば修兵さんがそーっと此方を振り向いた。何その反応、乙女か

「……細さは大して変わんねぇな」

『もう少しマッチョかと思ったのに…』

「や、お前がマッチョとか想像出来ねぇから」

あ、でも腕は何時もより少し太いよ。ぐっと腕を曲げれば二の腕が僅かに隆起。

『修兵さん、見て見て力瘤』

「あ?……どれ?」

『これだってば』

修兵さんが僕の腕に触って首を傾げる

「や、マジでどれよ」

『これだってば、ほら』

一度腕を伸ばしてもう一度曲げれば腕を触っていた修兵さんがああと声を出した

「……これは力瘤って言えんのか…?」

『言える。ぼっこり出てる』

少なくとも女の時よりは出てる。それを言えば修兵さんが苦笑いした。何故

「力瘤ってのはこういうのを言うんだが」

『………む』

修兵さんが腕を曲げた。隆起する筋肉。え、何これがっつり出てる。つついてみたらかなり硬かった。

『……良いもん。別に』

「ほら、悪かったって。拗ねんなよ独月チャン」

『今は独月くんだし』

「はいはい。ごめんな独月クン」

『……ん』

笑った修兵さんに頭を撫でられた。何だか子供扱いされてる気がするのは気のせいか。まぁ修兵さんに撫でられるのは好きだから良いけど
撫でる手の心地好さに目を細めれば修兵さんがくつくつと笑う

「ほんと猫みてぇ」

『猫違う』

眉を寄せてからはたと思い出す。うん、正直遊んでる場合じゃないんだよ

『修兵さん、技局に行かないと』

「………あ」
















門の前に立ちインターホンを押す。鳴り響く悲鳴。何でインターホンがぎゃあああなんだ。もう少し普通のにしてよ。押す方も気が引けるわ

「はいはい……ああ、チビすけに檜佐木か」

『「どうも」』

気怠げに扉を開けた阿近さんが僕を見てにやりと笑った

「薬は効いたみてぇだな?」

『「…………」』



やっぱりこれはあんたのせいか




(まぁ上がってけ)

(やっぱりあんたのせいか……)

(あ、身長高い)

(お前はマイペースだな)